【特集】プラチナは軟調、トランプ氏の関税強化発言で貿易摩擦を懸念 <コモディティ特集>
MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
トランプ次期米大統領は中国からの輸入品に10%の追加関税、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を課すと発言した。不法移民や違法薬物取引が背景にある。これにより貿易摩擦に対する懸念が高まったが、カナダのトルドー首相やメキシコのシェインバウム大統領はトランプ次期米大統領と関税回避に向けて協議している。次期米大統領はその後、BRICSに対して脱ドルを推進すれば100%の関税を課すと発言。関税を材料に交渉を進めるとみられ、今後の発言を確認したい。
一方、11月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は55.3と2022年4月以来の高水準となった。前月は54.1。米ISM製造業景気指数も48.4と前月の46.5から上昇した。次期米政権の企業寄りの政策に対する期待感が背景にある。また、米財務長官に著名投資家のスコット・ベッセント氏が指名され、経済成長を促すとみられている。
●次期米政権に対する中国や欧州の対応も焦点
中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会は、経済のシステミックリスクとなっている地方政府の「隠れ債務」について10兆元規模の対策を決定した。米大統領選でトランプ前大統領が勝利し米中貿易戦争の懸念が高まったが、今後発表される対中政策を確認してから景気刺激策を拡大する見通しとなった。11月の中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.3と7ヵ月ぶりの高水準となった。前月の50.1から上昇し、事前予想の50.2も上回った。景気刺激策の効果とみられているが、次期米政権の追加関税で先行きに対する懸念が残っている。ただ、上海のプラチナ市場では安値圏で出来高が増加し、中国勢の安値拾いの買いが入った。引き続き買われると、900ドル前後で下げ止まる可能性が出てくる。
トランプ次期米大統領の関税引き上げ方針で、欧州でも貿易戦争に対する懸念が出ている。ただ、ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁は、次期米大統領との貿易戦争を回避するため、欧州各国は米国製品の購入を増やすべきだと述べた。関税回避で米国から液化天然ガス(LNG)や防衛装備品などを購入するディール(取引)を活用すべきとした。また、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は、フォンデアライエン委員長率いる2期目の新体制が始まった。ウクライナについて、米国第一主義を掲げるトランプ次期米大統領と対立する可能性があり、今後の発言を確認したい。
●WPICは3年連続の供給不足を予想
ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告によると、プラチナは3年連続の供給不足見通しとなり、2025年は17トンの供給不足と予想された。自動車触媒需要が8年ぶりの高水準になると予想された。2024年は21トンの供給不足の見通し。トレバー・レイモンドCEOは、「2025年のプラチナ市場は、旺盛な需要と脆弱な供給の継続が原因となり、3年連続で大幅な供給不足となる見通しとなった。世界経済が不透明だが、プラチナは最終用途が多岐にわたるため、現在の環境下でも底堅さを見せている」と述べた。
プラチナETF(上場投信)残高は11月29日の米国で34.28トン(10月末33.16トン)、28日の英国で18.23トン(同16.85トン)、29日の南アフリカで11.17トン(同11.20トン)となった。レンジ内で調整局面を迎えるなか、安値拾いの買いが入った。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、11月26日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万8660枚(前週2万2676枚)に縮小し、9月以来の低水準となった。10月29日の3万5543枚をピークとして縮小傾向にある。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース