貸借
証券取引所が指定する制度信用銘柄のうち、買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる銘柄
日経平均株価の構成銘柄。同指数に連動するETFなどファンドの売買から影響を受ける側面がある
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7013 IHI

東証P
8,721円
前日比
-358
-3.94%
PTS
8,730.1円
23:40 11/21
業績
単位
100株
PER PBR 利回り 信用倍率
15.5 3.25 1.38 1.74
時価総額 13,490億円
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山田勉(auカブコム証券)が斬る ―どうなる?半年後の株価―<新春特別企画>

米連邦準備理事会(FRB)の利上げ加速を受けて、世界の資本・金融市場の動揺が続いている。ロシアによるウクライナ侵攻は収束のメドがつかず、新型コロナウイルスの感染拡大を背景としたサプライチェーン(供給網)の混乱も残る。日銀も2022年12月に金融緩和策の事実上の修正を発表しており、市場の不透明感は強い。アナリストやエコノミストなどの専門家は、「半年後の株価」をどう見ているのか。インタビューを通じて、著名アナリストに予測してもらい、その背景を詳報する。第9回はauカブコム証券の山田勉・マーケットアナリストに話を聞いた。

●山田勉(やまだつとむ)

1990年和光証券(現・みずほ証券)入社、1年の支店営業を経て、支店場電・店頭市場マーケットメーカー・ディーラー・マーケットアナリストとして株式部エクイティ部に勤務、株式市場一筋に「バブル崩壊」「失われたン十年」の生き証人。2004年、カブドットコム証券入社、「kabu.com投資情報局」立ち上げ。以来、投資情報担当。

山田勉氏の予測 4つのポイント
(1)半年後の東証株価指数(TOPIX)は2000~2100程度
(2)半年後のS&P500株価指数は4100~4500程度
(3)日本株では大手商社、金融関連などに注目
(4)米国でもキャタピラーやボーイングなどクオリティ株に注目

――米国のインフレがやや減速したことを受けてFRBは利上げ幅を縮小しました。しかし、2023年も利上げ自体は続ける見通しです。市場関係者の間では世界的な景気減速への懸念が強まっていますが、半年後(2023年6月)の日米株価をどう予想しますか。

山田:私は半年後のTOPIXを2000~2100程度、米S&P500株価指数を4100~4500程度と予測しています。2023年はFRBのターミナルレート(金融政策の到達点)が見えてきます。2月にFRBが政策金利を5%まで引き上げれば、これまで急ピッチで進めてきた利上げについて検証、点検する時期に入ると考えています。

――米利上げが停止されれば投資家心理が改善し、株式相場にプラスになります。

山田:年明け以降にマーケットの米利上げに対する脅迫感や切迫感は薄らいでいくと思います。景気が予想以上に減速する場合は、「次は利下げ局面になるかもしれない」という期待から株式市場で積極的な買いが入ることも考えられます。

 2022年の株式市場は米消費者物価(CPI)の動きに右往左往し、それに伴う急速な米国の利上げに苦しめられました。特に金利に敏感なハイテク株の構成比率が高いナスダック総合株価指数は年初から3割以上も下落しました。2023年は米企業の低調な業績予想や予想の下方修正などが相次ぐ可能性がありますが、株式市場はすでにこうした状況を織り込んでいると思います。

【タイトル】
(注)次回2023年2月1日は0.5%利上げを予想し、作図

――米国の高インフレは根深く、2023年もなかなか収まらないとの見方もあります。

山田:確かに米インフレはこれまでと違う背景があり、すぐに下落に転じることはないでしょう。例えば、コロナ禍後の人々のワークスタイルの変化です。多くの人たちはテレワークに慣れてしまい、「オフィスに戻ってほしい」という企業経営者との間には温度差があります。人口に対して働く意欲のある人の割合を示す「労働参加率」も、なお低迷しています。企業は雇用確保に向けて大幅な賃上げを余儀なくされており、賃金インフレにつながっています。

 もう1つはサプライチェーンの問題です。中国政府による厳しい「ゼロコロナ」政策で、日米欧の多くの企業がサプライチェーンの「脱・中国依存」を目指しています。中国以外の地域で二重に設備投資をすることになりますから、企業のコストは増大します。これらのインフレ圧力は、残念ながら利上げなどの金融政策ではどうにもなりません。

 もっとも、米国の高水準のインフレは2021年10月ころから始まっていますから、すでに物価水準はかなり高くなっています。このため、2023年は前年同月比でみれば、2022年のような高い物価上昇率にはならないでしょう。イエレン米財務長官も「2023年末にはかなり低いインフレ率がみられるだろう」と発言しています。

