【市況】【植木靖男の相場展望】 ─短期で切り返せるか勝負どころ
株式評論家 植木靖男
「短期で切り返せるか勝負どころ」
●まさに一寸先は闇の株式市場
東京株式市場は激変の渦中にある。相場は時に予想とは真逆の動きをみせることがある。いまがその好例だ。
8月第3週(14日~18日)に、日経平均株価は実に前週比で1022円も急落した。米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げへの警戒感に加え、中国景気の減速懸念なども重なり、リスク回避の姿勢が強まったためだ。
だが、翌週はさすがに自律反発から戻りを試す流れに入った。米半導体大手エヌビディア<NVDA>の好決算への期待もあって、テック株の反発にも勢いがついた。
21日から23日まで3連騰を演じて迎えた24日。ここで高ければ、売り方は相当厳しい状況に追い込まれる一方、買い方は当分株価上昇は揺るがないと自信を深める局面だった。両者は激しい攻防戦を演じ、勝負の帰趨が決したのは午後1時半頃だ。ソフトバンクグループ <9984> [東証P]、東京エレクトロン <8035> [東証P]、レーザーテック <6920> [東証P]などテック株の主力どころが一斉に上向き始めたのだ。この日はこうして買い方の勝利で引けた。
しかし、相場は分からないものだ。多くの投資家は米国市場でのテック株の反騰を予想した。ところが、エヌビディアは想定以上の好決算だったにもかかわらず、テック株は総じて安くなった。投資家のショックは大きかった。ジャクソンホール会議で行われるパウエルFRB議長の講演も警戒されたとはいえ、翌日の東京市場は662円安と無惨にも暴落した。
では、今後の相場はどう動くのか。結論からいえば、2通りだ。短期間で切り返して上昇基調に戻るか、あるいは底値もみ合いに入り、時を待つのか、のいずれかだ。筆者は、この1週間の値動きからして、そこそこで切り返しに入ると予想している。はたして、どうか。
注目されている材料だが、やはりジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演だ。市場としてはタカ派、ハト派どちらの内容であっても、さして材料視されないとみている。昨年のような波乱はないのではないか。市場は議長の発言に耐性ができているように思われる。
さて、もう一つの懸念材料が中国景気の先行きだ。確かに同国の景気は不動産不況で落ち込んでいるが、株価的には昨年10月に香港市場は底入れしている。つまり、景気悪化をすでに織り込んでいるとみる。安川電機 <6506> [東証P]、ファナック <6954> [東証P]などの中国関連株はむしろこれから反発に向かう気配すら感じられる。
●バリュー株、中小型の好業績株に注目
では、物色対象だが、どうみればよいか。仮に全般相場が短期間で切り返しに向かうとすれば、テック株の再発出が可能だろう。その場合、主力値がさ株が上昇に転じよう。
逆に切り返しに時間がかかるとすれば、25日移動平均線が位置する3万2300円処まで届かずに、当面下値調べの展開を余儀なくされよう。こちらの展開であれば、次の反騰相場での主役探しが本格化しよう。
25日の上昇銘柄をみると、すでに海運株が一斉に高くなっている。同セクターは市況産業の代表格だ。また、重工業株の一角にも買いが入っているようだ。不動産株も総じて確り(しっかり)だ。いわゆるバリュー株の一角が高い。
だとすると、日本郵船 <9101> [東証P]、日本製鉄 <5401> [東証P]、三菱重工業 <7011> [東証P]などバリュー株の大物に加え、中小型の好業績株である霞ヶ関キャピタル <3498> [東証G]やBEENOS <3328> [東証P]、DDグループ <3073> [東証P]のほか、ソリトンシステムズ <3040> [東証P]などの押し目に注目したい。
また、テック株を狙ってみたいという投資家は、傘下の英半導体設計大手アームの米ナスダック上場申請で再起を図るソフトバンクグループに賭けてみるのも一法だ。
2023年8月25日 記
株探ニュース