三洋化成 Research Memo(1):パフォーマンス・ケミカルスを通じて社会に貢献する、ユニークなグローバル企業
■要約
三洋化成工業<4471>は、約3,000種のパフォーマンス・ケミカルスを国内外の幅広い産業向けに提供している。社是に「企業を通じてよりよい社会を建設しよう」を掲げ、様々な界面等で活躍するパフォーマンス・ケミカルスを通じて、全従業員が誇りを持ち、働きがいを感じるユニークでグローバルな高収益企業に成長し、社会に貢献することを目指している。永久帯電防止剤「ペレスタット」「ペレクトロン」、炭素繊維用集束剤「ケミチレン」、アルミ電解コンデンサ用電解液「サンエレック」など、独自技術をベースに機能化学品の市場で高いシェアを誇っていることが強みであるほか、幅広い産業向けに提供して特定分野への依存度が小さい全天候型の収益構造であることも特徴だ。
1. 2023年3月期第2四半期累計の業績概要
2023年3月期第2四半期累計の連結業績については、売上高が前年同期比14.1%増の88,439百万円、営業利益が同33.6%減の3,932百万円、経常利益が同7.4%増の7,368百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同6.8%増の4,719百万円となった。一方、2022年9月29日の修正予想比では売上高99.4%、営業利益98.3%と若干未達となったものの、経常利益118.8%、親会社株主に帰属する四半期純利益112.4%と計画を上回って着地した。原材料価格上昇に伴う販売価格の改定などにより増収となったものの、販売量の減少、原材料価格上昇に伴う売買スプレッド縮小、販管費の増加などにより、営業減益となった。なお、為替差益の増加(同2,525百万円増)や持分法による投資利益(同106百万円増)などにより、経常利益及び親会社株主に帰属する四半期純利益は増益となった。
2. 2023年3月期の業績見通し
2022年3月期の連結業績については、売上高で前期比13.2%増の184,000百万円、営業利益で同7.3%減の11,000百万円、経常利益で同5.7%増の13,500百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同34.3%増の9,000百万円とする、2022年9月29日に修正した予想を据え置いている。営業利益は減益予想としているものの、販売数量の回復や製品価格改定の進行により第3四半期以降の持ち直しを見込んでおり、従来の水準である半期70億円規模へ回復する見通しだ。修正予想に対する進捗率は売上高が48.1%、営業利益が35.8%、経常利益が54.6%、親会社株主に帰属する当期純利益が52.4%となっている。営業利益の進捗が鈍いが、ナフサ価格が下落傾向であり、売買スプレッドが拡大する要因となり得ることを考慮すれば、達成の可能性は高いと弊社では見ている。
3. 成長戦略
同社は2022年3月、さらなる持続的成長に向けて、2030年におけるありたい姿を定め、それに向けた経営方針として「WakuWaku Explosion 2030」を策定した。また、2030年のありたい姿に基づいて、その道程である2024年のあるべき姿を策定し、現在の事業活動を「新たな成長軌道」「基盤事業からの展開」「基盤事業の見直し」の3つに再整理した。「全部署がプロフィットセンター」のスローガンの下、事業ポートフォリオの再編、強化に取り組み、ありたい姿に向けた変革を進めることで、2025年3月期の営業利益で200億円、2031年3月期の営業利益で500億円(ROIC約10%)を目指す。中期成長に向けた戦略としては、独自技術やアライアンスを活用した新製品開発・新規事業創出を積極的に推進していく。事業を通じて持続可能な経済成長と社会的課題の解決に貢献するスペシャリティ・ケミカル企業として、ブルーオーシャン戦略で新規事業を創出する方針だ。
同社の営業利益は、2018年3月期以降おおむね120億円前後で推移している。生活・健康産業をはじめとする幅広い産業向けに製品を提供する全天候型の収益構造のため、景気要因による需要変動の影響が比較的小さく、業績は比較的安定して推移している。この点は高く評価できるが、成長魅力に欠ける面があったことも否定できない。この点について同社は「利益性の改善が課題であることを認識しており、4~5年先の開花に向けて利益性改善の種まきを行っている。新たな経営方針『WakuWaku Explosion 2030』に基づいて企業変革を遂行する。」としている。安定した収益基盤と財務基盤をベースとして、化学の枠を越えたイノベーションを通じて創出する新規事業が加わることで、中長期的な成長ポテンシャルは高いと弊社では見ている。
■Key Points
・様々な界面等で活躍するパフォーマンス・ケミカルスを通じて、社会に貢献するユニークなグローバル企業
・2023年3月期第2四半期累計は増収となるも、原材料価格上昇に伴う売買スプレッド縮小などにより営業減益
・販売数量の回復や製品価格改定の進行により、2023年3月期第3四半期以降は持ち直しの見通し
・2030年のありたい姿に向けた経営方針「WakuWaku Explosion 2030」を策定
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
《TY》
提供:フィスコ