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【市況】S&P500 月例レポート ― 土壇場で調整局面入りの10%下落を回避 (1) ―


S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●THE S&P 500 MARKET:2023年10月
個人的見解:10月も不快な展開となり、市場は下落

 S&P500指数 は7月まで5ヵ月連続で上昇(累計で15.59%上昇)していましたが、8月(1.77%下落)に始まった下落トレンドが9月(4.87%下落)も続き、10月はさらに2.20%下落しました。過去3ヵ月では一時は10.28%下落と、調整モードに入りましたが、最後の2営業日で辛うじて持ち直し、両営業日に0.65%と1.20%上昇して、最終的に3ヵ月で8.61%下落と、1桁台の下落率で月末を迎えました。年初来では9.23%上昇と、依然としてプラスを維持していますが、終値ベースでの年初来最高値(2023年7月31日の4588.96、年初来19.52%上昇)からは大幅に下落しています。ただし、直近の安値(2022年10月12日)からは17.25%高の水準です。

 市場が下落した理由を簡単に言えば、買いよりも売りが多かったからですが、ではその理由は何かというと、主な理由の1つは企業業績にあると思われます。発表された利益は77.5%の企業で予想を上回り(過去平均は3分の2)、順調と言えますが、素晴らしいというほどの内容ではありません。売上高も予想を上回っており、四半期売上高は3兆9350億ドルで過去最高を更新する可能性があります(利益は4650億ドルとなる見通し)。しかし、元のガイダンスは期待するほど強くはありませんでした。

 マネーマネジャーは、2023年通年の予想利益に対する今後のリスク・リターンを評価し、一部利益確定に動いた模様です。当然ながら、買おうとしているところに売り手が現れたら、買い手は価格が下落するのを待って様子を見るはずです。そこで問題は、買い手がいつ市場に戻ってくるかです。標準的な答えは、売り手が売りを完了した時やポジティブな兆候が見られた時です。

 ポジティブな兆候とは、利上げの終了(そして利下げ開始のタイミングが「示唆」される)、政府債務の改善(神頼みをしてもダメでしょう)、あるいは景気刺激策、クレジットカード支出、政府支出(もっと神がかり的な介入が必要です)などによって膨らまされていない経済などです。というのも、支払期限が来るまで、消費者も政府も(企業もある程度は)支出し続け、雇用(と賃金の支払い)が続き、借り入れや負債による成長は続く一方だからです。つまり、恐れるべきは市場の調整ではなく、支払期限なのです。

 「マグニフィセント・セブン」銘柄(アップル<AAPL>、マイクロソフト<MSFT>、アルファベット<GOOGL>、メタ・プラットフォームズ<META>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、テスラ<TSLA>、エヌビディア<NVDA>)を責めてはいけません。これら7社(8銘柄)がなければ、S&P500指数の年初来トータルリターンはプラス10.69%ではなくプラス0.03%になっていたはずです(辛うじてプラスを維持していますが)。

 7社(8銘柄)の株価はいずれも年初来で力強く上昇していますが、2022年は酷い打撃を受けました。2022年のS&P500指数のトータルリターンはマイナス18.11%、7社を除くとマイナス6.81%でした。この期間全体でみると、2021年末と比較して株価が上昇しているのは7社のうちわずか2社です(マイクロソフトは0.5%上昇、エヌビディアは38.7%上昇。テスラは2020年12月にS&P500指数に採用され、当時の株価231.67ドルに対し、10月末の終値は200.84ドルです)。

 つまり、マグニフィセント・セブン銘柄の保有者(または最近まで保有していた人)とバーで出会ったら、いつ買ったか聞いてみると面白いかもしれません。最も盛り上がるのは、2022年に買ったという回答でしょう。そんな人がいたら、さらに踏み込んで、利益確定してS&P500指数の他の493銘柄に資金を振り向けたかどうか聞いてみてはいかがでしょうか。

●インデックスの動き

 ○S&P500指数は2.20%下落して4193.80で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス2.10%)。9月は4288.05で終え、4.87%の下落(同マイナス4.77%)、8月は4507.66で終え、1.77%の下落(同マイナス1.59%)でした。過去3ヵ月では8.61%の下落(同マイナス8.25%)、年初来では9.23%の上昇(同プラス10.69%)、過去1年では8.31%の上昇(同プラス10.14%)でした。

 ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は1.36%下落して(同マイナス1.26%)3万3052.87ドルで月を終えました。S&P500指数のマイナス2.20%を上回りましたが、年初来では、S&P500指数のプラス9.23%に対してマイナス0.28%(同プラス1.44%)と、引き続きS&P500指数を大きく下回っています。このかい離は、ウェイト付け(時価総額に対して単純株価)によるものですが、歴史的に見ると追随しています。

  ⇒S&P500指数の時価総額は10月に8030億ドル減少(9月は1兆7210億ドル減少)、年初来では3兆20億ドル増加し、35兆1350億ドルとなりました。

 ○9月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は、9月の0.88%から1.28%に上昇、年初来では1.09%となりました。2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした。

 ○10月の出来高は、9月に前月比3%減少した後、2%減少し(営業日数調整後)、前年同月比では20%の減少でした。2023年10月までの過去1年では前年比10%増加しました。2022年は同6%の増加でした。

 ○10月は1%以上変動した日数は、22営業日中8日(上昇が3日、下落が5日)でした。9月は20営業日中3日(上昇が0日、下落が3日)でした。7月は20営業日中に前日比で1%以上変動した日はありませんでした。年初来では、1%以上変動した日数は209営業日中57日(上昇が30日、下落が27日)、2%以上変動した日数は2日(上昇が1日、下落が1日)でした。10月は22営業日中17日で日中の変動率が1%以上となり、変動率が2%以上の日が1日ありました。9月は20営業日中8日で日中の変動率が1%以上となり、変動率が2%以上の日はありませんでした。年初来では1%以上の変動が105日、2%以上の変動が13日、変動率が3%以上の日はありませんでした。(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。

 過去の実績を見ると、10月は57.9%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.25%、下落した月の平均下落率は4.67%、全体の平均騰落率は0.54%の上昇となっています。2023年10月のS&P500指数は2.20%の下落でした。

 11月は61.1%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.02%、下落した月の平均下落率は4.16%、全体の平均騰落率は0.88%の上昇となっています。

 今後の米連邦公開市場委員会FOMCのスケジュールは、2023年は10月31日-11月1日、12月12日-13日、2024年は1月30日-2月1日、3月19日-20日、4月30日-5月1日、6月11日-12日、7月30日-31日、9月17日-18日、11月6日-7日、12月17日-18日となっています。

※「土壇場で調整局面入りの10%下落を回避 (2)」へ続く

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