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【特集】電力網増強7兆円計画が突破口、「送電インフラ」関連株の上昇波強まる <株探トップ特集>

広域機関が脱炭素社会の実現に向けた送電網整備の長期方針を公表した。ベースシナリオでは最大7兆円の投資が必要だとしており、関連株への注目度が高まっている。

―再生可能エネ主力電源化のカギ、整備急務で関連企業のビジネス機会拡大へ―

 全国の電力需給を調整する電力広域的運営推進機関(広域機関)は3月29日、広域系統の長期方針である「広域連系系統のマスタープラン」をとりまとめた。これは 脱炭素社会の実現に向けて 再生可能エネルギーの導入を拡大するため、全国で効率的に電力を融通しあうのに欠かせない送電網を増強する2050年までの整備計画となっている。ベースシナリオでは最大7兆円の投資が必要だとしており、送電インフラ関連株をマークしておきたい。

●広域機関が長期方針公表

 広域機関は15年4月に発足した電気事業法に基づく認可法人で、中立・公平な立場で電力の安定供給を維持し、供給システムをできる限り効率化するという役割がある。今回公表したマスタープランによると、50年に再生可能エネを電源構成全体の約50%まで高めた場合、太陽光発電や風力発電の多い北海道や東北と東京を結ぶ送電網の新設や、周波数が異なる東日本と西日本で電力を融通しあうための送電網の増強が必要で、およそ6兆円から7兆円の投資を見込んでいる。

 最も巨額の費用がかかるのは北海道~東北~東京ルートの新設で、日本海側と太平洋側の2ルートで計約2兆5000億円から3兆4000億円に上ると試算。各エリア内では北海道で約1兆1000億円、東北で約6500億円、東京で約6700億円を投じるとされている。このほかでは、太陽光の導入量が多い九州と中国エリアを結ぶルートの増強に約4200億円、東日本と西日本の送電網をつなぐ周波数変換所(FC)の増強に最大約4300億円の投資が必要となる見通しだ。

 政府が21年にまとめた第6次エネルギー基本計画では、国内電源に占める再生可能エネの比率を30年度に36~38%まで引き上げる目標を掲げているが、問題は送電網の空き容量が不十分だと再生可能エネの電力を都市部に送ることが難しくなることだ。今月4日に開かれた再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議で示されたアクションプランでは、「再生可能エネの大量導入とレジリエンス強化に向けて、地域間の電力融通を円滑化する連系線の整備を加速することが重要」だと指摘。地域間を結ぶ系統については、今後10年程度で過去10年と比べて8倍以上の規模で整備を加速するとしている。

●送電網増強を支える企業群

 株式市場では送電網増強に向けた巨額投資が意識され、その関連株に投資家の熱い視線が注がれている。その一つが電力鉄塔大手の那須電機鉄工 <5922> [東証S]で、今月3日には9900円まで買われ年初来高値を更新した。同社は電力関連の超高圧送電用鉄塔から発電所、変電所内の鉄構・架台、通信鉄塔などさまざまなインフラ設備に係る構造物の設計・製作・販売を展開。また、電力・通信用架線金物をはじめ、碍子、樹脂カバー、各種線材及び情報通信用アンテナ支持物など架空線材料も手掛けている。

 巴コーポレーション <1921> [東証S]は、立体構造物・橋梁・鉄骨・鉄塔の設計、製作、施工のほか、総合建設工事の企画、設計、施工を通して最先端技術を要する各種建築物関連技術の開発に取り組んでいる。また、同社が持つ静的解析の技術は、立体モデルによる実構造物を模擬した応力検討及び接合部などを対象に実験では把握できない部位の安全性を確認できるという。

 大谷工業 <5939> [東証S]は、安定した電力供給システムの一翼を担う変電所の屋外鉄構、発電所と変電所を結ぶ送電用鉄塔などを設計・製造している。送電用アングル鉄塔については、基本設計から構造設計、加工、表面処理まで全工程の生産ラインを富山工場に完備。また、送電設備の新設だけでなく、積み重ねたノウハウを生かして経年設備の維持・更新なども行っている。

 このほかでは、送電工事・再生可能エネ設備工事のスペシャリスト集団であるETSホールディングス <1789> [東証S]も見逃せない。同社グループは「電力の広域ネットワークの本体工事における確実な受注、工事遂行」「グループ会社とのシナジーを活用した工事エリアの拡大」「参入障壁の高い再生可能エネの特別高圧変電所、自営送電線工事で確実に工事を積み上げ」「コーポレートPPA(発電事業者と需要家との電力購入契約)や自家消費型の屋根上太陽光発電所への工事拡大」「電気に加え空調・給排水を含めたトータル設備ソリューションの提供による事業領域の拡大」に注力している。

 東光高岳 <6617> [東証P]は、電力インフラ向け変電設備や配電設備などを手掛けている。直近では川崎重工業 <7012> [東証P]や東洋大学と、今後の再生可能エネの大量導入に伴って発生することが想定される課題を解決するために有効な技術の検証を開始。実際の系統を模擬した環境での検証を通じて再生可能エネの主力電源化に向けて求められるインバータ電源のあり方について検討を行うという。

 これ以外の関連株としては、電気工事大手のユアテック <1934> [東証P]や関電工 <1942> [東証P]、発電所の関連設備エンジニアリングに携わる東京エネシス <1945> [東証P]、電力用など各種電気架線金物を製造販売するイワブチ <5983> [東証S]、受変電システムなどを展開するダイヘン <6622> [東証P]、電力会社向け配電機器を扱う戸上電機製作所 <6643> [東証S]、電線専門商社の泉州電業 <9824> [東証P]など。電線御三家の古河電気工業 <5801> [東証P]、住友電気工業 <5802> [東証P]、フジクラ <5803> [東証P]に加え、電力インフラ系に強みを持つSWCC <5805> [東証P]、総合電線メーカーのタツタ電線 <5809> [東証P]の業績にもポジティブに作用しそうだ。

●スマートグリッド関連にも注目

 IT技術を活用して電力需給を最適化した次世代型の電力供給網である「スマートグリッド」関連にも目を配っておきたい。3月15~17日に東京ビッグサイトで開催された「スマートグリッドEXPO」では高砂熱学工業 <1969> [東証P]が水素活用マイクログリッド「石狩厚田マイクログリッド」のAR(拡張現実)展示を行ったほか、朝日ラバー <5162> [東証S]は落雷から風力発電の風車ブレードを保護するダイバータストリップを展示。

 オーナンバ <5816> [東証S]は出力制御最適化、椿本チエイン <6371> [東証P]は電気自動車(EV)充放電装置、三社電機製作所 <6882> [東証S]は仮想発電所(VPP)やデマンドレスポンス(DR)関連技術、ニチコン <6996> [東証P]はV2H(Vehicle to Home)システムなどを紹介した。

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