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【特集】米大統領選まで3週間、原油市場は懐かしき口先介入をまた味わうのか? <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 米大統領選が3週間後に迫っている。事前調査ではトランプ前大統領とハリス副大統領のどちらが優勢なのか様々であり、世論調査は勝者を見通すうえであまり役に立ちそうにないが、トランプ前大統領が勝った場合、任期中の 原油相場はまた慌ただしくなりそうだ。

●イランを強烈に敵視するトランプ氏

 米大統領としての在任期間中、トランプ氏は原油相場にありとあらゆる手がかりを供給した。イラン核合意から一方的に撤退し、イランに対する経済制裁を再開したほか、当時のツイッター(現:X)で石油輸出国機構(OPEC)を口を極めて批判し、原油高をけん制した。現役の大統領が日々自由にSNSを利用し相場に介入すると、これほどまでに厄介なのかと痛感した。ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の聖地であるエルサレムを、イスラエルの首都であると正式に認めてイスラム圏の反米感情を強め、イラン革命防衛隊(IRGC)の精鋭コッズ部隊を指揮していたソレイマニ司令官を突如殺害したのもトランプ前大統領である。このほかにもトランプ氏が原油市場を刺激した出来事はあったかもしれないが、軽く思い出すだけでもこれだけある。

 ソレイマニ司令官を殺害された当時、第3次世界大戦(WW3)の勃発が連想されたが、イランの米軍基地への報復攻撃は抑制されていた。イランが弾道ミサイルを発射する前に米国に通知して、イラクに駐留する米兵には避難する十分な時間があった。移動可能な兵器も退避していたのではないか。イランの配慮もあって米国は反撃せず、応酬の連鎖は絶たれた。ただ、防空壕に避難していた複数の米兵は弾道ミサイルが着弾した激しい衝撃で病院送りとなった。

 当時のトランプ大統領は「イランの報復攻撃で被害が発生した場合には報復する」と高らかに宣言していたが、死者が出なかったせいか、米大統領は振り上げた拳をおろした。トランプ氏はイランを異常なほど敵視していたことから、ソレイマニ司令官殺害は大戦勃発の皮切りとなっても不思議ではなかった。だが、米国が自ら攻撃を仕掛けたとはいえ大規模な軍事衝突を開始する覚悟はなかったようだ。どちらかといえば特に口先では攻撃的な大統領だった。

●イスラエルとイランの戦争は勃発するか

 現在、イランを立て続けに挑発し、攻撃しているのは米国ではなく、イスラエルである。イスラエルは、イスラム組織ハマスの最高幹部だったイスマイル・ハニヤ氏を暗殺し、イスラム組織ヒズボラの指導者であるナスララ師も殺害した。ナスララ師の後継者候補も次々と空爆によって死亡した。シリアやレバノンでIRGC幹部も複数殺害されている。

 今月、イランはイスラエルに報復したが、イスラエルは大戦勃発の引き金となるような反撃を実施するのだろうか。トランプ前大統領と同様に、イスラエルはイランを地球上で最も敵視している。ただ、イランの報復攻撃を受けた4月のように、イスラエルはまた穏便に済ます可能性はある。イスラエルは親イランの武装組織を確実に弱体化させることに成功しており、イランとのミサイル攻撃の応酬でイスラエル本土の被害を拡大させることはないかもしれない。新たな米大統領にイラン弾圧を任せることも可能だろう。イスラエルは空爆でレバノン各地を瓦礫に変えているが、地上戦ではヒズボラに苦戦しており、イランに戦力を向ける余力はないかもしれない。ネタニヤフ首相の最終的な判断を待ちたい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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