【市況】後場に注目すべき3つのポイント~投資家心理悪化するなか14日の米CPIに注目
日経平均 <1分足> 「株探」多機能チャートより
13日の後場の取引では以下の3つのポイントに注目したい。
・日経平均は大幅続落、投資家心理悪化するなか14日の米CPIに注目
・ドル・円は乱高下、米銀破たんめぐる措置で
・値下がり寄与トップはファナック<6954>、同2位はソフトバンクG<9984>
■日経平均は大幅続落、投資家心理悪化するなか14日の米CPIに注目
日経平均は大幅続落。437.90円安の27706.07円(出来高概算8億1161万株)で前場の取引を終えている。
前週末10日の米国株式市場のダウ平均は345.22ドル安(-1.07%)と大幅続落。金融システムに対する不安から売りが先行。2月雇用統計で賃金の伸びが予想を下回ったことで連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利上げ観測が後退し、長期金利が大幅に低下したため、一時上昇する場面もあった。しかし、SVBファイナンシャル・グループの破綻が報じられると、金融セクター中心に売られ大幅続落。その後、イエレン財務長官が金融監督当局幹部を招集、政府も声明で国内の金融システムの強さを強調したため下げ止まった。ナスダック総合指数も大幅続落、主要株価指数がそろって下落した米株市場を受けて、本日の日経平均は前週末比257.76円安の27886.21円と続落でスタート、じりじりと下げ幅を広げる展開となった。
個別では、SVBファイナンシャル・グループの破綻を受けて懸念が広がり三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>、みずほ<8411>などの金融株が大幅下落、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株、三井物産<8031>や三菱商事<8058>、住友商事<8053>などの商社株も軟調に推移。JAL<9201>やANA<9202>などの空運株、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>、トヨタ自<7203>、キーエンス<6861>など幅広い銘柄が下落した。ほか、シルバーライフ<9262>、ハブ<3030>、エイチーム<3662>、などが東証プライム市場の値下り率上位に顔を出した。
一方、郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>などの海運株が堅調に推移した。そのほか、第1四半期好決算受けて見直し買いが活発しているトビラシステムズ<4441>が急騰、前期・今期の配当金の大幅引き上げを好感されたトーホー<8142>が大幅に上昇、フリービット<3843>、冨士ダイス<6167>、メドレー<4480>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。
セクターでは銀行業、保険業、証券・商品先物取引業が下落率上位となった一方、海運業のみ上昇した。東証プライムの値上がり銘柄は全体の3%、対して値下がり銘柄は96%となっている。
本日の日経平均は、シリコンバレー銀行の破綻による金融システム不安や景気に対する先行き懸念等から売りが先行した。その後も、買い手が乏しいなか売り優勢の展開が続いている。心理的な節目である28000円も割り込んでおり、まずは落ち着きどころを探る展開になりそうだ。
新興市場も軟調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後、朝方に下げ幅を縮小する動きを見せたが失速。再度売り優勢の展開となり下げ幅を広げる展開となった。米SVBが経営破綻したことは国内の投資家心理にもネガティブに働いている。また、米雇用統計の結果を受けて米長期金利が大幅に低下したものの、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が利上げ幅の再拡大もあり得ることに言及しているなか、素直に新興株を買い進む動きにはなりにくい。前引け時点での東証マザーズ指数は1.71%安、東証グロース市場Core指数は0.43%安。
