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日銀“予想外”の金融政策修正、どうなる日経平均株価と今後の物色動向 <株探トップ特集>


―意表突かれ一時800円安と急落、銀行株や円高メリット株には追い風も―

 20日の東京株式市場は後場、大荒れの展開となった。日本銀行が金融政策の変更を発表し、長期金利の変動幅を拡大させた。市場には「予想外」との見方が広がり、株式市場で日経平均株価は一時800円を超す急落となった。この日銀の金融政策の変更は「事実上の利上げ」と受け止める声もある。今後の株式市場の展開はどうなるのか。また、日銀の政策修正で恩恵を享受するセクターはどこなのか。

●日銀は長期金利の変動幅を0.5%程度に拡大へ

 日銀は19~20日に開催された金融政策決定会合で長期金利の変動幅を従来のプラスマイナス0.25%程度から同0.5%程度に拡大することを決定した。これを受け、金利上昇が警戒され株式市場は急落し、為替は日米金利差縮小観測から大幅な円高が進行、債券市場では急速な債券安(金利高)となった。

 世界的なインフレ懸念が台頭するなか、金融政策の修正観測はかねてから強く流れていた。ただ、日銀は指し値オペで長期金利上昇を押しとどめてきたほか、黒田東彦日銀総裁も金融政策の修正に否定的な姿勢を崩さなかった。それだけに、この日の決定に対しては、市場関係者からは「想定外だった」との声が相次いだ。

●黒田総裁の後任を考えての政策変更の可能性

 共同通信が17日に「2%物価上昇目標の見直し検討」との記事を配信し、政策修正に向けた思惑は台頭していた。記事は、政府と日銀の役割を定めた共同声明を改定するとともに、2%物価上昇の達成時期を見直すなどの内容だった。ただ、松野博一官房長官は19日の記者会見で「そのような方針を固めた事実はない」と否定していた。

 しかし、この日の政策修正でこれまでの見方は大きな修正を余儀なくされることになった。長期金利の変動幅を0.5%に拡大しても、「一段の金利上昇要因が強まれば、再び上昇幅の拡大を迫られかねない」(市場関係者)ことが懸念されている。また、海外ヘッジファンドは日銀の金融政策修正を先回りして国債への空売りを仕掛けた向きもあるだけに、今回の債券安で勢いがつき投機的売買が活発化する恐れもある。市場には、年末・年始にかけ荒れた相場が続く可能性を指摘する声も出ている。

 SBI証券の鈴木英之投資情報部長は「今回の日銀の金融政策修正は、黒田総裁の後任を考えてのものだった面もあるのではないか」と指摘する。新総裁が金融政策の修正をやりやすくするために、まず第1歩を踏み出しておいた、という格好だ。また、「米国は状況次第では来年後半以降からは、利下げに転じるかもしれない。その際に、日本が利上げに踏み切れば、予想以上に円高が進みかねない。米国情勢を踏まえての今回の決断だった可能性もある」と鈴木氏は言う。

●金融株は“万年割安株”の汚名返上のチャンス

 そんななか、20日の株式市場では東京エレクトロン <8035> [東証P]など半導体関連のハイテク株やトヨタ自動車 <7203> [東証P]など自動車株などが軒並み安となった。円高進行を警戒する売りが膨らんだ格好だ。その一方、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]や三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]といったメガバンク、それに九州フィナンシャルグループ <7180> [東証P]や筑波銀行 <8338> [東証P]、群馬銀行 <8334> [東証P]、千葉銀行 <8331> [東証P]といった地方銀行株、第一生命ホールディングス <8750> [東証P]やかんぽ生命保険 <7181> [東証P]、東京海上ホールディングス <8766> [東証P]といった生損保株などが軒並み値を上げた。

 今回の日銀の政策修正は“事実上の利上げ”とも言われているだけに、長い低金利政策で業績低迷が続いた金融セクターには事業環境の転換点となることも考えられる。「金融株は長年の万年割安株を返上するチャンス。特に、国内の金融政策が素直に業績に反映される地銀株への影響は大きいかもしれない」(アナリスト)とみられている。日銀の金融政策修正は円高要因とみられており、きょうは円高メリット株としてニトリホールディングス <9843> [東証P]に見直し買いが流入した。また、同じく円高が追い風となる王子ホールディングス <3861> [東証P]や日本製紙 <3863> [東証P]、レンゴー <3941> [東証P]、トーモク <3946> [東証P]、日本紙パルプ商事 <8032> [東証P]など紙パルプ株に注目する見方もある。

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