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【特集】身体にやさしいオペ、新潮流「低侵襲治療」関連銘柄にフェードイン <株探トップ特集>

中国市場減速が懸念される医療機器市場で、国内メーカーが低侵襲治療分野への注力を強めている。参入企業も増えつつあり、株式市場でも注目されそうだ。

―“患者に負担の少ない治療”に関心高まる、国内医療機器メーカーが注力へ―

 医療機器セクターは、コロナ禍前には中国市場の成長や先進国の高齢化が追い風となって高成長が期待できる、株式市場でも評価の高い業種だった。コロナ禍を経て、再び勢いを取り戻すかに見えた 医療機器関連だが、その勢いはいまだ戻っていないようにみられる。

 その背景には中国市場の減速や世界的な医療財政の悪化などがあるとみられるが、一方でこうした厳しい環境のなかにあっても、特定の分野に強みを持ち、今後も好成長が期待できる企業も多い。今回はそうした医療機器関連企業に注目したい。

●医療機器業界の現状

 経済産業省が設置した産学官による医療機器産業ビジョン研究会が、今年3月にまとめた「医療機器産業ビジョン2024」によると、医療機器産業の世界市場は23年に約5176億ドルで、27年までに約6543億ドルに成長すると予測されている。18年から27年の年平均成長率は5.9%で、特に新興国・途上国での伸びが期待されているほか、欧米についても引き続き成長が見込まれている。

 一方、日本の国内市場は年平均3.7%で成長しており、他の地域と比較するとその伸びは大きくないものの、27年までに約380億ドルの市場になると予測されている。ただ、国内生産額は1990年から2018年にかけて年平均1.5%で成長しているものの、同期間のグローバル市場の7.1%と比較すると成長率は高くない。国内市場の成長は、輸入品に吸収されているというのが現状のようだ。

●注目高まる低侵襲治療とは

 こうしたなかにあって、国内の医療機器メーカーが取り組みを強めているのが低侵襲治療の分野だ。

 低侵襲治療とは、手術や検査に伴う痛み、発熱・出血など、身体に対する侵襲(生体を傷つける)度合いが低い医療機器を用いた診断・治療のこと。例えば先端にカメラやレンズが付いた細長い管状の医療機器を用いて行う 内視鏡による治療や、血管内に細い筒状の器具(カテーテル)を挿入して行う治療は、体に数カ所の小さい穴をあけるだけで済むことから、患者の体の負担が少ない。

 これらに関連する企業としては、内視鏡ではオリンパス <7733> [東証P]、富士フイルムホールディングス <4901> [東証P]、HOYA <7741> [東証P]が消化器内視鏡の世界シェアをほぼ占めており、内視鏡にAIを使った画像認識機能を組み合わせて病変を検出する内視鏡AIにはNEC <6701> [東証P]も参入している。また、カテーテルでは米企業が強いながらテルモ <4543> [東証P]が心臓領域でシェア上位にあり、世界的にも強みを持つ企業も少なくない。

●医療費抑制の効果も期待

 低侵襲治療は、患者の体への負担を減らすことができるため、QOL(クオリティー・オブ・ライフ:生活の質)向上に役立つだけではなく、入院期間を短縮させ、社会復帰を早める効果がある。一方、病院側も入院日数の減少からより多くの患者を受け入れることができるといったメリットがある。更に最近注目されているのが、治療費の抑制への効果だ。

 昨年10月に厚生労働省が発表した「令和3年度・国民医療費の概況」によると、21年度の国民医療費は45兆359億円(前年度比4.8%増)となり、過去最高となった。GDPに対する比率も8.2%と国際的にみても高い水準にある。医療費削減のためには、効率的な医療の提供が必要だが、従来の手術などに比べると患者の体への負担が小さく、入院日数や薬の投与などが抑えられる低侵襲治療は医療費削減の面からも注目されている。

●低侵襲治療の関連銘柄は

 低侵襲治療に関連する銘柄は、前述の内視鏡を手掛ける3社が有名だが、なかでもオリンパスは世界シェア約7割を占めている消化器内視鏡のほか、外科内視鏡、内視鏡システム、内視鏡処置具などをトータルに展開。このほか、泌尿器領域の低侵襲治療デバイスなども手掛けている。また、富士フイルムも内視鏡システムや処置具などをトータルに展開。超小型カメラを内蔵したカプセルを口から飲み込んで検査を行う、カプセル型の内視鏡システムなども展開している。

 カテーテル関連では、前述のテルモがカテーテルを誘導するガイドワイヤーと呼ばれるアクセスデバイスに強みを持ち、検査用ガイドワイヤーで世界シェア約7割を占める。また、化学メーカーが医療分野の一環として手掛けるケースも多く、カネカ <4118> [東証P]や日本ゼオン <4205> [東証P]などもカテーテル類を手掛けている。

 心臓カテーテル治療に使用されるPCIバルーンカテーテルを患部まで導く「PCIガイドワイヤー」は朝日インテック <7747> [東証P]が強みを持つ。同社では循環器領域だけではなく、末梢血管系や脳血管系、腹部血管系、消化器系などの非循環器領域の展開を強化する方針で、中期的にはこうした非循環器領域が業績拡大を牽引しよう。

 また、朝日インテクのように特定分野に強みを持つ企業はほかにもあり、日本ライフライン <7575> [東証P]は構造的心疾患に強みを持つ。同社では消化器領域や脳血管領域にも注力しており、疾患領域を徐々に拡大させる方針だ。

●手術支援ロボットにも注目

 近年普及している手術支援ロボットにも注目したい。低侵襲治療が提供できるほか、医療従事者の負担も軽減されることから、導入する医療機関が増えている。手術支援ロボットは米インテュイティブ・サージカル<ISRG>の「da Vinci(ダヴィンチ)」が圧倒的シェアを占めているが、国内企業では川崎重工業 <7012> [東証P]とシスメックス <6869> [東証P]が共同出資で設立したメディカロイドが、国産初の手術支援ロボット「hinotori」を開発した。20年に製造販売承認を取得して以降、販売実績を順調に伸ばしており、24年3月期時点の累計販売台数は55台に上る。25年3月期はアジアへの展開加速に注力する予定で、更に26年3月期以降は欧州や米州市場への参入を予定している。

 「hinotori」以外では、前述の朝日インテクが協働型助手ロボット「ANSUR」を開発し23年に製造販売承認を取得した。24年3月末時点で2台販売しており、今後も納入実績を増やしそうだ。また、手術用縫合針大手のマニー <7730> [東証P]では手術支援ロボットに適した縫合用針を開発し来年にも発売予定で注目されている。

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