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【特集】株価倍騰シナリオ始動へ、業績変貌前夜の「超低PBR6銘柄」大選抜 <株探トップ特集>

東証の改善要請によってPBR1倍割れ企業に光が当たっている。そのなか、業績拡大トレンドに入った超低PBR株の株高修正余地は大きい。

―日本株割安論の原動力に再注目、PBR「0.X」からの脱出で株価も生まれ変わる―

 東京株式市場は驚くほど強い地合いが続いている。週末12日はその前日の米国株市場でNYダウが4日続落と下値模索の動きを続けたこともあり、日経平均株価も軟調な展開を強いられる可能性があった。しかし実際は、引き続き買い意欲が旺盛で売り物を吸収、日経平均は上値慕いの動きを継続し一時2万9400円台まで水準を切り上げた。この日はオプションSQ算出に絡み、朝方はやや不安定な値動きを示したものの下値では買いが厚いことに変わりなく、気がつけば3万円大台回復のシナリオも現実味を帯びてきた。

 国内企業の決算発表が一巡し、来週後半には“決算プレー”から解放され好業績銘柄を中心にテーマ買いの動きが再燃する公算が大きい。そうしたなか、株高に向けた最強の礎となっているのが低PBR株の水準訂正の動きだ。東証によるPBR1倍割れ企業に対する改善要請は投資家マインドにもかなりのインパクトを与えた。低PBR株は不人気株の象徴でもあったが、その不人気返上に向けた企業の取り組みを東証が強く誘導したことで、株高修正への思惑が激しく喚起される格好となった。そして、これは割安な日本株に着目し始めた海外マネーの動きと融合し、大きな潮流を形成しようとしている。ここはチャンスである。超低PBRに放置され、水準訂正余地の大きさが意識される銘柄を対象に、今期業績変化率の高い銘柄にスポットを当ててみたい。

●東証が要請した“株価意識の高い経営”

 現在、プライム・スタンダード・グロース3市場に上場する企業は合計で3800社あまりあるが、このうちPBR(連結優先ベース)が1倍を下回るのは1770社程度。約47%の銘柄が一株純資産を割り込む水準に株価が放置されている状況にある。また、グロース市場には成長重視でPBR1倍以上の銘柄が相対的に多い。グロースを除く、プライムとスタンダード合計では3300社弱の企業が上場しているが、そのうちPBR1倍割れは1740社前後に及び全体に占める割合は約53%と更に増加する。

 東証は「プライム市場とスタンダード市場に上場する全企業」を対象に株価意識の高い経営を行うように要請しているが、とりわけPBR1倍割れ企業にはその義務が強く求められる状況となっている。一株純資産以下の株価とは、言い換えれば株主から預かった資本を毀損(きそん)している状態を意味する。行っている事業の価値をゼロ以下に評価されては企業として立つ瀬がない。仮に実態面に自信があり、株価の方が正当な評価でないと強弁するならば、当該企業はそれを是正するようなアピールが必要となる。いずれにしても放置はできない。株価意識の高い経営というのはそういうことである。

●PBR0.5倍なら“原点復帰”で株価倍増

 “バフェット効果”がマーケット関係者の間で取り沙汰され、それに共鳴するように「日本株割安論」が大手を振っている。4月の記録的な外国人買いも、今の東京市場に吹く順風を裏付けるものだ。ただし、単なるモメンタム投資では限界も近づいている。企業のファンダメンタルズを見つめ直す局面は遅かれ早かれ訪れる。日経平均の動向と個別株の動きを同じ時間軸で捉えるのは相場の本質と異なるケースも多いが、成長株で勢いはあっても高値警戒感が常に潜在している地合いであることに違いはない。そこで、日本株割安論の根拠としてクローズアップされている「低PBR修正」の流れに乗るのが、投資家にとってもリスクが低く勝ちやすい選択肢となる。

 株価が一株純資産割れとなっている企業は、まずは純資産価値と同等のPBR1.0倍がゴールテープとして意識される。その際、PBR0.8倍であれば時価から25%の株価上方修正が必要となり、0.7倍台であれば修正高余地は43%に拡大する。仮に0.5倍であれば修正余地100%、つまり株価倍増である。机上の論理ではあるが、今期の業績が拡大局面に向かうのであれば、東証の低PBR改善要請にも応えやすくなり、この分かりやすい1.0倍ラインの目標から遠い企業ほど上値の伸びしろが大きい道理となる。

 PBRを高めるためには、経営改革に取り組み収益を伸ばすということが第一点。一株利益が牽引する形で株価が上昇すればPBRも上昇する。もう一つは自社株買いや配当など株主還元姿勢を強め、分母である純資産を小さくするのが有効な手段となる。いずれにしても投資する側にとっては魅力的なポイントとなる。

 今回のトップ特集では、会社解散価値の半値以下であるPBR0.5倍未満の銘柄のなかから、今期業績の変貌が期待される有望株を6銘柄選りすぐった。

●「PBR1倍」を目指すこの6銘柄に要注目

◎大豊工業 <6470> [東証P]

 大豊工業はトヨタ系の滑り軸受けダイカスト メーカーで、金型も手掛ける。バッテリー及びモーター、パワーコントロールユニットといった電動化製品にも傾注し、世界的なエコカーシフトの動きに対応。また、2035年までに国内工場のカーボンニュートラル達成に取り組むなど脱炭素戦略にも抜かりがない。燃料電池車「新型ミライ」向けに同社のアルミダイカスト製品が採用されるなど実績も申し分ないが、このほか燃料電池セパレーターを戦略商品として育成している。24年3月期業績は増収基調を継続する一方、製品値上げによる採算改善で大幅増益を見込んでおり、営業利益段階で前期比3.5倍の24億円を予想している。PBR0.3倍台と株価は解散価値のおよそ3分の1の水準に放置されており、訂正高への期待大。21年3月と6月に1160円台で2点天井を形成し、その後は下値模索局面にあった。今年4月下旬以降は急速に上値追い態勢にあるが、長期トレンドでは底入れ反転の初動といえる。

