【特集】海底のラストリゾート、燃え上がる「メタンハイドレート」関連株 <株探トップ特集>
「燃える氷」とも呼ばれるメタンハイドレートは、将来の国産エネルギー資源として期待されているひとつだ。商業生産に向けた技術が確立できれば、エネルギー問題を解決する切り札となることから関連銘柄に注目したい。
―JOGMECが世界で初めて燃料に使用、将来の国産エネルギー資源のひとつに―
エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は今月13日、メタンハイドレート層から生産したガスを世界で初めてエネルギー源として使用したことを明らかにした。米国で7月まで10カ月以上にわたってガス産出試験を実施し、試験設備の発電機や蒸発器などの燃料として自家消費したという。エネルギー・鉱物資源に乏しい日本にとって、日本近海に多くの存在が確認されている メタンハイドレートは、将来の国産エネルギー資源のひとつとして期待されている。商業生産に向けた技術が確立できれば、エネルギー問題を解決する切り札となることから関連銘柄に目を向けてみたい。
●海底下に眠る「燃える氷」
メタンハイドレートは、メタンガスと水が低温・高圧の特定の条件下で氷状の固体として形成される物質で、その形状から「燃える氷」とも呼ばれている。主に極地(永久凍土地帯)の地層中や大水深エリアの海底面下の比較的浅い層などに存在し、日本の周辺海域にも深海の海底面下に広くメタンハイドレートの存在が確認されており、過去には渥美半島から志摩半島の沖合(第二渥美海丘)で海洋産出試験が実施された。
将来の商業化に向けては、長期の生産挙動を見極めることが不可欠であるため、JOGMECは2023年9月から海洋に比べて相対的に試験の制御が容易でインフラの整っているアラスカ州陸上で長期産出試験を実施し、24年7月30日に終了した。今後、ガス産出試験に伴うメタンハイドレート層の変化を捉えるデータの取得を継続し、試験を通じて得られた知見・経験をもとに、取得されたデータの解析を行い、日本周辺海域での次回海洋産出試験や将来の商業化に向けて、更なる研究開発を進めるとしている。
●東洋エンジが試験支援
今回の試験では、東洋エンジニアリング <6330> [東証P]が産出試験中の現場作業監理支援業務とあわせて、遠隔モニタリングシステムの運用・保守を行った。このシステムは産出試験サイトのモニタリングデータをリアルタイムで収集し、これをもとに遠隔でのオペレーション状況の把握や、データをダウンロードしての即時解析を実現した。今後は産出試験後のモニタリングが引き続き行われるほか、物理探査(3D VSP)や設備撤去などが計画されており、同社は引き続きJOGMECを支援する構えだ。
なお、JOGMECがメンバーとなっている「MH21-S研究開発コンソーシアム」は、経済産業省資源エネルギー庁から委託を受けた「砂層型メタンハイドレートの研究開発事業」を適切、円滑かつ効率的に実施するため、JOGMEC・産業技術総合研究所(AIST)・日本メタンハイドレート調査(JMH、東京都千代田区)の3法人で組織されたもの。JMHの株主には、INPEX <1605> [東証P]、石油資源開発 <1662> [東証P]、日揮ホールディングス <1963> [東証P]、三菱ガス化学 <4182> [東証P]、出光興産 <5019> [東証P]、ENEOSホールディングス <5020> [東証P]子会社のJX石油開発、日本製鉄 <5401> [東証P]グループの日鉄エンジニアリング、東洋エンジ、千代田化工建設 <6366> [東証S]、三井物産 <8031> [東証P]子会社の三井石油開発が名を連ねており、活躍の場が更に拡大しそうだ。
●海洋資源開発関連にも注目
政府は24年3月に「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」を改定した。これは30年度までに民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指し、事業化する際に必要となる技術・知見・制度などを確立するための技術開発を行うという目標が掲げられている。こうした背景には、エネルギー・鉱物資源の需要量のほぼすべてを海外からの輸入に頼り、常に資源国やシーレーンの情勢変化によって供給不安に直面するリスクを抱えていることがあり、具体的には海洋エネルギー・鉱物資源(メタンハイドレート、石油・天然ガス、海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊、レアアース泥)などの国内における商業化に向けた資源の探鉱・開発を進めていくこととしている。
日本財団(東京都港区)と東京大学は6月に、日本の排他的経済水域内(南鳥島周辺海域)にレアメタル(希少金属)を豊富に含むマンガンノジュール(海底鉱物資源のひとつで、電気自動車やスマートフォンなどのハイテク製品に使用されるレアメタルを含む鉱物を指す)が、高密度で広範囲に分布する有望海域を特定したと発表。資源量は2億3000万トン以上と推計され、コバルトは国内消費量の75年分以上、ニッケルは11年分以上に相当するとみられている。今後、コンソーシアムなどの推進体制を構築して商用化を目指すとしており、海洋資源開発に取り組む企業から目が離せない。
関連銘柄としては、グループ会社が海底資源探査機材を手掛ける日油 <4403> [東証P]、海洋分野で技術や探査・機器の開発とともに実績を積み重ねている川崎地質 <4673> [東証S]、海洋石油・ガス開発プロジェクトに用いられるFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産設備)の設計・建造・リース・チャーターなどトータルサービスを展開する三井海洋開発 <6269> [東証P]、ボーリングマシン大手の鉱研工業 <6297> [東証S]、深海や海底などの調査活動に使用される耐圧ガラス球や深海探査機「江戸っ子1号」プロジェクトを推進している岡本硝子 <7746> [東証S]、資源探査用システムの開発などを行う応用地質 <9755> [東証P]、海洋調査分野での事業拡大に注力するいであ <9768> [東証S]などが挙げられる。
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