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【特集】高島 Research Memo(4):2024年3月期は増収・営業減益。固定資産売却益計上で最終利益は3倍強に(1)

高島 <日足> 「株探」多機能チャートより

■業績動向

1. 2024年3月期の業績概要
高島<8007>の2024年3月期の連結業績は、売上高で前期比13.1%増の90,120百万円、営業利益で同0.9%減の1,748百万円、経常利益で同3.3%増の2,004百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で204.8%増の4,832百万円となった。電子・デバイスセグメントのみ市場減速の影響を受け苦戦を強いられたものの、建材セグメントと産業資材セグメントがそろって増収となったことが連結ベースのトップラインを押し上げた。これらのセグメントでは、既存事業の伸長に加えて、M&Aで連結子会社化した新エネルギー流通システム、信防エディックス、岩水開発も業績の拡大に寄与した。中期経営計画「サステナV(バリュー)」において同社は、戦略領域への成長投資を強化することによりトップラインの成長を志向していく方針を掲げており、この基本戦略がしっかりと業績の拡大に結実している格好だ。利益面に関しては、営業利益がわずかながら減益となったものの、親会社株主に帰属する当期純利益に関しては前期比204.8%増と急拡大した。最終利益の急伸は、2024年1月に固定資産を譲渡したことを受け、特別利益を計上したことなどが要因である。中期経営計画の下で同社は、資本生産性の向上を目的に投資対象の取捨選択を強化している。非中核領域の固定資産売却により捻出したキャッシュを、岩水開発の株式取得費用に充当した格好だ。また、固定資産売却益の計上に伴い期末配当を増配しており、株主還元を積極化している姿勢も見て取れる。なお、営業利益減益に関しては、岩水開発ののれん償却費用がかさんだことや、好業績のなかで従業員への還元を拡充したことなどを受け、販管費が膨らんだことなどが要因である。岩水開発ののれん償却費用が増大したことに関しては、PPAの実施により償却期間が短くなったことなどが要因である。営業減益の要因は、M&A実施に伴う会計処理などであり、各事業自体は総じて順調に推移したと弊社は見ている。

セグメント別の業績は以下のとおりである。

(1) 建材セグメント
売上高は前期比26.5%増の58,177百万円、セグメント利益は同104.0%増の866百万円となった。このうち、建設資材分野の売上高は、前期比36.5%増の30,887百万円に拡大した。中期経営計画「サステナV(バリュー)」で基盤拡大注力事業として定める物流施設や工場案件などの工事受注が好調に推移した。既存事業の伸長に加えて、2023年6月に岩水開発を連結子会社化したことも業績の拡大に寄与しており、戦略領域でのM&Aが業績拡大に貢献した。

「サステナV(バリュー)」において将来投資事業として定めている再生可能エネルギー資材分野の売上高は、同42.4%増の13,047百万円だった。エネルギーコストの増加やゼロカーボン社会実現に向けた需要の高まりなどを背景に、産業用・住宅用ともに事業環境が総じて好調に推移した。ニーズが旺盛ななか、前期に発生した半導体不足が解消したことも追い風となり、自家消費を目的とした機器導入が拡大した。また、2022年12月に買収した新エネルギー流通システムが通年で業績に寄与したこともプラス要因だった。

断熱資材分野の売上高は、同6.4%増の10,388百万円だった。資材販売に加え、工事案件の獲得が順調だったことなどが寄与した。住宅資材分野は建築コスト上昇による戸建住宅着工減など市場減速の影響を受け、売上高は同17.2%減の3,686百万円だった。

利益面に関しては、建設資材、再生可能エネルギー資材、断熱資材の各分野がしっかりとトップラインを伸ばすなかで利益を積み上げ、前期比104.0%と売上増加率を大きく上回る伸びを見せた。

(2) 産業資材セグメント
売上高は前期比6.1%増の17,174百万円、セグメント利益は同118.7%増の399百万円となった。このうち、樹脂関連資材分野の売上高は同17.2%増の9,150百万円に拡大した。半導体不足の影響が解消し、顧客である自動車業界の生産活動が回復するなか、自動車部材用の物流資材の受注が伸長した。また、子会社であるハイランドが扱う建築用加工資材の受注も好調だった。中期経営計画で同社がターゲット領域としている医療関連分野でも成形加工品の受注が順調に拡大した。一方で、繊維関連資材の売上高は、同4.2%減の8,023百万円だった。産業用繊維資材や防衛省向け縫製加工品などは順調に推移したものの、アパレル関連が苦戦を強いられた。顧客であるアパレル関連企業の需要が円安により低迷したことなどが響いた。

利益面に関しては、樹脂関連資材がしっかりとトップラインを伸ばしたことによる増収効果に加えて、2022年12月に買収した信防エディックスが通年で業績寄与したことも増益要因となった。加えて、工場稼働率が改善し、生産性が向上したことも利益の急伸に寄与した。

(3) 電子・デバイスセグメント
売上高は前期比14.6%減の14,795百万円、セグメント利益は同61.2%減の400百万円となった。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)における巣ごもり需要などに支えられ前期まで好調だった白物家電や映像機器などの民生用電子機器関連市場が、コロナ禍の収束における消費動向の変化により世界的に減速したことなどが響いた。デバイスビジネス、アセンブリビジネスの売上高は、それぞれ前期比23.7%減の6,134百万円、同6.7%減の8,641百万円に落ち込んだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

《HN》

 提供:フィスコ

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