ココナラ Research Memo(9):2023年8月期は法人ユーザーの開拓に注力し、流通高で25%成長を目指す
■今後の見通し
1. 2023年8月期の業績見通し
ココナラ<4176>の2023年8月期の連結業績は、営業収益で前期比25.1%増の4,800百万円、営業損失で700百万円(前期は515百万円の損失)、経常損失で700百万円(同511百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失で645百万円(同494百万円の損失)となる見通し。
(1) 営業収益の見通しと重点施策
「ココナラ」の流通高について、2023年8月期上期はリオープニングの影響により伸び率が21~22%程度とやや鈍化するものの、下期は法人会員の獲得施策の効果もあって伸び率が再加速し、通期では前期比25.0%増の15,900百万円を見込んでいる。また、「制作・ビジネス系」「相談・プライベート系」の伸び率については、引き続き「制作・ビジネス」系の伸び率が高くなると見ているが、「相談・プライベート系」についても2ケタ成長が続くと見ている。また、テイクレートは前期並みの水準を想定していることから、営業収益の伸び率も25%程度を見込んでいる。
2023年8月期の事業方針として以下の4点に取り組んでいく。
a) ビジネス利用の拡大
法人ユーザーの利用拡大を図るための施策として、ビジネス利用を意識したTVCMやタクシー広告等を実施し、その効果を検証していくほか、法人会員獲得のための施策として、小規模企業についてはアライアンス戦略で、大企業については直接セールスを強化する。アライアンス戦略に関しては2022年10月に(株)みずほ銀行と業務提携を発表しており、みずほ銀行が抱えるネット法人顧客※に対して、「ココナラビジネス」のサービスを特典付きで利用できることを告知していく。ネット法人顧客は人材不足を課題に抱える小規模企業が多く、「ココナラビジネス」で提供する制作・ビジネス系サービスを利用する潜在ニーズは大きいと見ている。同社はみずほ銀行以外にも提携先金融機関(地方銀行含む)を広げる方針で、効率的に法人会員を増やしていく考えだ。一方、大企業の開拓については直接セールスが有効と考え、営業活動を開始している。そのほか、利便性向上に向けた機能の拡充についても継続的に進める予定としている。
※みずほ銀行で「法人口座開設ネット受付」経由で新たに口座を開設した法人顧客や、「みずほビジネスデビッド(Visa)」の会員顧客(一部個人事業主含む)。
b) ユーザビリティの向上
「ココナラ」の利便性向上を目的とした機能拡充について、2023年8月期は新たに「スケジュール予約機能」「サブスクリプション機能」「高額取引向け決済機能」の導入を計画している。「サブスクリプション機能」の導入によって、月額で定期的にサービスを購入・販売したいユーザーの利用拡大が期待できる。また、「高額取引向け決済機能」とは、納品までの期間が長いプロジェクト型案件について、進捗状況に合わせたマイルストン課金を行う機能となる。出品者にとっては、納品前段階でも一定の収入が得られることになるため利用メリットは大きい。
c) ユーザーを起点とした購入者拡大
ユーザー起点の購入者拡大施策として、友達紹介キャンペーンや出品者による販促機能(クーポン配布等)などに取り組んでいく。2022年9月以降に開始した友達紹介キャンペーンについては、購入者の拡大につながるなど手応えを感じているようで、今後も継続する方針である。
d) 新規事業の立ち上げ
新たなマッチング手法へのチャレンジとして、ITフリーランス向け業務委託案件の紹介サービス「ココナラエージェント」を2023年1月から開始することを発表し、フリーランスの事前登録受付を開始した。「ココナラ」では扱えなかった月次稼働型のマッチングサービスとなり、数ヶ月単位を要する大型プロジェクトでの利用も可能となるため、法人ユーザーのさらなる利用拡大が期待される。また、ITフリーランスにとっても「ココナラエージェント」での顧客からの評価が「ココナラ」に反映されるため、「ココナラ」での販売促進効果が得られることになり、ビジネス機会の増大にもつながる。同社では「ココナラエージェント」のサービス開始によって、法人ユーザーの拡大だけでなく、ITフリーランスの登録者を増やし、ココナラ経済圏を一段と拡大する戦略だ。
(2) 営業費用の見通し
営業費用は前期比26.4%増の5,500百万円を計画している。広告宣伝費は2022年8月期並みの水準を想定しているものの、新サービス開始に伴う初期投資費用や採用活動の継続による人件費・採用費の増加、円安によるサーバー費用(支払手数料・システム費に含む)の増加などを見込んでいる。
広告宣伝費は、TVCM関連費用を2022年8月期からやや減額しタクシー広告やWeb広告を強化する方針で、費用配分については上期にやや偏重する計画となっている。人員については前期と同様40人超の純増を計画しており、採用職種も全般的に増強する方針に変わりない。業務委託費用は本社管理部門のほか、「ココナラ法律相談」の営業委託費用の増加を見込んでいる。
なお、株式報酬費用とココナラスキルパートナーズの事業費用を除いたNon-GAAP営業損失では570百万円(前期は501百万円の損失)を見込んでいる。営業利益との差額が前期の14百万円から130百万円に拡大するが、過半は株式報酬費用の増加によるものとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
《SI》
提供:フィスコ