【通貨】為替週間見通し:ドルは底堅い値動きか、日米インフレ関連指標を注視する展開
米ドル/円 <日足> 「株探」多機能チャートより
【今週の概況】
■ドルはやや強含み、リスク回避の円買いは縮小
今週の米ドル・円はやや強含み。日本銀行による12月利上げの可能性があること、フランスや韓国の政治不安を意識して12月3日の欧米市場で米ドル・円は一時148円台後半まで下落した。しかしながら、フランスと韓国の政治的な混乱は短期間で収束するとの見方が広がり、リスク回避の円買いは縮小した。日銀による12月利上げの可能性は消えていないものの、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は4日、「米国経済は9月に予想していたよりも好調」との見方を伝えたことを受けて一部でリスク選好的な米ドル買い・円売りが観測された。
6日のニューヨーク外為市場で米ドル・円は150円台後半から149円37銭まで下落したが、ドル売りは拡大せず、後半にかけて150円台に戻した。この日発表された11月雇用統計で非農業部門雇用者数は市場予想を上回ったが、失業率の上昇を受けて12月の追加利下げ確率は上昇し、ドル売りが一時優勢となった。ただ、その後発表された12月ミシガン大学消費者信頼感指数速報値は市場予想を上回ったこと、ボウマンFRB理事が「注意深く、段階的な利下げを支持する」との見方を伝えたことから、リスク回避の米ドル売り・円買いは縮小し、150円04銭でこの週の取引を終えた。米ドル・円の取引レンジ:148円65銭-151円23銭。
【来週の見通し】
■ドルは底堅い値動きか、日米インフレ関連指標を注視する展開
来週のドル・円は底堅い値動きか。日米中央銀行の金融政策決定を翌週(12月第三週)に控え、両国のインフレ関連指標を注視する展開となりそうだ。市場予想を上回った場合、ドルは相対的に下げづらくなりそうだ。12月11日に発表される11月国内企業物価指数は上昇トレンドを維持しており、前回(10月)の前年比+3.4%を上回れば、今月の日銀金融政策決定会合で追加利上げ決定の支援材料となる可能性がある。日本銀行の中村審議委員は5日の講演で日本の消費者物価指数(CPI)コア指数が来年以降、目標の前年比+2%を下回る可能性に言及したが、利上げに反対しているわけではなく、あくまでデータ次第と説明している。
一方、11月米消費者物価コア指数(CPI)は前年比+3.3%程度と予想されており、上昇率は10月実績と同水準となる見込み。インフレ緩和のペースは減速し、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は追加利下げを急ぐべきではないとの見解を表明しているため、市場予想と一致した場合、ドルは売りづらい。
ただ、日銀、FRBとも金融政策の方針に関しては当局者内で意見が分かれ、方向性は明確に定まっていないとみられている。そのため、有力な売買材料が提供されない場合、米ドル・円は150円を挟んだ水準でのもみ合いが続く可能性がある。
【日・11月国内企業物価指数】(11日発表予定)
11日発表の国内企業物価指数は前回実績の前年比+3.4%を上回るか注目される。市場予想と一致、または上回った場合、12月の追加利上げを見込んだ円買いを強める要因となる。
【米・11月消費者物価コア指数(CPI)】(11日発表予定)
11日発表の米11月消費者物コア指数(CPI)は前年比+3.30%と予想されている。市場予想と一致してもインフレの高止まりを示唆するデータとなり、ドル買い要因となろう。
ドル・円の予想レンジ:148円50銭-152円00銭
《FA》
提供:フィスコ