nms Research Memo(4):2023年3月期は通期での黒字転換を予想。旺盛なニーズに加え収益性も高まる
■今後の見通し
1. 2023年3月期の業績予想
nmsホールディングス<2162>の2023年3月期の業績予想は、売上高が78,000百万円(前期比23.3%増)、営業利益が800百万円(前期は361百万円の損失)、経常利益が650百万円(前期比429.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が250百万円(前期は1,980百万円の損失)と上方修正した。視界は良好であると言うことができるだろう。中国のロックダウン、部材価格の高騰、サプライチェーンの混乱など、外部環境の不確実性は依然としてあるものの、各セグメントともに需要が堅調に推移することが見込まれる。各事業において、コロナ禍からの挽回生産の動きが見られるためだ。加えて、新規受注の獲得も順調であり、下期の業績に貢献してくることが期待される。上期にかけて基盤強化策が効果を発揮してきており、利益の積み上げも期待される。外部環境の不確実性が緩和してくれば、しっかりと利益が積み上がることが想定される。
2. セグメント別業績概要
(1) HS事業
需要は下期にかけても引き続き高水準で推移することを見込んでいる。引き続き顧客ニーズに合わせた多様なサービス・人材の提案・提供、製造業の海外進出・製造支援サービス事業の拡大、デジタルプラットフォームの構築・展開を主眼に据え、事業規模拡大を図っていく。事業環境の変化に対応する形でグループ内製造受託インフラ・ノウハウを顧客ニーズに合わせて提案・提供するほか、製造業のファブレス化に即応するため、顧客シニアエキスパート人材の転籍支援にも注力し、幅広い人材の雇用機会を創出することで、採用枠の拡大、生産性の向上をさらに推し進めていく。人材教育・育成に関しては、エンジニア採用・育成プログラムの強化、ジョブグレードアップ制度の高度化と効果の可視化を行い、得られた実績をほかの地域にも展開していく。外国人技能実習生については、同社独自のスキームを有しており、アフターコロナを見据えた訴求力の高いデジタルプラットフォームの構築にも、引き続き注力する方針だ。製造業の海外進出・製造支援サービス事業については、住友商事<8053>と業務提携を行っているベトナム・タンロン工業団地でのワンストップサービスの提供に引き続き注力していく。同工業団地では、人材ソリューションと製造支援サービスをワンストップで提供しており、今後もニーズが好調に推移することが想定されている。利益面に関しても、基盤強化策を継続していく。具体的には、既存取引における原価率の改善、販管費の管理強化などを推進する計画である。
(2) EMS事業
EMS事業は、コロナ禍や部品不足の影響が緩和され、需要も堅調に推移していくことを想定している。ベトナム拠点とメキシコ拠点において各種活動に注力していく。2021年6月に新規品生産立ち上げを開始したベトナム拠点では、車載用ワイヤレス充電器関連やAV・音響機器関連など、プレス技術を核に完成品まで生産できる特長を生かし、ベトナムへの生産移管を進める日系企業のニーズに合わせた対応に注力する。チャイナプラスワンとしてベトナムの重要性が高まっており、需要が好調に推移することが見込まれる。メキシコ拠点では、主軸の車載関連部品に加え、北米において大きなマーケットを有し、需要が安定している家電や電動工具、産業機器などの顧客にフォーカスし事業を推進していく。こうしたなか、利益確保に向けて基盤強化策による収益性の向上に引き続き取り組んでいく。戦略投資による量産立ち上げも順調に進行しており、堅調なニーズがしっかりと業績に取り込まれていくことが期待される。
同事業は、戦略投資の実行期にある。具体的には、新市場としての北中米事業の立ち上げ、ニーズが高まっているベトナムでの新規量産立ち上げなどに投資を実行している。過去2年間はコロナ禍の影響を受けたものの、北中米・ベトナム市場の重要性は普遍のものと同社は考えている。同社は、今後も北中米とベトナム市場へ注力する方針である。
(3) PS事業
PS事業においても需要が高水準で推移していくことが想定される。こうしたなか、高圧電源、マグネットロールを中心に引き続き安定した収益体質への転換を図る。また、産業機器市場への製品展開、新規顧客の獲得・拡販にも引き続き注力する方針だ。さらに、省人化・自動化ニーズによるロボティクス市場の拡大や、コロナ禍を背景とした殺菌・滅菌機器市場への製品展開など、新市場の開拓にも注力していく。2023年3月期上期において、ロボティクス市場や産業機器市場への展開は確実に進捗しており、さらなる新市場の開拓が期待される。利益面に関しても各種施策を実行し、収益確保に注力する。具体的には、部材高騰に伴う売価の是正によって適正な利益の確保に努める。加えて、部材の調達ソースを拡大することによって、生産活動の安定化も進める計画だ。同事業では、2023年3月期下期にかけて利益を積み上げていく想定だ。戦略投資や基盤強化策の着実な実行によって、足元では収益性が高まっている状況である。2023年3月期通期の営業利益黒字化を見込み、2023年度以降も利益を積み上げていく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
《NS》
提供:フィスコ