クオールHD Research Memo(1):在宅調剤強化やDXによる差別化戦略等の推進で持続的成長を目指す
■要約
クオールホールディングス<3034>は大手調剤薬局チェーンの1社で、調剤薬局店舗数で第2位、売上高で第3位(上場企業ベース)の位置にある。マンツーマン薬局と異業種連携によるヘルスケア薬局での店舗展開に特徴がある。調剤以外の分野では、CSO※事業に加えて薬剤師等の医療系人材紹介派遣事業、医薬品製造販売事業等を展開している。
※CSOとはContract Sales Organization(医薬品販売業務受託機関)の略で、CMR(契約MR(Medical Representative、医薬情報担当者))の派遣業務となる。
1. 2023年3月期第2四半期累計業績は減益となるも過去最高売上を更新
2023年3月期第2四半期累計の連結業績は、売上高で前年同期比0.8%増の82,459百万円、営業利益で同3.7%減の4,022百万円となり、会社計画(売上高85,000百万円、営業利益5,000百万円)を下回った。新型コロナウイルス感染症の再拡大(以下、コロナ禍)により、主力の保険薬局事業においてM&Aの成約が遅れたほか、既存店の処方箋応需枚数が想定をやや下回ったこと、コロナ感染対応のための店舗運営コストが増加したことにより保険薬局事業が減益となったほか、医薬品製造販売事業において原材料価格が想定以上に高騰し収益が悪化したことなどが業績の下振れ要因となった。ただ、売上高についてはCMR派遣や医療系人材紹介派遣が伸長したことにより過去最高を連続更新している。なお、期末の調剤薬局数は前期末比3店舗増の837店舗となった。
2. 2023年3月期は期初計画を据え置き、増収増益を目指す
2023年3月期の業績は売上高で前期比8.3%増の180,000百万円、営業利益で同21.8%増の12,000百万円と期初計画を据え置いた。下期は保険薬局事業において遅れていたM&A交渉が進展し、店舗数の拡大が見込まれるほか、店舗オペレーションの見直しによるコスト低減が見込まれている。通期における調剤薬局の新規出店は10~20店舗程度、M&Aで30~70店舗を想定している。医療関連事業ではCSO事業や医療系人材紹介派遣事業が下期も順調に拡大するほか、医薬品製造販売事業において新型コロナウイルス抗原検査キットの販売開始による収益貢献を見込んでいる。2023年3月期の重点施策として掲げた在宅調剤の売上拡大とITを活用したサービス(LINEを活用した処方箋予約等)の拡充については順調に進んでおり、今後も調剤薬局の競争力並びに生産性の向上につながる取り組みとして注力していく方針だ。
3. 保険薬局事業、医療関連事業を両輪に売上高3,000億円を目指す方針
中長期成長戦略は、従来から一貫しており変更はない。保険薬局事業では「戦略的出店による規模の拡大」と「薬局の価値創出」に取り組むことで安定成長を目指す。出店はM&Aも含めて年間40~90店舗ペースを継続し、1,000店舗の早期達成を目指す。また、地域のかかりつけ薬局としての付加価値を高めることでシェア拡大を図っていく。注力する在宅調剤については2024年3月期に売上高100億円を目指すべく、都市部において専門/重点店舗の出店を進めていく。現在、専門/重点店舗は15店舗だが、数年後には50店舗まで拡大していく考えだ。在宅調剤専門店の処方箋単価は一般の外来に比べ高いことから収益力の強化につながるほか、今後展開が予想されるオンライン専門薬局への対抗策にもなりうる。医療関連事業ではCSO事業における「専門性の深化」に取り組み、高付加価値人材の育成やM&Aも視野に入れながらCMRを現在の約600人から中期的に1,000人体制を目指す。また、医薬品製造販売事業は、「グループシナジーの最大化」に取り組むと同時に、新たな後発医薬品の開発にも着手している。今後はM&Aや受託開発事業の強化等によってさらなる事業拡大を目指していく方針だ。これら戦略を推進していくことで中期目標である売上高3,000億円、営業利益250億円の達成に向け、持続的な成長が期待される。
■Key Points
・2023年3月期第2四半期累計業績は減益となるも医療関連事業の回復により過去最高売上を更新
・2023年3月期業績は期初計画を据え置き、連続過去最高更新を目指す
・保険薬局事業は店舗数の拡大と在宅調剤の強化、DX推進による差別化並びに収益力の強化に注力
・CMR派遣は専門性の追求とシェア拡大、医療系人材紹介派遣事業は領域の拡大、医薬品製造販売事業はグループシナジーを生かして高成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《NS》
提供:フィスコ