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【特集】プラチナは堅調、米利下げ開始や中国の景気刺激策が支援 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが決定されたことや中国の国慶節を控えて景気刺激策が相次いで発表されたことを受けて堅調となり、1000ドル台を回復した。しかし、9月の米雇用統計で労働市場が予想以上に堅調だったことが示されると、米FOMCの大幅利下げ決定は間違いとの見方も出て上げ一服となった。ただ、米連邦準備理事会(FRB)が利下げサイクルに転じたとの見方に変わりはなく、11月は0.25%ポイントの利下げが見込まれている。欧州中央銀行(ECB)の追加利下げも見込まれており、各国の景気が拡大すると、プラチナの需要が増加し、支援要因になるとみられる。

 9月の米FOMCではフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.50%ポイント引き下げ、4.75~5.00%とした。米FOMC声明は「インフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信を強めており、雇用とインフレ率の目標達成に対するリスクがほぼ均衡していると判断する」との内容だった。米FRB当局者による金利・経済見通しでは、年内に更に0.50%ポイント、2025年に計1%ポイント、2026年には計0.50%ポイントの追加利下げの見込み。2026年末時点の政策金利は2.9%で中立金利に達すると予想され、前回見通しの2.8%から上昇した。米FRBが利下げサイクルに転じたことはドル安を誘発し、貴金属の支援要因になるとみられている。

 9月米雇用統計の発表まで、労働市場の減速懸念から11月も0.50%ポイントの利下げが実施されるとの見方が強まっていた。しかし結果は予想を裏切る堅調なものだった。非農業部門雇用者数は前月比25万4000人増と事前予想の14万人増を大幅に上回り、失業率も4.1%と前月の4.2%から低下。11月の大幅利下げの可能性はなくなった。10日には9月の米消費者物価指数(CPI)の発表があり、金融政策の見通しを確認したい。

●中国の景気刺激策に対する期待感

 中国の不動産不況の長期化に対する懸念を受けて中国経済の先行き懸念が高まったが、国慶節の大型連休を控えて景気刺激策が相次いで発表された。中国人民銀行は預金準備率を引き下げて、消費者や企業への融資にまわせる資金を増やす措置を発表。潘功勝総裁は、この措置により金融市場に1兆元相当が供給されると述べた。さらに中国人民銀行は、中期貸出制度(MLF)の貸し出し金利を2.3%から2.0%に引き下げると発表した。また、中国共産党は、習近平国家主席が政治局会議を開き、今後の経済政策運営について議論した。更に中国の主要3都市が住宅購入に対する規制を緩和した。

 これらの施策によって、国慶節中の新築住宅仮契約が急増したことが伝えられた。中国国家発展改革委員会(発改委)は国慶節明けの8日に記者会見を開き、漸進的な経済政策パッケージの実施について説明した。ただ、「今年の経済成長目標を完全に達成できると確信している」との言葉のみで具体的な政策がなかったことから、会見後は失望感が広がっている。今後の中国経済の行方を引き続き確認したい。

●プラチナは2年連続の大幅な供給不足見通し

 ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告によると、2024年のプラチナは31トンの供給不足になると予想された。昨年の23トンから供給不足幅を拡大する見通しとなった。供給量は一段と縮小して220トンとなる一方、需要量は前年比3%増の252トンと予想され、前回見通しの15トンから不足幅が拡大した。ただ、トレバー・レイモンドCEOは、プラチナは2年連続で大幅な不足となるが、価格は反応していないように見えるとした。ディーゼルゲート事件(独ディーゼルエンジン車の排出量不正問題)による需要減少予想や、駆動方式の急速な電化に対する世界の期待が、センチメントを悪化させたと指摘した。

 プラチナETF(上場投信)残高は7日の米国で31.88トン(8月末32.05トン)、3日の英国で18.14トン(同21.04トン)、4日の南アフリカで11.11トン(同11.21トン)となった。景気減速懸念が残り、戻り場面で投資資金が流出した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、10月1日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万8132枚(前週2万4401枚)に拡大し、1月2日以来の高水準となった。米FRBの利下げ開始や中国の景気刺激策に対する期待感を受けて新規買い、買い戻しが入った。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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