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【特集】桂畑誠治氏【夏枯れかサマーラリーか、強弱観対立の株式市場】(2) <相場観特集>

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

―3万2000円台近辺で売り買い交錯、ここからの展望を読む―

 3連休明けとなった14日の東京株式市場は、朝方こそ買い優勢となる場面もあったが、その後は急速に値を崩し日経平均株価は3万2000円台近辺で軟調な値動きを強いられた。前週末の欧州株市場が全面安だったほか、米国株市場も金利上昇を嫌気してハイテク株中心に売られたことで、市場心理が冷やされる格好に。例年8月は夏枯れ相場となるケースも多いが、外国人買いを背景にサマーラリーを演じることは過去に何度もあった。今年はどうか。ベテラン市場関係者2人に今後の全体相場の見通しや物色の方向性を聞いた。

●「日米ともに金利上昇が警戒材料に」

桂畑誠治氏(第一生命経済研究所 主任エコノミスト)

 東京株式市場は足もと売りに押される展開となっているが、当面は日本株、米国株いずれも上値の重い動きとなる可能性がある。企業の決算発表は米国に続いて国内もきょうで大方が終了する形となるが、総じて好調だったと言ってよさそうだ。ただし、直近の経済指標がインフレを再び警戒させる内容で、日米ともに金利が上昇傾向にあることは株式市場にとってマイナス材料となる。

 前週末11日に発表された7月の米生産者物価指数(PPI)は事前コンセンサスを上振れたが、これを受け年内に米連邦準備制度理事会(FRB)によってもう1回の利上げが行われる可能性が以前よりは高まっている。一方、国内でも日銀が前回の決定会合で事実上のイールドカーブ・コントロール(YCC)の許容変動幅を広げたことに伴い、日銀の今後の金融政策に対する不透明感が拭えなくなった。市場との対話がうまくいっていない印象で、株式市場もやや気迷いムードを強いられている状況だ。

 今後は国内で電力料金が9月以降一段と上昇する可能性があるほか、ガソリン価格も原油市況高に加えて折からのドル高・円安で値上がりが懸念される局面にあり、日銀が更なる政策修正を余儀なくされる公算は小さくない。当然ながら、これは株式市場にとって向かい風となる。今月末には米国でPCEデフレーターの発表を控え、ここでコア指数の前年比伸び率が加速することも想定される。その場合、米国主導で日本でも金利上昇圧力が改めて意識されそうだ。こうした環境下で、日経平均はもう一段の下値模索があって不思議はない。向こう1ヵ月程度のタームで日経平均のレンジは3万1500円から3万3000円のレンジを予想している。

 こうしたなか、物色対象としては小売関連を中心にインバウンド周辺に引き続き目を向けておきたい。また、足もと株価を下落させている半導体関連のほか、自動車株など輸出セクターの銘柄も押し目買いを基本に対処して報われそうだ。


(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(かつらはた・せいじ)
第一生命経済研究所 経済調査部・主任エコノミスト。担当は、米国経済・金融市場・海外経済総括。1992年、日本総合研究所入社。95年、日本経済研究センターに出向。99年、丸三証券入社。日本、米国、欧州、新興国の経済・金融市場などの分析を担当。2001年から現職。この間、欧州、新興国経済などの担当を兼務。

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