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【特集】馬渕治好氏【新春特別編 2023年株式市場大予測 再び上昇相場は訪れるか?】 <相場観特集>

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

―流れが変わった株式市場、実体経済の急減速を目の当たりに投資家はどう対応すべきか―

 いよいよ2023年相場の幕が開いた。振り返って22年は日米株式市場ともに年初から波乱展開に見舞われ、全体相場は下値模索の動きを余儀なくされた。コロナ禍の経済を救うために打ち出された各国政府の積極的な財政出動や、中央銀行による超金融緩和的措置。皮肉にもこれらが強烈なインフレ圧力を生み、今度はそれを収めるために、FRBをはじめ各国中銀がかつてないスピードで金融引き締めに舵を切った。結果、今度は世界経済のリセッション懸念がマーケットに重くのしかかる状況に陥った。昨年と同じく、新春早々視界不良の荒海に乗り出すがごとき相場環境と言えなくもない。果たしてそこに勝機はあるのか。先読みに定評のあるエコノミストとして、投資家からの支持も厚いブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏に、今年1年を見据えた相場見通しを語ってもらった。

●「年後半から長期上昇トレンドへ転換」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

 23年相場の見通しについては、まず結論から先に言えば、年前半は米国経済の悪化がマーケットを支配する可能性が高いが、年後半はそこから脱却して日米ともに長期的な強気相場に移行する展開を予想している。

 昨年は10月まで、米国を中心にインフレに対する警戒感と金利上昇への懸念が過剰に意識され、株安が助長された。その反動もあって、10月以降12月にかけては概ね株高、長期金利低下の揺り戻しがみられたが、こうした「中間反騰」も12月上旬までで一巡し、その後2週間にわたって日米株市場ともに急な調整を強いられる形となった。

 経済の実勢悪を嫌気した下げ相場は今年も当面は避けられそうにない。ただし、年後半には再び上昇トレンドに回帰することが予想される。警戒され続けてきたインフレについては、物価上昇率の減速は緩やかながら、年後半にはようやく主要国で再緩和を行う余地が生じるとみている。この再緩和の動きが引き金となって世界的に長期にわたる株高がもたらされる公算が大きい。それと同じ時間軸で長期金利の穏やかな上昇、そして緩やかな外貨高・円安の大きな流れが続くと予想する。

 今年1年間でみたNYダウのレンジとしては、下値が3万ドル前後、そして上値は昨年年初の最高値水準に迫る3万6000ドル台近辺をうかがう展開を見込む。年央にかけては途中短期の戻りがあっても下値を切り下げる動きが想定され、時期的に底値をつけに行くのは6月もしくは7月ごろとみている。そして、夏場以降に大勢トレンドが上昇転換し、年末に今年の高値を形成する流れとなろう。米国における再緩和の時期は7月もしくは9月の連邦公開市場委員会(FOMC)あたりと考えており、これを前倒し的に織り込みに行く格好で相場は底を入れる形を予想する。

 一方、東京市場も基本的には米国株市場のトレンドに追随する相場が予想される。日経平均の1年間のレンジは、下値が2万5000円近辺、上値は21年9月につけた高値3万670円(終値ベース)を通過点に3万2000円前後までの上昇を見込む。安値をつけに行くタイミングはやはり年央で、その後は米国同様に年末高の波動を描くことが予想される。ただし、日本株は米国株と比較して下値抵抗力が発揮されやすい面はある。PERなど指標面から相対的に割安感が強いほか、実体経済もインバウンド効果により内需が支えられる可能性が高いからだ。

 外国為替市場では、年前半は米国経済の悪化と日銀の金融政策の変化を背景にドルが売られる展開で1ドル=125円程度までドル安・円高が進む可能性がある。しかし、水準的にはそれ以上の円高進行は見込みにくく、その後は再びドルが買い戻される流れを予想する。年末にかけて1ドル=140円前後まで再び円安方向に押し戻される展開となり、これは日経平均の戻りを支援することにもなりそうだ。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。


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