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【特集】金は史上最高値を更新、米FRBの9月利下げ見通しで <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 は8月、予想を下回る米雇用統計などを受けてリスク回避の動きが出たことが圧迫要因になった。ただ、株安が一服すると米連邦準備理事会(FRB)の利下げ見通しを受けて押し目を買われ、史上最高値を更新した。パウエル米FRB議長がジャクソンホール会合の講演で、政策を調整する「時期が来た」と述べると、市場で9月利下げが明確に示唆されたと受け止められた。米金融当局者からも相次いで9月利下げを支持する発言が出ており、米FRBが利下げを開始することで金は引き続き史上最高値を試すとみられている。

 7月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比11万4000人増となり、事前予想の17万5000人増を下回った。失業率は4.3%と前月の4.1%から上昇し、2021年9月以来の高水準となった。この米雇用統計を受けて予想以上に景気減速が進んでいるとの懸念が高まった。7月の米消費者物価指数(CPI)は前年比2.9%上昇と前月の3.0%から伸びが鈍化し、2021年3月以来で3%を下回ったが、前月比0.2%上昇と前月の0.1%低下から反転した。7月の米小売売上高は前月比1.0%増と事前予想の0.3%増を上回った。また、米新規失業保険申請件数は前週比7000件減の22万7000件と事前予想の23万5000件を予想外に下回り、2週連続の減少となった。株価急落を受けて米FRBの緊急利下げや大幅利下げの見方が出ていたが、堅調な米経済指標を受けて景気減速懸念が後退し、9月の小幅利下げの見方が戻った。

 一方、米雇用統計の算出基準改定で、3月時点の非農業部門の就業者数が81万8000人下方改定され、労働市場の減速に対する懸念が残っている。9月17~18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)までに発表される経済指標を引き続き確認したい。

●国内金は円高転換が上値を抑える要因

 金の現物相場は8月20日に史上最高値2530.94ドルをつけたが、JPX金先限は7月17日に上場来高値1万2679円をつけたのち、円高に転じたことに上値を抑えられた。

 7月31日の日銀金融政策決定会合で利上げが決定され、植田日銀総裁は記者会見で、政策金利について0.5%が壁になるとは認識していないと述べた。今回の利上げ決定によって円キャリートレードの巻き戻しの動きが出て日経平均株価が急落し、リスク回避の動きを促す格好となった。ただ、内田日銀副総裁が、当面は現行の金融緩和を維持するとの考えを示すと市場に安心感が戻った。植田日銀総裁は8月23日の衆院財務金融委員会の閉会中審査で答弁し、金融政策の考え方について内田副総裁と違いはないと述べ、副総裁の発言は適切とした。

 米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月20日時点のシカゴ円先物市場でファンド筋の取組は2万3585枚買い越し(前週2万3104枚買い越し)となった。これまで米FRBの高金利維持と日銀の金融緩和継続を受けて円売り圧力が強く、7月2日に18万2033枚まで売り越しが拡大していた。ただ、日米の金利差縮小の見方が出ると、円を買い戻す動きに加え、円買いの動きが出た。

●NY市場の大口投機家の買い越しは20年3月以来の高水準

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、8月26日に856.12トン(7月末846.05トン)となった。米FRBの利下げ見通しを受けて投資資金が流入した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは8月20日時点で29万1253枚(前週26万7264枚)に拡大し、2020年3月以来の高水準となった。利下げ見通しで買い意欲が強く、買われ過ぎ感が出ると、利食い売り主導の調整局面も警戒される。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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