【市況】新興市場見通し:グロース市場250指数は年初来安値圏で推移、きっかけ待ちの厳しい地合い続く
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
■引き続き新興市場は物色の対象外、直近IPOも値を崩す
今週の新興市場はまちまち。同時期の騰落率は、日経平均が+1.36%だったのに対して、グロース市場指数は+0.24%、グロース市場250指数は-0.53%となった。4月10日発表の3月米消費者物価指数(CPI)上振れをきっかけにドル買いが進み、為替は1ドル=153円台まで円安ドル高が進行。プライム市場の輸出関連銘柄など円安メリット銘柄が買われた一方、新興市場は物色の対象外となり、東証グロース市場Core指数構成銘柄などの主力株はまちまち。直近新規株式公開(IPO)も初値をつけた後は値を崩すケースが多く、個人投資家のマインドは低迷し売買代金も減少した。
個別銘柄では、「先端AIデータイノベーション研究所(通称:AIDI)」を設立したと発表したデータセクション<3905>が急騰したほか、中国ハイアールのグループ会社と業務提携し、共同出資による合弁会社を設立すると発表したプラッツ<7813>も大幅高。また、好業績が材料視されてエヌ・ピー・シー<6255>、クリーマ<4017>、FFRIセキュリティ<3692>も買われた。このほか、QPS研究所<5595>は、内閣府から「令和6年度小型SAR衛星コンステレーションの利用拡大に向けた実証(その1)」を落札したと発表し上昇。一方、ジャパニアス<9558>、シリコンスタジオ<3907>は決算内容が嫌気されて売り優勢となった。また、コナカ<7494>との株式交換による経営統合で最終合意したサマンサタバサジャパンリミテッド<7829>は交換比率が1対0.155となったことで急落した。
なお、8日に上場したイタミアート<168A>の初値は公開価格を25.0%上回る2000円、11日上場のハンモック<173A>の初値は公開価格を4.9%上回る2160円となった。ともに初値形成後は売りに押され、初値及び公開価格を割り込んだ。
■引き続きさえない展開か、IPOは1社
来週の新興市場は、引き続きさえない展開となりそうだ。プライム市場のなかで、業種別の循環物色が継続していることから、投資資金がグロース市場に流入するのは先となろう。グロース市場250指数は5日につけた取引時間の年初来安値681.52から反発しかけたが、週末にかけて陰線を残し、年初来安値圏で推移している。グロース市場250指数を手掛ける投資家はさほどいないと推測するが、新興市場のベンチマークともいえる指数の年初来安値圏推移は、投資家のマインドを冷やすには十分な効果がある。
日米首脳会談では、事前報道通り「アルテミス計画」の話が出たが、ispace<9348>など宇宙関連銘柄はまちまちで動意に欠ける展開となった。主力銘柄の決算発表が5月中旬に集中していることもあり、新興市場は見直すきっかけが見当たらない状況と言えよう。柱となる銘柄不在のため、来週の新興市場は引き続き安値圏でのもみ合いとなりそうだ。
なお、16日にWill Smart<175A>がグロース市場に上場する。モビリティ業界を中心とした事業課題解決に対する企画・支援などを手掛けており、初値はそれなりに人気化する可能性がある。一方、直近IPOの多くが初値形成後、値を崩しているのでセカンダリー投資には注意が必要だ。
《FA》
提供:フィスコ