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【特集】金は内外で高値波乱、米利下げ期待で踏み上げ後に急落 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 は米連邦準備理事会(FRB)の利下げ期待を受けて堅調に推移すると、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘再開も支援要因となって12月4日に急伸し、内外で最高値を更新した。現物相場は2139.05ドル、先物(JPX金先限)は1万0028円、現物(店頭小売価格、税込)は1万0928円と史上最高値をつけた。

 10月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.2%上昇と前月の3.7%から伸びが鈍化し、事前予想の3.3%も下回った。10月の米雇用統計でも非農業部門雇用者数が前月比15万人増加と事前予想の18万人増加を下回り、失業率は3.9%と前月の3.8%から小幅上昇した。インフレの伸び鈍化と労働市場の減速を受けてFRBの利上げ停止見通しが強まると、ウォラーFRB理事やパウエルFRB議長の発言を受けて利下げ期待が高まった。同理事はインフレ率が低下し続ければ、数ヵ月先の利下げの可能性を示唆し、同議長は均衡が取れていると述べた。

 議長の発言後にCMEのフェドウォッチでは米連邦公開市場委員会(FOMC)の利下げ時期が来年5月から3月に早まった。4日時点で3月の利下げ確率は51.9%(前月25.5%)となった。米金融当局者のタカ派の見方も残っているが、今後発表される経済指標で景気減速が示されると、利下げ期待が高まり、金の支援要因になるとみられる。

 イスラエルとイスラム組織ハマスは人質解放や人道支援のため戦闘停止で合意し、11月24日から実施された。当初4日間だった停止期間は延長することで合意したが、ハマスのメンバー2人が30日にエルサレムで発砲し、死傷者が出ると、12月1日に戦闘が再開された。イスラエルのネタニヤフ首相はガザ南部への地上作戦を強化する姿勢を示し、空爆を実施した。一方、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が紅海でイスラエルの船舶2隻を攻撃したと発表。これに対し米海軍の駆逐艦カーニーが支援し、ドローン(無人機)3機を撃墜した。

 週明けに金が買い戻されると、ストップロスの買いを巻き込んで急騰したが、買い過熱感も意識され利食い売りが出て急落した。現物相場は4日終値で2028.78ドルとなった。

●国内金は円相場の行方も焦点

 国内金はこれまで日銀の金融緩和継続による円安が支援要因となって最高値を更新したが、今回は現物相場主導の値動きとなった。円相場は11月13日に1ドル=151.90円と昨年10月以来の円安水準となったのち、円高に転じた。米FRBの利上げ停止見通しから利下げ期待に転じたことでドル売り圧力が強まったことが背景にある。先物に円売りポジションが積み上がっており、ドル売り圧力が強まると、円は買い戻し主導で上昇しやすくなる。

 ただ、日銀の金融緩和継続の見通しに変わりはない。植田日銀総裁は「賃金上昇を伴う持続的な物価上昇に確信が持てた段階になればマイナス金利解除などを検討する」と発言しているため、金融緩和については来年の春闘が当面の焦点となる。4日に開催された日銀幹部と経済学者、市場関係者らによる討論会の初会合では、大規模金融緩和が「デフレではない状況をつくり出した」と評価され、消費者物価を1%程度押し上げる効果があったと分析した。

 日銀は来年5月ごろに2回目の討論会を開く見通しである。市場では「出口戦略」を見極める上で注目されている。

●金ETFは利上げ停止見通しで投資資金が流入

 世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、12月4日に881.12トン(10月末859.49トン)となった。米FRBの利上げ停止見通しを受けて投資資金が流入した。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは11月28日に20万0084枚(前週17万1705枚)に拡大し、昨年4月以来の高水準となった。10月10日に7万1433枚まで縮小したのち、中東情勢に対する懸念や米FRBの利上げ停止見通しを受けて新規買い、買い戻しが入った。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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