――相次ぐ閣僚辞任などを受けて、岸田文雄政権の支持率が低迷しています。2023年4月には日銀の黒田東彦総裁も任期満了を迎えます。株式相場への影響は。

山田:岸田政権の支持率が低迷しているのは確かですが、実際に内閣総辞職などの事態にならない限りは株式相場への影響はないでしょう。今のところは政局の混乱にはなっておらず、自民党内の勢力争いにとどまっているように見えます。

 日銀総裁については、次期総裁の方針が大きく変わらないようであれば、やはり影響はありません。もちろん次の総裁が時期尚早な量的緩和解除や利上げなどを実施するようであれば、株式相場への悪影響がありますが、今のところそうした懸念は大きくはないと考えています。

――自民、公明両党が決めた2023年度与党税制改正大綱では、少額投資非課税制度(NISA)を2024年1月に拡充する方針が示されました。

山田:株式市場や個人投資家には朗報です。非課税で投資できる期間を無期限にし、最大年360万円、生涯投資枠1800万円の範囲内で利用できるようになると聞いています。個人はこの投資枠で「じぶん年金」を作り、配当を得られるようにすれば、公的年金の不足分を一部穴埋めできますし、株式市場も資金流入を期待できます。

――日米株式市場で注目している個別セクターと個別株を教えてください。

山田:日本の場合は高配当のバリュー(割安)株です。三菱商事 <8058> [東証P]や三井物産 <8031> [東証P]などの5大商社に加えて、銀行、保険、証券の金融株、薬品関連株などが対象となります。このほか、防衛関連にも注目しています。日本政府は相手のミサイル発射拠点をたたく「反撃能力」を保有することや、防衛費を国内総生産(GDP)比で2%に倍増する方針を打ち出し、関連需要の増加が見込まれているためです。三菱重工業 <7011> [東証P]や川崎重工業 <7012> [東証P]、IHI <7013> [東証P]、日本製鉄 <5401> [東証P]、日本製鋼所 <5631> [東証P]などが有望だと考えられます。

 米国も目先は大型クオリティ株に買いが入りやすいと考えられます。例えば、建機大手のキャタピラー<CAT>や航空大手のボーイング<BA>などです。2022年に債券投資で損害を被った銀行株も2023年は回復する可能性が高いと考えています。

――日銀は12月19~20日の金融政策決定会合で大規模緩和を修正する方針を決め、長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に広げました。日銀の政策変更が株式相場に与える影響は。

山田:金融・資本市場の当初の反応は行き過ぎだと考えています。長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)はこれまでも変更があり、今回だけ「利上げだ」「金融政策転換だ」という報道や市場関係者の理解は解せないですね。実際には日銀はイールドカーブの10年のへこみを滑らかにし、社債スプレッドを縮小するために国債買い入れ増額で10年以外の年限も手広く、買い入れ強化します。つまり、量的質的金融緩和は維持されているということです。

 ただ、仮に日銀総裁・副総裁交代人事を前に、金融政策転換や政府・日銀のアコード(共同声明)の修正があるようであれば、デフレ経済に逆戻りするなど、ここまでの金融緩和の努力を無駄にしかねないと考えています。
  
(※聞き手は日高広太郎)

◆日高広太郎(ジャーナリスト、広報コンサルティング会社代表)
【タイトル】

1996年慶大卒、日本経済新聞社に入社。東京本社の社会部に配属される。小売店など企業ニュースの担当、ニューヨーク留学(米経済調査機関のコンファレンス・ボードの研究員)を経て東京本社の経済部に配属。財務省、経済産業省、国土交通省、農水省、日銀、メガバンクなどを長く担当する。日銀の量的緩和解除に向けた政策変更や企業のM&A関連など多くの特ダネをスクープした。第一次安倍内閣時の独ハイリゲンダムサミット、鳩山政権時の米ピッツバーグサミットなどでは日経新聞を代表して同行取材、執筆。東日本大震災の際には復興を担う国土交通省、復興庁のキャップを務めた。シンガポール駐在を経て東京本社でデスク。2018年8月に東証一部上場(現プライム市場)のB to B企業に入社し、広報部長。2019年より執行役員。2022年に広報コンサルティング会社を設立し、代表に就任。ジャーナリストとしても記事を複数連載中。2022年5月に著書「BtoB広報 最強の攻略術」(すばる舎)を出版

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