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【市況】アジアも利下げへ【フィスコ・コラム】


アジア諸国で金融緩和が進みつつあります。フィリピンはコロナ禍の最悪期以来の政策金利引き下げを決定。インドネシアとタイ、韓国も目先は利下げが見込まれます。これらの国で通貨安に振れれば、中国経済を下押ししかねず、より警戒感が高まりそうです。


9月3日発表された韓国の消費者物価指数(CPI)は前年比+2.0%と前月から鈍化し、2021年3月以来の低い伸びが示されました。韓国銀行(中銀)は直近の定例会合で、15年ぶりの高水準にある政策金利をすでに1年超にわたり据え置きを決定。ただ、インフレ目標まで低下したCPIを受け早ければ10月にも政策金利について引き下げが実施される見通しとなり、韓国ウォンは軟調地合いが続いています。


今後、韓国のように金融緩和に舵を切るとみられているのはインドネシア、タイの2カ国。インドネシア中銀は先月、ルピア安抑止と資金流入確保のため政策金利を据え置き、タイ中銀も同様に、現行の金融政策を維持しました。両中銀は通貨安を抑止するため引き締め的な金融政策を継続してきました。が、FRBの利下げが見込まれるため、それに歩調を合わせることで通貨の不安定化を回避しようとしています。


アジア諸国で利下げの口火を切ったのはフィリピンで、同国中銀は8月15日、政策金利を0.25%低い6.25%に引き下げました。同国の直近の消費者物価指数(CPI)は前年比+4.4%と、中銀目標上限を上回っています。ただ、年内には2-4%の目標内に収まるとの見通しから、景気テコ入れのため2020年以来の利下げに踏み切りました。さらに10月、12月にも緩和を予定しているようです。


アジアの主要国が利下げに舵を切った場合、各国の国内経済を活性化させる一方、中国との貿易への影響は避けられません。利下げにより、金利負担が軽減され、企業の投資や消費が上向くことで、輸入需要が拡大することが予想されます。特に中国からの輸入品に対して需要が高まれば、中国の輸出業にとってはプラス材料となり、中国経済の回復に大きく寄与すると期待されます。


半面、アジア諸国の利下げが人民元に与える影響も見逃せません。各国通貨が元に対して下落すれば、中国からの輸入品が割高になります。そのためアジア諸国の輸入業者はコスト増に直面し、代替品や他の供給国を模索する動きが出るかもしれません。中国としては、そうしたリスクを軽減するために価格競争力を低下させないよう元安基調を維持する必要があり、金利安・元安の継続が見込まれます。
(吉池 威)
※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《ST》

 提供:フィスコ

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