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【市況】ESG最前線レポート ─「"バブル"に投資するということ」

株式会社グッドバンカー リサーチチーム 倉橋 麻生

第24回 「“バブル”に投資するということ」

●バブルの世界――チューリップからウォーターまで

 投資の世界でバブルというと、オランダのチューリップバブルが有名です。これは、17世紀のオランダで起こった経済事件で、オスマン帝国から輸入されたチューリップの球根が人々の人気を集めて価格がつり上がり、その後、大暴落して社会が経済的混乱に陥った現象を指します。

 日本においても、1990年代前半にバブルが崩壊しましたが、足もとではもう一つの“バブル”が注目を集め始めています。それが、ウォーター(水)のバブル「ウルトラファインバブル」です。これは、直径が1000分の1ミリ以下の微泡のことです。「水の技術として最初のイノベーション」とも言われ、1990年代以降、この分野に関する基礎研究や多くの応用事例が報告されており、日本がファインバブル技術の先進国となる礎を築きました。

●ファインバブルの効果

 すでに同技術は食品や化粧品、薬品、医療、半導体や植物育成など幅広い分野で活用されています。ウルトラファインバブルの農業分野での可能性に魅かれて日本企業に入社したオランダの園芸、温室栽培専門家も出るほど世界的に関心が高まっています。

 「この微泡は泡がはじける衝撃によってバクテリアの破壊を促進、よりエコでかつ効率的な清掃や殺菌が可能になる。栽培の場合は、水の中にウルトラファインバブルを用いると微生物の活動がより早くなり、土中での根の成長が促進され、栄養素の吸収が早くなる。さらに、この水は通常の水に比べ溶解した酸素の濃度がより高い」――そう紹介したのは、アルゼンチンの「ラ・ナシオン」紙です。同紙は2016年に日本のファインバブル技術の先進性について紹介しており、弊社でも注目していました。

 ある調味料メーカーは滑らかな味を出し、また賞味期限を長くするためにこのバブルをマヨネーズ製品の一部に使用しているほか、海産物を扱う会社では魚介の変色を遅らせ、新鮮度を保つために利用しているそうです。また、このバブルを使って清掃をすると、洗剤を使用せず節水することができ、臭いも抑えられたとのことです。洗濯機にも利用されており、エネルギーをかけずに洗浄力を高めることができます。2022年には、業界初となるウルトラファインバブル給湯器が発売されました。

●ESGアナリストの視点

 ESGアナリストは、企業のESGへの取り組みがいかに競争力に結びつき、企業価値の向上と、株価の中長期的な上昇につながるかを、絶えず考えています。そのため、業界動向や技術開発のトレンド、企業の情報開示姿勢の変化など、数字に表れないファクターが、実際の企業行動のファクトに、どのように表れるかを注視しています。特に技術開発と商品化には時間がかかるため、技術のトレンドを長期的に見守っています。

 ファインバブル製品の市場規模は、10年前の調査では2023年に国内5000億円、全世界6兆円を超える規模になると予測されていましたが(総合プランニング調べ、2014年4月)、現在の市場規模はこの数字をはるかに超えるものと想定されています(※)。今後も長期的な視点で、日本のウルトラファインバブルのバブルがはじけないよう、市場のサステナビリティに注目し、投資していくことが重要と言えます。

(※)一般社団法人ファインバブル産業会(https://fbia.or.jp/)

情報提供:株式会社グッドバンカー

(2023年9月22日 記/次回は10月28日配信予定)

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