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【市況】S&P500 月例レポート ― エヌビディアが1兆ドルクラブ・ビッグ5に (2) ―


●主なポイント

 ○株式市場は楽観的なムードに変化しました。上昇が上位銘柄に偏る状況は弱まり、セクターを問わず値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を大幅に上回りました。経済見通しが改善する中で消費活動はこれまで以上に活発化し(とはいえ、選別志向は一段と強まりました)、企業収益が悪化するとの予想にも疑問符が付けられました。FOMCは金利据え置きを決めたものの、一時的な措置で今後も追加利上げはあると考えられており、市場は0.25%の利上げがもう2回実施されると織り込んでいるようです。

  ⇒6月の市場は、5月が3セクター、4月が8セクターだったのに対し、11セクター全てが上昇しました。6月に騰落率が最高となったのは一般消費財で11.99%上昇しました(年初来では32.33%上昇、2021年末からは17.40%下落)。最低となったのは公益事業で上昇率は1.47%にとどまりました(年初来では7.16%下落、2021年末からは8.50%下落)。

 ○市場全体で見ると、S&P 500指数の時価総額は1090億ドル増加し(年初来では5030億ドル増)、34兆9530億ドル(2022年に時価総額は8兆2240億ドル減少)となりました。コロナ危機直前の2020年2月19日との比較では6兆9800億ドル増加しています。

 ○(503銘柄のうち)500 銘柄(時価総額で99.8%に相当)が2023年第1四半期決算の発表(暫定分を含む)を終え、そのうち383銘柄(76.6%)で営業利益が予想を上回り、499銘柄中 368銘柄(73.7%)で売上高が予想を上回りました。

  ⇒2023年第1四半期の暫定営業利益は前期比4.3%増、前年同期比6.4%増となりました。売上高は過去最高を記録した前期(2022年第4四半期)から2.2%の減少が見込まれています。消費者が買い控えの姿勢を示して一段と選別志向を強め、企業がコストの増加分を全て消費者に転嫁できていない状況にあります。

●利回り、金利、コモディティ

 ○米国10年国債利回りは5月末の3.64%から3.83%に上昇して月末を迎えました(2022年末は3.88%、2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末は1.92%、2018年末は 2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは5月末の3.85%から3.86%に上昇して取引を終えました(同3.97%、同1.91%、同1.65%、同2.30%、同3.02%、同3.05%)。

 ○英ポンドは5月末の1ポンド=1.2440ドルから1.2698ドルに上昇し(同1.2099ドル、同1.3525ドル、同1.3673ドル、同1.3253ドル、同1.2754ドル、同1.3498ドル)、ユーロは5月末の1ユーロ=1.0693ドルから1.0909ドルに上昇しました(同1.0703ドル、同1.1379ドル、同1.2182ドル、同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は5月末の1ドル=139.36円から144.33円に下落し(同132.21円、同115.08円、同103.24円、同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は5月末の1ドル=7.1118元から7.2535元に下落しました(同6.9683元、同6.3599元、同6.6994元、同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

 ○6月末の原油価格は3.6%上昇し、5月末の1バレル=68.04ドルから同70.47ドルとなりました(2022年末は同79.35ドル)。米国のガソリン価格(米国エネルギー省エネルギー情報局EIAによる全等級)は6月は横ばいでした(6月末は1ガロン=3.685ドル、5月末は同3.684ドル、2022年末は同3.203ドル、2021年末は同3.375ドル)。2020年末から原油価格は45.5%上昇し(2020年末は1バレル=48.42ドル)、ガソリン価格は58.2%上昇しました(2020年末は1ガロン=2.330ドル)。

  ⇒2023年5月時点のEIAの報告によると、ガソリン価格の内訳は、49%が原油(4月は51%、3月は50%、2月は53%、1月は55%)、14%が連邦税および州税(同14%、同15%、同15%、同15%)、15%が販売・マーケティング費(同12%、同11%、同13%、同10%)、そして21%が精製コストおよび利益(同23%、同24%、同20%、同20%)となっています。

 ○金価格は5月末の1トロイオンス=1981.50ドルから下落し1925.90ドルで6月の取引を終えました(2021年末は1829.80ドル、2020年末は1901.60ドル、2019年末は1520.00ドル、2018年末は1284.70ドル、2017年末は1305.00ドル)。

 ○VIX恐怖指数は5月末の17.94から13.59に下落して6月を終えました。月中の最高は17.59、最低は12.73でした(2022年末は21.67、2021年末は17.22、2020年末は22.75、2019年末は13.78、2018年末は16.12)。

  ⇒同指数の2022年の最高は38.89、最低は16.34でした。

  ⇒同指数の2021年の最高は37.51、最低は14.10でした。

  ⇒同指数の2020年の最高は85.47、最低は11.75でした。

●各国中央銀行の動き(および関連ニュース)

 ○オーストラリア準備銀行(中央銀行)は6月に政策金利を0.25%引き上げました(4.10%)。4月会合で金利を据え置いたため、利上げはないと予想されていました。中銀は追加利上げの可能性についても警告を発しました。

 ○カナダ中銀は3会合ぶりに政策金利を4.50%から4.75%(22年ぶりの高水準)に引き上げました。

 ○予想通り、FOMCは金利据え置きを決定しました。FOMCメンバーの金利予想を示すドットチャートでは、2023年末までに政策金利はあと2回(0.25%ずつ)引き上げられて 5.6%に達するとの見通しが示されました。18名中2名が据え置きを予想しました。また、4名は0.25%の追加利上げ1回を予想し、9名が同2回、2名が同3回、そして1名は追加利上げが4回以上になると予想しています。

 ○報道によると、米財務省がFRBに保有する政府預金口座(TGA)は残高の30%を回復しました(2023年6月14日時点)。財務省は新規国債の発行に際しては、銀行の準備預金からの資金流出を回避するために、リバースレポに預けられているキャッシュ(約2兆ドル)が振り替えられることを選好しているようです。

 ○欧州中央銀行(ECB)は0.25%の利上げを決定し、中銀預金金利は3.50%となりました。また、7月の政策理事会でも利上げを実施すること、そして9月もその可能性があることを示唆しました。

 ○ECBのラガルド総裁は月末にシントラで開催された年次フォーラムで行った講演の中で、利上げがまだ終わっていないことを示唆しました。

 ○日銀はマイナス金利政策を維持し(2016年から日銀の一部当座預金にマイナス0.1%の金利を課してきました)、低金利政策を今後も継続することを表明しました。

 ○中国人民銀行(中央銀行)は政策金利とされているローンプライムレートの1年物を(3.65%から)3.55%へ、5年物を(4.30%から)4.20%に引き下げました。

 ○イングランド銀行(BoE)は市場予想の0.25%に対し、政策金利を0.50%引き上げて5.00%としました(賛成7名、反対2名)。また、BoEは追加利上げが行われることにも言及しました。

 ○トルコ中央銀行は2021年の19%から2023年3月には8.5%まで政策金利を引き下げましたが、80%に達した物価上昇率を抑え込むために方針転換を決め、政策金利を15%に引き上げました。一部アナリストは20%への更に大幅な利上げを予想していました。

 ○FRBのパウエル議長は下院金融サービス委員会の公聴会で証言しました。議長はFOMCが今後も継続的な利上げを実施する可能性が高いと述べると同時に、小規模な銀行に関しては新たな資本要件引き上げの対象外となるだろうとの見解を示しました。

※「エヌビディアが1兆ドルクラブ・ビッグ5に (3)」へ続く

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