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【市況】ESG最前線レポート ─「地方創生とESG債」<新春特別企画>

株式会社グッドバンカー
リサーチチーム 倉橋 麻生
第15回 「地方創生とESG債」

● 地域振興・創生のためのコンテンツ(付加価値)とソリューション(実行策)
 
 弊社はESG評価事業の一環として、いくつかの自治体における環境保全、地域創生などのお手伝いもしています。というのも、いずれ投資対象としての地方債の魅力が見直されるとみているからです。これからは、その自治体の政策がESGの観点から評価される時代になることでしょう。
 
 地方の地域振興・創生が叫ばれて久しいですが、一番の問題点は、観光客と定住人口が減少していくことです。その打開策として、"ヒトの移動"を促す仕掛けが地元の自治体には求められます。方策としての3つのキーワード:「知ってもらう」(認知度アップ)、「来てもらう」(観光、ワーケーション滞在)、「住んでもらう」(セカンドハウス、移住・定住)の具体的なコンテンツ(付加価値)やソリューション(実行策)が重要となります。
 
 「知ってもらう」ためには、SNSによるコンテンツ発信やメディアでの紹介が有効です。「来てもらう」ためには、現地の観光スポット・美術文化などを効率良く巡る観光モデルコースをつくったり、ワーケーション体験ができるようなパッケージコースも用意する必要があります。「住んでもらう」ためには、空き家や改築業者を自治体が仲介しても良いでしょう。意欲的に取り組んでいる地方自治体には、有力なコンテンツが多数あるとともに、ソリューションを牽引している首長のリーダーシップとビジョンが明確に感じられます。

● 地域保全・活性化のための「ESG債」

 各地の市町村にある資源(モノ)を活用し、活性化のために"ヒト"の移動を促すには、元手である資金(カネ)が必要となります。環境保全、脱炭素、持続可能性などの観点から、2022年は地方自治体によるESG債(SDGs債)の発行が注目されました。

 5月に滋賀県が発行したESG債(50億円)には、約10倍の購入希望があり即日完売となりました。10月の三重県債、12月の愛知県債の発行では、通常の地方債の発行よりも利率が低くなる「グリーニアム」となっています。投資家層からの関心が高く、購入希望は根強く、発行する自治体にとっても順調な資金調達とPR効果があるので、来年以降も安定した拡大が見込まれます。

● 持続可能な自治体をめざして――

 日本証券業協会によると、2021年の企業や自治体などのESG債発行額は、2兆9270億円に達しています。2022年12月には横浜市も発行し、2022年にESG債を発行した自治体は18にのぼります。

 これまでは、二酸化炭素(CO2)の排出を抑えるために、企業がトランジションボンド(移行債)を発行することで市場が拡大してきましたが、今後は地方自治体による発行の増加が期待されています。これから注目してよい投資商品であるといえます。
 
 ESG債によって資金調達を多様化させ、自治体が魅力的な地域づくりに取り組むことで、持続可能な発展と活性化がもたらされることを期待します。

情報提供:株式会社グッドバンカー

(2022年12月26日 記/次回は2023年1月28日配信予定)

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