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【特集】アンジェス Research Memo(7):早老症治療薬「ゾキンヴィ」は2024年早々にも承認取得の可能性

アンジェス <日足> 「株探」多機能チャートより

■主要開発パイプラインの動向

3. ゾキンヴィ
アンジェス<4563>は2022年5月にアイガーと、希少遺伝性疾患で早老症とも呼ばれるHGPS及びPLを適応症とした治療薬「ゾキンヴィ」の国内独占販売契約を締結し、2023年3月にオーファン・ドラッグ指定※を受け、同年5月には製造販売承認申請を行った(米国での治験データを援用)。同社は、希少遺伝性疾患であるムコ多糖症VI型治療薬「ナグラザイム(R)」の独占販売契約を米BioMarin Pharmaceutical Inc.と2006年に締結し、販売してきた実績がある(契約解消に伴い2019年12月期第2四半期で販売終了)。当時は承認申請から約7ヶ月で承認を取得したことから、「ゾキンヴィ」も2024年の早い段階で承認取得するものと思われる。順調に進めば、2024年春頃に薬価収載され、販売が開始されるものと予想される。なお、契約一時金及び開発進捗に応じたマイルストーンとして最大150万米ドルをアイガーに支払う契約となっている。

※オーファン・ドラッグは希少疾病用医薬品のことで、指定基準としては患者数が5万人未満と少なく、治療法が未だ確立されておらず代替する医薬品がないこと、またはすでにある治療薬に対して非常に高い有効性または安全性が期待される医薬品であることなどが挙げられる。オーファン・ドラッグ指定を受けると、研究開発費用の助成金が交付されるほか、優先審査を受けることが可能となる。


HGPSはLMNA遺伝子の点突然変異により、ファルネシル化※された異常タンパク質であるプロジェリンが生成されることによって発症する。また、PLはLMNAやZMPSTE24遺伝子の変異によりプロジェリンとは異なるファルネシル化タンパク質を生成し老化を促進する。「ゾキンヴィ」はHGPSやプロセシング不全性PLの小児及び若年成人において、核膜と強固な結合を形成するファルネシル化した欠陥タンパク質(細胞の不安定化と早期老化を惹起)の蓄積を阻害する作用を持つ。臨床試験の結果ではHGPS患者の死亡率を60%減少、平均生存期間を2.5年延長できたとしている。また、安全性についても多くのPL患者が10年以上にわたって「ゾキンヴィ」治療を継続しており、副作用も嘔吐や下痢、悪心等その大半が軽度または中等度のものとなっている。2020年11月に米国、2022年7月に欧州で相次いで販売承認されたことから、国内でも承認される可能性は高い。

※タンパク質に行われる修飾の一種。ファルネシル化により、タンパク質の末端には疎水性のプレニル基が結合する。末端が疎水性になったタンパク質は、その疎水性の部分を細胞膜内に挿入するため、タンパク質は細胞膜(細胞の内側)につなぎ留められる。つまり、ファルネシル化されたタンパク質は、細胞の内側の細胞膜上に存在するようになる。


売上規模に関しては薬価や投与患者数次第(患者数は国内で10人未満)となるが、米国での販売価格(年間1億円強)を参考にすれば「ナグラザイム(R)」と同等かやや上回る規模になると見られる(「ナグラザイム(R)」のピーク時売上高は2018年12月期382百万円)。また、将来的には「ゾキンヴィ」の作用機序で治療が期待できる遺伝性疾患の研究についても進める意向である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

《SO》

 提供:フィスコ

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