Iスペース Research Memo(2):インターネット広告事業とメディア運営事業を展開
■事業概要
インタースペース<2122>は1999年にインターネット広告事業を主目的に設立され、現在はアフィリエイト広告を中心とするインターネット広告事業とメディア運営事業の2つの事業を展開している。2022年9月期の事業セグメント別構成比では、インターネット広告事業が売上高で71.0%※、営業利益で61.4%を占めているが、ここ数年はメディア運営事業の収益力も高まっており、将来的に営業利益でインターネット広告事業と並ぶ水準まで拡大していくことを目指している。
※2022年9月期から「収益認識に関する会計基準」等の適用を開始したことにより、インターネット広告事業の売上高及び売上原価からメディアパートナーに支払う媒体費等を控除している(売上高は目減りするが、営業利益への影響はない)。
グループ連結子会社は2022年9月期末時点で9社となっている。主要子会社には、2018年4月に分社化した(株)ストアフロント(リアルアフィリエイトサービスを主に展開)や、2018年に設立した(株)TAG STUDIO(比較・検討型メディアの運営)、2018年1月に子会社化した4MEEE(株)(20代の女性をターゲットとした「4MEEE」や、感度の高い主婦・ママ層をターゲットとした「4yuuu!」等のメディアサービスを運営)、2020年4月に子会社化した(株)ユナイトプロジェクト(学習塾ポータルサイト「塾シル」の運営)のほか、海外でインターネット広告事業を展開する4社(インドネシア、タイ、シンガポール、マレーシア)等で構成されている。その他、ベトナムに現地企業との合弁で設立した持分法適用会社1社(出資比率49%、インターネット広告事業を展開)がある。また、2022年9月末時点の連結従業員数は407名で、うちインターネット広告事業で309名、メディア運営事業で66名、共通部門で32名となっている。
1. インターネット広告事業
インターネット広告事業では、アフィリエイト広告を中心にリスティング広告なども取り扱っている。売上高の9割強はアフィリエイト広告による収入で、アフィリエイト運営事業者のなかで大手の一角を占めている。競合としては、ファンコミュニケーションズ<2461>のほかアドウェイズ<2489>、バリューコマース<2491>、レントラックス<6045>などがある。
アフィリエイト広告とは成果報酬型のインターネット広告のことで、商品購入や資料請求などの最終成果の発生に応じて、広告主が広告を掲載したWebサイト(パートナーサイト)やメールマガジンなどの運営者に対価を支払う形態の広告を指す。広告主からこれら広告掲載者(メディアパートナー)に至るまでの中間段階として、アフィリエイトプログラムを提供する同社のような運営業者(アフィリエイトサービスプロバイダー)が介在する。売上高の計上方法については、従来はメディアパートナーに支払う媒体費等も含めて売上高として計上していたが、2022年9月期より「収益認識に関する会計基準」等を適用し、広告主から得られる広告料から媒体費等を控除した額を売上高として計上している。売上原価に計上していた媒体費等も計上しなくなるため、営業利益への影響はない。なお、粗利益率はおよそ20~30%の水準(従来会計基準ベース)で、残りがパートナーに支払う報酬となる。
アフィリエイトプログラムとは、広告掲載者が自身のWebサイトに広告を掲載するためのツールであり、使い勝手の良いツールが各運営業者から提供されている。同社は2001年に「アクセストレード」を開発し、2022年9月末時点で登録パートナー数は約216万サイト、稼働プログラム数は4,727件となっている。特に、2019年以降は海外パートナー数の増加が顕著で、直近は140万サイト超と国内のパートナーサイト数を逆転している。東南アジア各国においてもオンラインビジネスの拡大により、アフィリエイトサービスが普及していることがうかがえる。
また、売上高の1割弱はストアフロントアフィリエイトで占められる。主に携帯電話販売店にてサービス提供を行っているもので、携帯電話の購入者に対して広告主が提供するコンテンツアプリやサービスをショップ店員が勧め、ダウンロードやサービスを開始した段階で成果報酬が発生する仕組みとなる。店員が直接顧客に商品・サービスを説明・提案するため、広告主にとっては費用対効果の高い広告サービスとなる。携帯電話ショップの契約店舗数は約1万店舗と業界トップクラスのネットワークを形成しており、競合としてはエムティーアイ<9438>がある。直近では収益基盤の安定化を図るため、継続課金型の商材に注力しているほか、新規販路の開拓にも取り組んでいる。なお、ストアフロントアフィリエイトの粗利益率は15~25%(従来会計基準ベース)と、アフィリエイトサービスよりも若干低い水準となっている。
2. メディア運営事業
メディア運営事業では、コンテンツ型メディア並びに比較・検討型メディアの運営を行っており、粗利益率については30%以上と収益性の高い事業となっている。
主力はコンテンツ型メディアで売上高の約6割を占める。なかでもママ向けコミュニティサイト「ママスタ」は、月間訪問者数で約1,360万UU、月間閲覧数で約8.5億PV(2022年5月実績)と同領域では業界最大級のメディアとなっている。ブランド認知向上を目的とした広告収益モデルとなり、同メディアに掲載するディスプレイ広告やタイアップ広告が収入源となる。業界特化型のメディアであるため、クライアント企業も対象ユーザーへのリーチが図りやすいこと、月間利用者数が多いことなどから、広告単価の水準は一般的なポータルサイトよりも高くなっている。このほかにも女性をターゲットとしたコンテンツ型メディアに注力しており、40代?50代の女性層をターゲットにしたライフスタイルメディア「saita」、20代の女性向けトレンドメディア「4MEEE」や恋愛情報Webマガジン「KOIMEMO」、ヨガ&ビューティオンラインニュースメディア「ヨガジャーナルオンライン」などがある。
一方、比較・検討型メディアは、同サイトに情報を掲載するクライアント企業に対して、見込み顧客を送客することで収益を獲得する成果報酬型のビジネスモデルとなる。ユナイトプロジェクトが運営する「塾シル」(学習塾ポータルサイト)のほか、TAG STUDIOが運営する「派遣サーチ」「転職ファインダー」(人材サービス会社の比較・検索サイト)、「プロリア」(プログラミングスクールの口コミサイト)などがある。比較・検討型メディアは規模がまだ小さく、掲載企業数の拡充とメディアへの集客力の強化が課題となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SI》
提供:フィスコ