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【特集】金は最高値更新後に調整局面も、大口投機家は強気姿勢を維持 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 は5月、イスラエルがガザ停戦案を拒否し、パレスチナ自治区ガザ南部のラファへの侵攻が懸念されるなか底堅く推移し、米連準備理事会(FRB)の利下げ期待を受けて上値を伸ばした。また、イラン大統領が搭乗したヘリコプターの墜落に加え、台湾の新総統就任で中国との関係悪化が懸念されると踏み上げの動きとなって急伸し、史上最高値2449ドル台をつけた。

 ただ、米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が公表され、高金利を長期間維持するとの見方が強まったことや、堅調な米経済指標を受けて米FRBの利下げ観測が後退すると、利食い売りが出て調整局面を迎えた。一方、米FRBの年1回の利下げ確率が上昇したが、利下げ見通しに変わりはなく、2325ドル台で下げ一服となった。

 イスラエル軍は、パレスチナ自治区ガザ南部にあるラファ検問所のパレスチナ側を掌握し、イスラム組織ハマスのせん滅を目指している。米政権がイスラエルによるラファ侵攻を阻止するため、兵器輸送を一時停止したが、イスラエルのネタニヤフ首相は米国の支援なしでも戦う姿勢を示した。国際司法裁判所(ICJ)がラファ攻撃の即時停止を命じたが、イスラエルは26日にハマスの拠点を攻撃。避難民が密集している地区で火災が発生し、少なくとも45人が死亡した。ネタニヤフ首相は民間人の犠牲者を出す意図はなかったとして調査を行うと表明しており、今後の戦闘の行方を確認したい。

 地政学的リスクが高まると、金の支援要因になるとみられる。イランのヘリコプター事故についてはテロの可能性は否定されたが、中国は台湾の頼政権への軍事圧力を強化し、台湾を包囲する軍事演習を行った。また、北朝鮮による軍事偵察衛星の打ち上げも伝えられており、

●米FRBの利下げ時期を探る

 4月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.4%上昇と前月の3.5%上昇から伸びが鈍化した。事前予想通りとなったが、インフレの伸び鈍化が示され、市場で利下げ期待が高まった。CMEのフェドウォッチでは、米FRBが9月以降、年2回の利下げを実施するとの見方が強まった。ただ、タカ派の米FOMC議事録や堅調な米経済指標を受けて米FRBの利下げ観測は後退した。米FOMC議事録で、ディスインフレには予想よりも時間がかかるとの見方が示され、一部の委員はインフレ再燃リスクが浮上すれば追加利上げを実施する可能性を示した。

 また、5月の米総合購買担当者景気指数(PMI)速報値は54.4と事前予想の51.1を上回り、2022年4月以来の高水準となり、米FRBの利下げは年1回の確率が高まった。当面は31日に4月の米個人消費支出(PCE)デフレータの発表があり、ここでのインフレに対する見方を確認したい。

●金ETFに投資資金流入も利下げ観測後退で利食い売り

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、5月28日に832.21トン(4月末832.19トン)となった。米FRBの利下げ期待を受けて838.54トンまで増加したが、利下げ観測が後退すると、利食い売りが出た。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは5月21日に22万9806枚(前週20万4496枚)に拡大し、2022年4月以来の高水準となった。5月7日に19万9567枚まで縮小したが、大口投機家の強気姿勢に変わりはなく、新規買い、買い戻しが入った。

 また、金の独自要因では中国の需要堅調が支援要因になった。中国人民銀行の金保有高は18ヵ月連続で増加し、4月末は2264トンとなった。また、中国金協会(CGA)によると、第1四半期の中国の金購入は前年同期比5.94%増の308.91トンとなった。金地金や金貨が34%を占め、同26.77%増の106.32トンとなった。安全資産に対する需要急増が背景にある。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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