【市況】S&P500 月例レポート ― 土壇場で調整局面入りの10%下落を回避 (3) ―
●雇用関係
○ADP全米雇用統計によると、9月の民間部門雇用者数は市場予想の15万人増を大幅に下回る8万9000人増となりました。このうちの8万1000人がサービス関係と大半を占めています。また、8月分は当初発表の17万7000人増から18万人増と、小幅に上方修正されました。
○ADPがまとめた民間部門の雇用者数の伸びが大幅に減少した(市場予想の15万人増に対して、8万9000人増にとどまる)のに対して、9月の雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比3万36000人増と予想を大幅に上回りました。市場予想は16万人増でした。8月分も当初発表の18万7000人増(当初予想は17万人増)から22万7000人増に上方修正されました(政府部門の雇用増が主な理由)。
⇒9月の失業率は3.7%に低下すると予想されていましたが、8月から変わらずの3.8%となりました(7月は3.5%、なお2020年2月も3.5%だったが、同年5月は13.3%となった)。
⇒労働参加率は予想通り前月比横ばいの62.8%でした。
⇒週平均労働時間も予想通り横ばいの34.4時間となりました。
⇒平均時給は前月比0.2%増となりました(8月の33.82ドルから9月は33.88ドル)。予想では8月と同水準の0.3%増が見込まれていました(7月は0.4%増)。前年同月比では8月の4.3%増から4.2%増に低下しました(7月は4.4%増)。
○8月のJOLTS(求人労働移動調査)によると、求人件数が市場予想の875万件を上回る961万件となりました。また、7月の速報値の882万7000件は892万件に小幅に上方修正されました。
○失業保険継続受給件数(季節調整済み)は、前月の165万8000件から173万9000件に増加しました。
⇒2023年10月5日発表の週間新規失業保険申請件数:20万7000件(当初の発表通り)
⇒2023年10月12日発表の週間新規失業保険申請件数:20万9000件
⇒2023年10月19日発表の週間新規失業保険申請件数:19万8000件
⇒2023年10月26日発表の週間新規失業保険申請件数:21万件
●レイオフ(および関連事項):
○全米自動車労働組合(UAW)は、米国の大手自動車メーカー3社(フォード・モーター<F>、ゼネラル・モーターズ<GM>、ステランティス<STLA>)に対するストライキを継続し、期間を延長してさらに多くの工場を閉鎖しました。
⇒これに関連して、ゼネラル・モーターズはカナダの労働組合との協約の合意を受け入れました。
⇒UAWはフォード・モーター、次にステランティス、最後にゼネラル・モーターズと暫定合意に達しました。報道によると、合意の結果、3社すべてにおいて、賃金が4年間で25%引き上げられることになります。
○米医療保険ネットワーク大手カイザーパーマネンテの7万5000人の医療従事者が数日間のストライキを行いました。労組協議の合意が得られない場合は、11月に2回目のストライキに踏み切ると労働組合は警告しています。
○モバイルネットワーク機器メーカー大手ノキア<NOK>は、コスト削減プログラムの一環として1万4000人(全従業員の約16%)を削減すると発表しました。
●企業業績
○現時点で、時価総額の64.4%に相当する289銘柄が2023年第3四半期の決算発表を終えました。そのうちの224銘柄(77.5%)で営業利益が予想を上回り、287銘柄中176銘柄(61.3%)で売上高が予想を上回りました。
⇒2023年第3四半期の1株当たり営業利益は、前期比1.1%増、前年同期比10.1%増と予想されます。売上高は前期(過去最高を記録した2023年第2四半期)比1.6%増、前年同期比5.2%増が見込まれ、過去最高を更新する見通しです。
⇒2023年第3四半期の営業利益率は、第2四半期の11.87%から低下して11.81%になると予想されます(1993年以降の平均は8.76%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。
⇒2023年第3四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は13.7%となっています。この割合は、2023年第2四半期は16.3%、2022年第3四半期は21.2%でした。
○2023年通年の利益は前年比10.9%増となる見通しで、この予想に基づく2023年の予想株価収益率(PER)は19.2倍となっています。
○2024年の利益は同11.9%増が見込まれており、2024年予想PERは17.2倍となっています。
●個別銘柄
○シリアルメーカーのケロッグは、シリアルとスナックを世界的に展開するケラノバ<K>と、北米のシリアル事業に注力するWKケロッグ<KLG>の2社に事業を分割し、いずれも上場企業としました。
○米国内国歳入庁(IRS)はソフトウエア企業のマイクロソフト<MSFT>に対し、同社の2004年から2013年までの「移転価格」(タックスヘイブンへの利益移転)に関連する追徴課税が289億ドルとその利子の合計額になることを通知しました。
○ドラッグストアとして米国第3位になったこともある薬局チェーン、ライト・エイド(RAD)が破産を申請しました。
○iPhoneメーカーのアップル<AAPL>は米国規制上の「修理する権利(デバイスを修理して使い続ける権利)」法案を支持すると発表しました。同法案は、消費者が部品やツールを入手できるようにすることで、多くのデバイスを修理する際の煩雑さを緩和するとしています。同法案は、ホテル、航空会社、レストランなどの「ジャンク」手数料(事前に知らされていない追加料金)に関する規制も含んでいます。
○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは10月の最初の取引日に、医療機器を手掛けるダナハー<DHR>から分離独立した環境応用ソリューション企業のベラルト<VLTO>をS&P500指数に採用し、IT企業のDXCテクノロジー<DXC>を同指数から除外してS&P小型株600指数に追加しました。その後、スポーツウエアメーカーのルルレモン・アスレティカ<LULU>とS&P中型株600指数構成銘柄の電気ソリューション企業のハベル<HUBB>をS&P500指数に採用し、マイクロソフト<MSFT>に買収されたゲームソフト会社アクティビジョン・ブリザードと、ヘルスケア企業オルガノン<OGN>をS&P500指数から除外し、オルガノンをS&P小型株600指数に追加しました。
※「土壇場で調整局面入りの10%下落を回避 (4)」へ続く
株探ニュース