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【特集】プラチナは調整局面、米FRBの利下げ観測後退が圧迫 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は、供給不足見通しなどを受けて昨年5月以来の高値1095ドル台をつけたのち、利食い売りなどが出て上げ一服となった。その後は米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測後退も圧迫要因となって調整局面を迎え、1000ドルの節目を割り込み、950ドル台まで軟化している。

 4月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.4%上昇と前月の3.5%上昇から伸びが鈍化した。事前予想通りにインフレの伸び鈍化が示され、市場で利下げ期待が高まった。ただ、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で、ディスインフレには予想よりも時間がかかるとの見方が示された。一部の委員がインフレ再燃リスクが浮上すれば追加利上げを実施する可能性を示すと、高金利を維持するとの見方が戻った。

 その後は、予想以下の全米雇用報告を受けて利下げ期待が戻ったが、5月の米雇用統計で労働市場の堅調が示され利下げ期待は後退。同統計で非農業部門雇用者数は前月比27万2000人増となり、事前予想の18万5000人増を大きく上回った。

 CMEのフェドウォッチで、米FRBの年内の利下げ確率は40.3%(前月35.0%)に上昇したが、それでも50%以下となっている。今夜は5月の米CPIの発表や米FOMCがある。事前予想は前年比3.4%上昇とインフレ高止まりが示される見通しであり、米FOMCで明確な方針を示すのは難しいとみられている。

●中国の輸出減少でプラチナの高値買いは見送りか

 主要7ヵ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議で中国の過剰生産能力による輸出拡大が主要議題として議論された。声明で「中国の非市場的な政策や慣行の包括的利用について懸念を表明する。今後も過剰生産能力の潜在的な悪影響を監視し、世界貿易機関(WTO)の原則に沿って公平な競争条件を確保するための措置を講じることを検討する」とした。米国は関税引き上げを発表しており、中国の輸出減少につながると、高値でのプラチナの買いは見送られるとみられる。

 5月の中国の財新製造業購買担当者景気指数(PMI)は51.7と前月の51.4から上昇し、2022年6月以来の高水準となった。政府の支援策を背景に生産と新規受注が好調だった。事前予想の51.5も上回った。サービス部門PMIも54.0と前月の52.5から上昇し、2023年7月以来の高水準となった。雇用は1月以降で初めて上向いた。総合PMIは前月の52.8から54.1に上昇し、1年ぶりの高水準となった。国家統計局が発表した5月のPMIは製造業、非製造業ともに低下し、財新と対照的な結果となった。財新のPMIは、統計局よりも調査対象の規模が小さく、輸出志向の企業の割合が多いとされている。

●英国や南アのプラチナETFに投資資金が流入

 プラチナETF(上場投信)残高は11日の米国で32.22トン(4月末32.54トン)、10日の英国で24.83トン(同15.80トン)、10日の南アフリカで11.75トン(同11.43トン)となった。供給不足見通しを受けて英国や南アで投資資金が流入した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、6月4日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万2566枚(前週2万7567枚)に縮小した。5月21日に2万7649枚と1年ぶりの高水準となったが、調整局面を迎えるなか、買い越しが縮小した。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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