さて、10日に発表された2月米雇用統計の結果を振り返る。非農業部門雇用者数は31万1000人増加し、11カ月連続で市場予想を上回る伸びとなった。ただ、平均時給は前月比0.2%増、前年同月比では4.6%増で前月比ベースでは過去1年で最低の伸びにとどまった。また、失業率は3.6%で前月の3.4%から上昇。失業率は上昇し、賃金の前月比伸び率が鈍化するなど、労働市場が軟化しつつある兆候も示唆した。FRBが利上げペースを加速させるかどうかを判断する上で強弱入り交じる内容となった。
前週半ばには、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長のタカ派な議会証言を受けて、21-22日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)における0.5ptへの利上げ幅拡大が7割超の確率で織り込まれていた。しかし、米金融不安の台頭と米2月雇用統計の結果を受けて、足元では再び0.25ptの利上げが8割の確率で織り込まれている。つれて、米長期金利も3.7%台まで低下している。ただ、雇用統計の結果は0.25ptの利上げを確実視するような内容ではなく、14日に発表される2月消費者物価指数(CPI)次第では利上げ加速を再度織り込む展開も想定される。同指標の結果発表には最大の注目が集まろう。
他方で、前週末に米国市場では米SVBが経営破綻し、銀行の信用不安という新たなリスクが台頭した。詳細は、週末の「国内株式市場見通し」や「新興市場見通し」で解説されているため、そちらをご覧いただきたいが、いずれにしろ投資家心理は確実に悪化させる要因となった。米財務省の高官は、シリコンバレー銀行(SVB)と同様の問題を抱えている金融機関が複数あると述べており、こうした金融機関の預金者を巡る懸念があるだろうと語っている。
一方、米投資銀行ジェフリーズのリッチ・ハンドラー最高経営責任者(CEO)は、「この1週間の出来事をきっかけに2008年の世界的な金融危機のような状況が再び起きるとは予想していない」と語ったという。ただ、暗号資産業界でFTXが破綻した際は同社の影響は数カ月かけて広がっており、現在も不透明感が漂っている。詳しい状況などは全く異なるものの、SVB破綻というネガティブサプライズが今後どう影響してくるかは注意深く見守る必要がありそうだ。
月曜日の当欄を担当している筆者は、常々急なネガティブサプライズが飛び込んでくる可能性を想定して相場を見守ることを推奨してきた。SVBのニュースによって米雇用統計の結果がやや素通りされているような印象を受けるなか、14日の米CPIの発表が終わるまではやや軟調な動きが続きそうだ。引き続き、米国の経済指標やFRBの動向に加えて、SVB関連の追加材料など、外部環境の変化にもアンテナを張っておきたい。さて、後場の日経平均は、軟調な展開が続くか。地合いが悪化する中でも個別材料株には物色が向かっており、引き続き同様の動きが継続するか注目したい。
■ドル・円は乱高下、米銀破たんめぐる措置で
13日午前の東京市場でドル・円は133円半ばから135円付近まで大幅に値を切り上げたが、その後は再び133円台に失速。米シリコンバレー銀行の破たんを受け、連邦準備制度理事会(FRB)は流動性を確保する措置を発表し、安全通貨のドルに売り買いが交錯した。
ここまでの取引レンジは、ドル・円は133円53銭から135円04銭、ユーロ・円は142円95銭から144円20銭、ユーロ・ドルは1.0664ドルから1.0731ドル。
■後場のチェック銘柄
・トビラシステムズ<4441>、インフォネット<4444>など、7銘柄がストップ高
※一時ストップ高(気配値)を含みます
・値下がり寄与トップはファナック<6954>、同2位はソフトバンクG<9984>
■経済指標・要人発言
【経済指標】
・日・1-3月期法人企業景気予測調査・大企業全産業景況判断指数:-3.0(10-12月期:0.7)
【要人発言】
・米連邦準備制度理事会(FRB)
「今後生じる可能性のある全ての流動性面の圧力に対処する要因がある」
・バイデン米大統領
「耐性ある軍港システムをどう維持するか、13日に発言」
「大規模銀行に対する監督強化の取り組みを継続する」
・スナク英首相
「英金融システムは健全な状態にある」
・習中国国家主席
「発展と国家安全の調整を改善する」
「台湾をめぐる外部の干渉に反対」
<国内>
特になし
<海外>
・特になし
《CS》
提供:フィスコ