【市況】値下がり数が上回るなかM7が上昇を牽引 (4) 【シルバーブラットの「S&P500」月例レポート】
●インデックス・レビュー
◇S&P 500指数
2024年も折り返しを迎える中、少なくとも大型株や時価総額加重平均型インデックス(S&P500指数など―敢えて無防備で言えば)、あるいはマグニフィセント・セブンを保有する投資家にとって、まさにパーティーの局面を迎えています。エヌビディア<NVDA>の株価が3日間で(高値から安値まで)16.1%下落するという不測の事態にもかかわらず、パーティーは続きました。同社株は値を戻し、月間では控えめな12.7%の上昇となりました(なんと慈悲深いことでしょう。年初来では147%上昇)。この動きが他の499銘柄の下支え材料となり、S&P500指数は6月に3.47%の上昇を記録しました。
注目すべきなのは、6月に値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回ったことです(上昇が201銘柄、下落が301銘柄)。第2四半期全体で見ても、同じ7銘柄、中でも現在脚光を浴びているエヌビディアの1銘柄に後押しされて、S&P500指数が3.92%上昇したにもかかわらず(4月の4.16%下落は5月の4.80%上昇よって打ち消されました)、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を極めて大きく上回りました(上昇が199銘柄、下落が304銘柄)。年初来では14.48%上昇していますが、値上がり銘柄数が上回っています(上昇が301銘柄、下落が200銘柄で、幅広く上昇した第1四半期の10.18%高が支援材料に)。
「授かり物」をポートフォリオに組み入れたいとは思いませんが、この「授かり物」を除外すると、S&P500指数の年初来のトータルリターンはプラス15.29%からプラス6.27%(上半期としては良好なリターン)まで低下します。もっとも、上がったものは下がる可能性があり、エヌビディア株が6月の3日間より長い下落局面を迎えることもあり得ます(少なくとも、そうした憶測があります)。ただし、値下がりについていくのは値上がりについていくことほど楽しくはありません。
6月のその他の明るい側面として、市場において、FRBによる利下げの後ずれ(経済と企業利益が持続する限り)や地政学的問題(ガザとウクライナの問題に加え、米国以外の国での選挙に向けた動き)、あるいは懸案となっている米大統領選挙(筆者自身は個人的に注目しており、投票にもおそらく参加するつもりですが、7月1日の討論会の前後には酒量が増えるかもしれません)が悪材料視されることはありませんでした。値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回る中でも、6月のS&P500指数は3.47%と顕著に上昇しました。同指数の11セクター中5セクターが上昇しています。
マグニフィセント・セブンは6月の同指数のトータルリターンの79%に寄与しており、これら7銘柄を除くと、プラス3.59%であった6月のトータルリターンはプラス0.76%まで低下します。くどいかもしれませんが、これでもなお素晴らしい結果ですが、7銘柄を含めた場合には遠く及びません。多くの人々が普段の会話でマグニフィセント・セブンが話題に上るのにうんざりしていますが、数字にこだわる投資家は、(少なくとも年初来では)自身のポートフォリオでこれらの銘柄を目にするのを望むでしょう。売りのタイミングに関して、筆者は自身の保有銘柄に基づき、正常に回帰しようとする一般投資家の側に立っています。プロが推奨する銘柄と一般投資家が保有する銘柄は異なるものですが、一般投資家は誰もがすぐに売れる態勢にあると思われます。
7月は決算と、そしてより重要な点として、2024年下半期の業績見通しが相場を左右するでしょう(企業は2025年について控えめな見通しを示そうとしており、見通しには米大統領と連邦議会の構成に関する選挙結果を織り込む必要があります)。2024年第2四半期の決算発表が7月12日の金曜日に、シティグループ<C>、JPモルガン・チェース<JPM>、ウェルズ・ファーゴ<WFC>の大手銀行を皮切りに始まります(これらの銀行決算では、クレジットカードや商業用不動産向け融資に関連しが貸倒引当金の調整が注目されます。注目すべき点として、銀行は6月末以降、FRBのストレステストの結果に基づき増配を発表し始めています)。現時点で第2四半期は過去最高益の更新が見込まれおり、これが実現すれば、最高値圏にあるS&P500指数のバリュエーションも下支えされるでしょう。第3四半期と第4四半期も、過去最高益の更新とともに、利益は増加基調が続く見通しです。
現在、楽観的なウォール街は、企業利益は(大半が職を維持し、支出をためらわない)消費者と(借り入れを通じて、支出が拡大の一途を辿っている)政府という2つの忠実な顧客層により下支えされるとみています。利益が成長し続ける限り、市場はマネーを追い続けるでしょう(少なくとも、願わくは)。
6月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は0.7684%と5月の0.7687%からわずかに低下し、年初来では0.83%となっています。なお、2023年通年は1.04%、2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした(長期平均は1.42%)。6月の出来高は、5月の前月比4%増加の後に、同1%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では4%減となりました。2024年6月までの12ヵ月間は前年同期比6%減少しています。2023年通年では前年比1%減で、2022年通年は同6%増でした。6月は1%以上変動した日数は19営業日中1日(上昇が1日、下落が0日)で、2%以上変動した営業日はありませんでした。5月は1%以上変動した日数は22営業日中3日(上昇が3日、下落が0日)でした。年初来では、1%以上変動した日数は21日(上昇が14日、下落が7日)で、2%以上変動した日数は1日(上昇)でした。2023年通年は、1%以上変動した日数が250営業日中63日(上昇が37日、下落が26日)、2%以上変動した日数が2日(上昇が1日、下落が1日)でした。
6月は19営業日中4日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上変動した日ありませんでした。対して5月は1%以上の変動が22営業日中4日で、2%以上変動した日数はありませんでした。年初来では、33日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動は2日でした。2023年通年では1%以上の変動が113日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が218日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日でした(4%以上の変動が4日、5%以上の変動が1日)。
6月は値上がり銘柄数が減少し、値下がり銘柄数を下回りました。S&P500指数は上昇したものの、6月の値上がり銘柄数は201銘柄(平均上昇率は5.20%)と、5月の327銘柄(同6.66%)から減少しました。6月の10%以上上昇した銘柄数は29銘柄(同15.67%)と、5月の62銘柄(同16.77%)から減少し、25%以上上昇した銘柄はありませんでした(5月は8銘柄)。一方、6月の値下がり銘柄数は301銘柄(平均下落率は4.28%)と、5月の176銘柄(同4.84%)から増加しました。6月は10%以上下落した銘柄数が5月(同14.90%)と同じ21銘柄(同15.76%)で、1銘柄が25%以上下落した銘柄しました(5月はゼロ)。
2024年年初来では、値上がり銘柄数は301銘柄(平均上昇率は16.27%)で、173銘柄(同24.46%)が10%以上上昇し、56銘柄が25%以上上昇しました。一方、値下がり銘柄数は200銘柄(平均下落率は11.16%)で、91銘柄(同18.92%)が10%以上下落し、16銘柄が25%以上下落しました。2023年通年では2022年から改善し、値上がり銘柄数は322銘柄で、値下がり銘柄数は179銘柄でした。10%以上上昇した銘柄数は248銘柄、10%以上下落した銘柄数は85銘柄でした。143銘柄が25%以上上昇し、20銘柄が25%以上下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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