【特集】笹木和弘氏【再浮上の東京市場、中銀ウイークに思惑錯綜】(2) <相場観特集>
笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)
―日経平均3万2000円台後半へ、戻り相場に突入か―
24日の東京株式市場は、日経平均株価が3営業日ぶり反発に転じた。ダブルトップ形成から25日移動平均線を下回ったことで、大勢トレンドが下降転換した可能性も取り沙汰されたが、足もとではその25日線との下方カイ離解消に向け強調展開をみせている。このまま戻り足を続けるのか、それともアヤ戻しに終わるのか。今週は日米欧の中銀による金融政策決定会合が相次ぐが、この内容にもマーケットの関心が高い。業界第一線で活躍する市場関係者2人に今後の展望を聞いた。
●「夏場は膠着相場、秋口からは下値を探る展開も」
笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)
東京市場は、夏場は膠着状態が続くが、秋口以降にかけて下値を探る展開を見込んでいる。日経平均株価の3万2700円前後の水準は磁力が強い価格帯で、当面は上下に動きにくい状況を想定している。
今週の金融政策決定会合で、日銀はイールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)を維持するとの見方が強まっている。これはマーケットにとってはマイナスの要因ではないだろう。ただ、長期投資の海外投資家からみれば、日銀が賃金や物価上昇に対して自信を持てるほどの変化は日本経済にみられない、と受け止めることもできるだけに、日本株を一段と買い増す要因にはならないだろう。
足もとでは、日本には政治を除けばマイナス要因はあまりない。気になるのは、海外など外部要因だ。具体的には、第1には台湾の台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>が今期予想売上高の下方修正を発表し、半導体業界に対して過度な期待はできないとの認識が広まったこと。第2には、中国の不動産大手、恒大集団が大幅な赤字を計上するなど中国の不動産不況が警戒されること。第3には、米国のオフィスを中心とする商業用不動産の市況悪化が懸念されることだ。
こうしたなか、8月は夏枯れ相場も予想されるが、9月のメジャーSQの前後に向け相場は下値を試す展開もあり得るとみている。8月いっぱいまでの日経平均株価の予想レンジは、3万~3万3500円前後を想定している。
個別銘柄では、電気自動車(EV)用電池のセパレーターなどに絡むニッポン高度紙工業 <3891> [東証S]、トヨタ系で低PBRの愛三工業 <7283> [東証P]、物流の「2024年問題」にも絡み業容拡大が期待できるダイフク <6383> [東証P]、それに工事現場のブルーシートなどを手掛け国土強靱化や防災に絡む萩原工業 <7856> [東証P]などに注目している。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(ささき・かずひろ)
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家の傍ら投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・香港・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。
株探ニュース