◎共英製鋼 <5440> [東証P]

 共英製鋼は日本製鉄系の電炉 大手で、棒鋼分野で競争力の高さを発揮し鉄筋コンクリート用棒鋼ではトップシェアを誇る。同社の特長は海外売上高が全体の過半を占めていることで、積極展開するベトナムと北米では収益改善の兆しが顕著となっている。また、2020年にカナダのアルタ・スチールを買収し、世界3極体制を確立し業容拡大に磨きをかけている。電炉を中核とした総合リサイクルシステムなど環境リサイクル事業でも優位性を発揮、既に同事業は30年以上の歴史を有し業界をリードしている。商品競争力の高さを武器に製品価格引き上げによる利益採算向上が見込める点は強み。23年3月期の営業68%増益に続き、24年3月期も同利益は前期比35%増の200億円予想と急拡大が続く見通しにある。株価は4月下旬に大陽線を示現した後ひと息入れているが、PER6倍台、PBR0.4倍台は割安感が際立つ。まずは20年1月以来となる2000円台復帰が第1目標となりそうだ。

◎エーアンドエーマテリアル <5391> [東証S]

 A&AMはスレートなどをはじめとする建材会社で、保温・断熱材などの工業製品にも展開。船舶や自動車関連製品も手掛ける。筆頭株主はセメントの国内トップメーカーである太平洋セメント <5233> [東証P]で、安定した収益基盤を持つ。高度な表面性能を有する不燃化粧ボードなど高付加価値商品群の貢献もあり、24年3月期業績は利益採算が急改善する見通し。営業利益は前期比28%増の19億円と大幅な伸びを予想している。目先株価はマドを開けて急騰、21年10月以来1年7ヵ月ぶりの4ケタ大台に乗せたが、依然としてPBRは0.5倍未満と評価不足が歴然だ。今期年間配当は前期実績比5円増配となる50円を計画し、配当利回りも4.8%前後と高水準。今後は低PBR是正に向け一段の株主還元強化に動く可能性もある。信用買い残が枯れた状態にあり、株式需給面でも上値は軽い。19年10月から20年1月にかけて大相場を形成し1700円の高値実績がある。

◎土屋ホールディングス <1840> [東証S]

 土屋HDは北海道を地盤とし、土屋ホーム、土屋ホームトピア、土屋ホーム不動産を傘下に置く持ち株会社。高断熱・高気密で優位性を持つ注文住宅のほかマンション建設にも取り組んでおり、ドミナント戦略を駆使した不動産事業などへの展開でも幅広く需要を捉えている。北海道は訪日外国人観光客に人気が高いほか、日の丸半導体会社のラピダスが千歳市に最先端半導体の量産を目指す工場を建設する計画にあるなど、今後人流の活発化が想定される。不動産価格の上昇も見込まれ、同社にとっても商機が高まることが予想される。足もとの業績は回復色が鮮明で、23年10月期は営業利益段階で前期比4.7倍の7億円予想と10年ぶりとなる利益水準を取り戻す見通しだ。株価が200円近辺と低位に位置することで買いやすさがあるほか、0.4倍台のPBRも考慮して株価の変貌余地は大きい。6円配継続で配当利回りは3%近くあるが、今後は増配も期待される。

◎タキヒヨー <9982> [東証S]

 タキヒヨーは名古屋を地盤に婦人服や服地を中心とする老舗の繊維商社。ファッション衣料などを全国展開するしまむら <8227> [東証P]向けを主力に卸売事業を手掛ける。業績はコロナ禍の影響もあって低迷が続いていたが、ここにきて利益率が改善し、底入れから急浮上が見込める局面となった。受注増勢基調のなか、経営合理化努力が実り営業損益は23年2月期に小幅ながら黒字転換を果たした。更に24年2月期は好採算品の取り扱いを増やすほか、製品価格引き上げ効果なども発現し、前期比4.3倍の4億円と高変化を予想している。自己資本比率は59%あり、これまで赤字決算でも配当を継続してきた。黒字化・有配継続となればPBR0.3倍台と極めて割安圏に放置されていることで株高修正余地が生じる。株価は4月14日に年初来高値1147円をつけた後に調整色を強め、75日移動平均線が位置する970円近辺まで売り込まれたが、その後は戻り足に転じている。

◎トリニティ工業 <6382> [東証S]

 トリニ工は塗装設備の大手で技術力が高く、設備設計からプラントまでワンストップで対応できる強みを持っている。トヨタグループ向けを主力とするが、自動車塗装設備や自動車部品のほかに住宅や航空機部品など幅広いテリトリーに対応し商機を捉えている。中期的にも脱炭素を中心とする技術革新や新製品開発などを推進中。業績は数年来苦戦を強いられていたが、24年3月期は急回復トレンドに転じる見通しで、売上高は前期比19%増の345億円、営業利益は同87%増の18億円を見込んでいる。PER8倍台でPBR0.4倍台は見直し余地が大きい。また、今期の年間配当は前期実績と並びの30円を計画するが、時価換算で配当利回りは4%弱と高く、今後は更なる還元強化の動きも期待できる。株価は4月下旬に急動意、連続大陽線を形成し700円台半ばまで水準を切り上げたが、目先筋の売りをこなし上昇第2波へ突入。昨年1月高値878円が当面の目標に。

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