【市況】国内株式市場見通し:神経質な展開か、米CPIと日米長期金利の動向に注目
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
■日米長期金利の上昇が警戒感誘う
今週の日経平均は566.48円安の32192.75円と反落。週の前半と後半でムードが一変した。週前半の日経平均は7月31日に412.99円高、8月1日に304.36円高と大きく上昇。米6月個人消費支出(PCE)コアデフレーターが鈍化したことでインフレ収束期待が高まった一方、前の週末の金融政策決定会合での日本銀行の政策修正は依然として金融緩和的であるとの解釈から為替の円安が進行していたことが追い風になった。しかし、週後半の2日、3日はそれぞれ768.89円安、548.41円安と大幅に下落。米財務省による中長期債の発行規模の拡大などを背景とした米長期金利の上昇に加え、国内の長期国債先物の下落も警戒感を誘い、利益確定売りが膨らんだ。ただ、週末は国内長期金利の上昇が一服したことが目先の安心感を誘ったほか、米雇用統計を控えた様子見ムードから、日経平均は一時32000円割れを見たが、小幅高で終えた。
■日銀の追加政策修正への思惑強まるか
来週の東京株式市場は神経質な展開か。国内では企業決算の発表がピークを迎える。個別株物色が活発化することで、相場の下支えに期待したい。ただ、日米長期金利の動向が気がかりだ。4日に発表された米7月雇用統計は非農業部門雇用者数が下振れたとはいえ、ほぼ市場予想並みだった。一方、失業率は予想に反して低下し、平均時給は前月比および前年同月比でともに低下の予想に反して前月と同じ伸びにとどまった。3日に約9カ月ぶりの高水準にまで上昇した米10年債利回りは、米雇用統計の発表後は出尽くし感からいったん低下で反応したが、依然として4%を超えている。こうしたなか、来週は米国で10日に7月消費者物価指数(CPI)、11日に7月卸売物価指数(PPI)が発表される。
米7月CPIは総合および食品・エネルギーを除いたコア指数ともに前月比+0.2%と前回6月分と同じ伸びが予想されている。一方、前年同月比では総合が+3.3%と6月(+3.0%)から加速する見込みで、コア指数は前年同月比+4.8%と6月分と同じ伸びが予想されている。CPI総合の前年同月比は2022年6月の+9.1%をピークにその後は毎月鈍化が続いていた。ある程度は織り込み済みとはいえ、CPIコア指数が米連邦準備制度理事会(FRB)の目標値である2%を大幅に上回ったままであるなか、CPI総合の伸びが1年ぶりに加速に転じるとなると、インフレ高止まりが想起される。既に4%を超えている米10年債利回りの一段の上昇にもつながりかねない。
また、米7月PPIは総合および食品・エネルギーを除いたコア指数ともに前月比+0.2%と前回6月分(+0.1%)から加速する見込み。前年同月比ではコア指数は+2.4%と6月分と同じ伸びになる予想だが、総合は+0.7%と6月(+0.1%)から加速する見込みだ。
3日には、サウジアラビアが原油の自主減産を1カ月延長する方針を発表したほか、減産を一段と長期化あるいは規模を拡大させる可能性もあるとし、原油市況の高騰を招いた。足元は日米の長期金利の上昇が株式市場の警戒感を高めているタイミングでもある。コモディティ価格の上昇や予想を上回る米雇用関連指標、米財務省の中長期債の発行規模の引き上げなどを背景に金利の先高観が高まっているなか、CPIとPPIの発表後の金利動向には注意したい。
日本国内でも、長期金利の動向が警戒材料だ。今週は長期国債先物の下落傾向が続き、国内の新発10年物国債利回りは大きく上昇した。3日の午後には日本銀行が臨時の国債買い入れを実施したにもかかわらず、長期金利が低下したのは一時的ですぐに低下分を埋める動きとなっていた。海外投機筋から日銀を試すような国債売りが入っていると思われる。こうした中、米物価指標が上振れて米長期金利が一段と上昇した場合には、国内の長期金利の上昇が再開する可能性があろう。
国内では8日に6月毎月勤労統計調査が発表される。現金給与総額は前年同月比+3.0%と前回(+2.5%)から加速する見込み。一方、賃金の伸びは依然として物価上昇率に追いつかず、実質賃金総額は同-0.9%と15カ月連続でマイナスが予想されている。ただ、実質賃金総額は前回(-1.2%)から減少率がさらに縮小する見込みで、プラス転換に向けた改善トレンドが続いている。これら指標の上振れは本来、脱デフレ体質という構造的な変化を示唆するもので長期的にはポジティブな材料だが、短期的には日銀の追加政策修正への思惑を強めるきっかけとなり得る。
なお、7月東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI)は前年同月比+4.0%と41年3カ月ぶりの高水準を記録し、+3.7%への鈍化を想定していた市場予想に反して6月(+3.8%)から加速した。多くの市場参加者が7月の金融政策決定会合以降、日銀の年内の追加政策修正はないと予想しているなか、仮に政策修正観測が高まる場合には、国内長期金利の上昇ペースが速まる可能性がある。米国と合わせて日本の長期金利の動向に注意を払いたい。
■毎月勤労統計調査、景気ウォッチャー調査、など
来週は7日に日銀金融政策決定会合の「主な意見」(7月27-28日開催分)、6月景気動向指数、8日に6月毎月勤労統計調査、6月家計調査、7月景気ウォッチャー調査、中国7月貿易収支、9日に7月工作機械受注、中国7月CPI、中国7月PPI、10日にオプションSQ、7月企業物価指数、米7月CPI、11日に米7月PPI、米8月ミシガン大学消費者信頼感指数、などが予定されている。
《FA》
提供:フィスコ