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【市況】国内株式市場見通し:日銀サプライズ人事や米インフレ指標で波乱含みの展開

日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより

 

■FRB高官のタカ派発言が投資家心理を悪化させる

今週の日経平均は週間で161.52円高(+0.59%)と5週続伸。一方、週足のローソク足は4週ぶりに陰線を形成。ただ、13週、52週、26週の各移動平均線の上方は維持した。

日経平均は週初に買いが先行し、27500円を明確に超えた。政府が日本銀行の次期総裁人事として雨宮正佳氏に打診する方向と報じられたことが手掛かりとなった。雨宮氏は黒田東彦総裁とともに金融政策運営を長期にわたって担ってきたため、他の総裁候補と比較して金融政策の修正が劇的に変化する可能性が低いとみられていた。このため、為替の円高への警戒感が和らいだことが投資家心理を改善させたようだ。

一方、その後は週末まで日経平均は27500円より上を維持しながらも膠着感の強い展開が続いた。次期総裁が誰になろうと、金融緩和政策の修正路線に変更はないとの見方が優勢で、為替の円安への戻しが一時的なものに終わったことが影響した。また、強い米雇用統計を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)高官から連日でタカ派発言が相次いだことも投資家心理を悪化させた。週末も、日経平均は86.63円高と4日ぶりに反発も、高値の27814.02円からは伸び悩み、結局、週初からほぼ変わらない水準で終えた。東京エレクトロン<8035>をはじめとした主力企業の好決算を受けた買いが指数を一時押し上げたものの、来週に控える米国の物価指標の発表などを前に警戒感が上値を抑えた。

■米CPIとPPIに注意

来週の東京株式市場は神経質な展開か。日銀新総裁に、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏が就任する見通しとの驚きの報道があった。植田氏は過去に長期金利のコントロールは政策微調整には向かないなどと発言しており、雨宮氏との相対感ではタカ派寄りと捉える向きが海外投資家を中心に多い様子。ただ、同氏は拙速な金融緩和の修正には慎重な発言も見せている経緯があり、今回の報道後も「金融緩和の継続が必要」との考えを示している。足元の為替は一時急伸した後に落ち着きを取り戻している。また、もともと誰が総裁になっても政策の修正路線は不変と捉えられていたことを踏まえれば、今回の一件が相場に大きな変化をもたらすとは考えにくい。

一方、米1月雇用統計の発表以降、FRB高官からタカ派発言が相次いだ。一連の流れを受け、早期の利上げ停止期待は大きく後退している。アナリストの業績予想の下方修正が進む中でも年始から米株式市場が上昇してきたのは株価収益率(PER)の上昇によるものだった。しかし、早期利上げ停止期待が後退し、米国金利の上昇がじわり続いている中では、今後はバリュエーションの調整が再開する可能性があろう。

こうした中、14日には米1月消費者物価指数(CPI)の発表を控えている。前月比では+0.5%(12月:-0.1%)、食品・エネルギーを除くコアでは同+0.4%(12月:+0.3%)と共に加速が予想されている。米クリーブランド連銀が公表しているCPIナウキャストでは総合は同+0.65%、コアで+0.46%(10日時点)と予想されている。仮に上振れとなると、さらなる金利上昇と株価の調整局面入りが考えられる。

また、これまで米CPIの鈍化を支援してきた中古車価格が反発傾向を示していることも気掛かり。自動車オークションを展開する米マンハイムによれば、1月の米中古車平均価格は前月比で2.5%上昇したという。さらに、米レンタカー大手ハーツ・グローバルHDの最高経営責任者(CEO)は、中古車オークションと店頭販売の両方で過去5週間に価格が急上昇したと話している。米1月CPIが仮に予想並みにとどまったとしても、2月分以降への警戒感がくすぶり、株価の上値を抑えそうだ。

さらに、16日には米1月卸売物価指数(PPI)も発表される。CPIより先行性が高いとされるPPIは総合で前月比+0.4%(12月:-0.5%)と加速に転じる見通し。食品・エネルギーを除いたコア指数でも同+0.3%(12月:同+0.1%)と加速する見込みだ。CPIを無難に消化した後も、PPIへの警戒感が株価の上値を抑える展開には留意しておきたい。

米国では他にも重要な経済指標が発表予定だ。15日には1月の小売売上高と鉱工業生産が発表される。ともに12月分は前月比でマイナス、市場予想を下振れたことで昨年末にかけては景気後退懸念が強まる経緯があった。今回はどちらも前月比でプラスへの回帰が予想されているが、年始から過度な景気後退懸念は和らいでいたため、今回の指標のプラス回帰が景気動向に関して投資家心理に与える影響は小さいと考えられる。一方で、むしろ、景気の底堅さが意識されれば、物価指標と合わせて利上げ長期化の思惑を強める可能性があろう。

国内では主力企業の決算発表が14日で一巡する。決算を受けた個別株物色が少なくなるため、このタイミングで市場全体のエネルギーが乏しくなることもやや懸念要素と思われる。決算後に株価上昇が続いていた銘柄でもムードが変わり、利益確定売りが強まる展開などに注意したい。

■10-12月期GDP、1月訪日外国人など

来週は13日にリクルートHDやGMOPG、ライオンなどの決算、14日に10-12月期国内総生産(GDP)速報値、SMC、クボタ、東京海上などの決算、米1月CPI、15日に1月訪日外国人旅客数、米2月NY連銀製造業景気指数、米1月小売売上高、米1月鉱工業生産、16日に12月機械受注、1月貿易収支、米1月住宅着工件数、米2月フィラデルフィア連銀景況指数、米1月PPI、などが予定されている

《FA》

 提供:フィスコ

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