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【特集】オプティム Research Memo(1):生成AI活用のサービスを各分野で展開。2025年3月期中間期好業績(1)

オプティム <日足> 「株探」多機能チャートより

■要約

オプティム<3694>は、AI・IoT技術を得意とするベンチャー企業である。主力の「Optimal Biz」及び「OPTiM Cloud IoT OS」のデファクトスタンダード化を通じて、第4次産業革命の中心的役割を果たす企業を目指している。当初から世の中にないサービスを作り出すことを念頭に技術開発を行っており、関連の特許を数多く所有する(出願数1,129件、登録数548件、2024年3月時点)。様々な業界の大手企業が同社のパートナーであり、技術力やポテンシャルは内外からも高く評価されている。2014年に東京証券取引所(以下、東証)マザーズ上場、2015年には東証第1部に昇格し、2022年4月の東証区分再編に伴いプライム市場へ移行した。

1. 事業内容
同社の主力事業は「IoTプラットフォームサービス」であり、売上高の88.6%(2024年3月期)を構成する。その内訳としては従来の強みである「モバイルマネジメントサービス」と近年投資を積極化する「X-Tech(クロステック)サービス」に分類される。「モバイルマネジメントサービス」では、スマートフォンやタブレットなどの様々なデバイスをクラウド上で管理し、組織内の運用管理、資産管理やセキュリティポリシーの設定などを行う「Optimal Biz」が主力サービスであり、導入実績は18万社以上、14年連続シェア1位を獲得し、デファクトスタンダードの地位を確立している。パートナー企業による代理販売、OEM提供などで流通し、端末数に応じたライセンス料を受領する。

「X-Techサービス」では、AI・IoTプラットフォーム「OPTiM Cloud IoT OS」を活用した業種別の取り組みや、「OPTiM AI Camera」をはじめとするパッケージサービスなどを展開する。「OPTiM Cloud IoT OS」を用いる取り組みとして、各産業とITを組み合わせて、すべての産業を第4次産業革命型へと変化させる「〇〇×IT(〇〇に業種が入る)」を実施している。農林水産業では、2016年に日本で初めて農業分野でドローン・AIを活用した害虫駆除の実証実験に成功し、現在では、全国規模で「ピンポイントタイム散布」サービスが行われている。建設業界では、世界初のスマートフォンを活用した高精度な3次元測量アプリ「OPTiM Geo Scan」の提供を行う。医療分野では、2016年に日本初の遠隔診療サービス「ポケットドクター」をリリースし、2020年には、(株)メディカロイド(川崎重工業<7012>とシスメックス<6869>の合弁会社)が開発した国産初の手術支援ロボットシステム「hinotoriTM サージカルロボットシステム」のネットワークサポートシステムに、同社のAI・IoTプラットフォーム「OPTiM Cloud IoT OS」が採用された。オフィスDX分野では、AIを活用した契約書管理サービス「OPTiM Contract」、2024年1月からの電子帳簿保存法規制に対応するサービス「OPTiM 電子帳簿保存」がライセンス数を伸ばしている。「X-Techサービス」では多数のキラーサービスが登場し、一部は普及期に入っている。

同社は創業来、知財戦略に基づく豊富な技術力及び事業創造力を背景に、常に革新的なサービスを提供し新しい市場を開拓してきた。国内市場ではシェア1位のサービスを複数擁し、豊富なライセンス収益を基盤としたビジネスモデルを確立している。また、近年ではAI・IoT・ビッグデータのマーケットリーダーとして、各産業のトッププレイヤーと強固なビジネスディベロップメントを推進している。

2. 業績動向
2025年3月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比3.0%増の4,517百万円、営業利益が同4.1%増の794百万円、経常利益が同1.2%減の663百万円、親会社株主に帰属する中間純利益が同2.7%減の383百万円となり、創業来25期連続となる過去最高売上高達成に向けて順調に折り返した。売上高は、モバイルマネジメントサービスの順調な売上成長に加えX-Techサービスの大幅な売上成長が増収に貢献した。モバイルマネジメントサービスの中核となる「Optimal Biz」は市場において14年連続シェアNo.1を獲得しており、市場の成長とあわせて、順調にライセンス数も増加した。X-Techサービスでは、中核となる「OPTiM Cloud IoT OS」を土台としたキラーサービス化を目指す複数の領域で業績に貢献した。特にアグリテック分野のドローンを使った農薬散布DXサービスである「ピンポイントタイム散布」サービスが全国に普及し、大きく業績を伸ばした。デジタルコンストラクション分野では、3次元測量アプリ「OPTiM Geo Scan」、オフィスDX分野では「OPTiM Contract」「OPTiM 電子帳簿保存」のライセンス数が順調に積み上がった。中間期は特にストック型の売上構成比が86.5%と高く順調に積み上がった。利益については、売上総利益率が同2.4ポイント上昇したが、これは収益性が相対的に高いストック型の売上構成が高かったことが主因である。販管費率は、開発人員への積極的投資を継続していることもあり同2.2ポイントの上昇となった。これらの結果、営業利益率は前年同期から0.2ポイント上昇の17.6%となった。全般的には、将来への先行投資を行いつつ、高い収益性を維持しており、順調な業績と評価できる。なお、経常利益と中間純利益が減益となっているのは、持分法による投資損失が 43百万円増加したことによる。

3. 成長戦略・トピックス
同社の基本戦略は、モバイルマネジメントサービスを順調に伸ばしつつ、X-Techサービスを大きく成長させ、業績を飛躍的に発展させるというものであり、この戦略は従来一貫している。X-Techサービスでは「OPTiM Cloud IoT OS」や関連技術を活用した業界特化のキラーサービスを複数展開しており、アグリテック、デジタルコンストラクション、デジタルヘルス、オフィスDX、マーケティングDX、映像管理DXなどが主要な事業領域である。

同社では積極的に生成AI分野への研究開発投資を推進しており、医療DXやオフィスDXなど業界を問わず生成AIを用いたサービスが生まれている。活用事例としては、報告書自動作成カメラアプリ「OPTiM Taglet」や生成AIが実現するカスタマーサクセスサービス「OPTiM Customer Success Portal」、医師・看護師の文章作成業務を生成AIが支援する、オンプレミスLLM(大規模言語モデル)を搭載したサービス「OPTiM AI ホスピタル」などがLLMを用いたサービスである。同社は画像、動画、音声などのAIを得意としてきたが、生成AIに関しても技術的なアドバンテージを持ち、専門的な業務に寄与するサービスとして実用化している。注目される事例として、国内初となる、医師・看護師の文章作成業務を生成AIが支援するオンプレミスLLM搭載サービス「OPTiM AI ホスピタル」が、2025年1月に販売開始される。社会医療法人祐愛会織田病院での臨床現場への導入事例では、退院時看護サマリー作成にかかる時間が54.2%削減され、業務効率化が確認された。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

《HN》

 提供:フィスコ

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