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【市況】ESG最前線レポート ─「地方で発見したESG有望銘柄」

株式会社グッドバンカー リサーチチーム 倉橋 麻生

第14回 「地方で発見したESG有望銘柄」

●鹿児島県出水市の麓武家屋敷

 2020年代に入ってからの新型コロナウイルスの感染拡大ということもあり、会社のサテライトオフィスがある鹿児島県出水市で、ワーケーションをする機会を年に数回持つようになりました。

 出水市には日本で最大級の武家屋敷群(「出水麓武家屋敷」)が当時の街並みのまま残されており、2019年には日本遺産に認定されています。「出水麓(いずみふもと)」は北の肥後国と接する薩摩の表玄関にあたり、薩摩中から剛勇の士を集めて国境の守りを固めることで、1630年頃から「薩摩藩最大の麓(武士の住居と陣地を兼ねた町)」を形成した、400年に及ぶ歴史のあるところです。

●「武士道精神とESG」

 麓武家屋敷群に滞在して仕事をし、そこに暮らしながら地元の人々と交流することで、気が付いたことがあります。それは、歴史のある地方のソサイエティ、コミュニティには、何百年というESGの考え方に基づく規範・精神が現在まで脈々と守られ機能しているのではないかということです。

 街は碁盤の目のように整然と配置され、個々の屋敷は周りを石垣とその上の灌木で囲まれて防御され、全体として調和が取れています。自然環境が保持されており、日常生活は静かな環境の中で気持ちよく過ごすことができます。地域における日常の意識や行動も、長年培われた社会的責任としての絆と規律を感じさせます。「出水麓街なみ保存会」が組織され、武家屋敷群の景観と歴史・文化の保持、さらには啓蒙活動にも従事しています。何よりも、武家屋敷の構造そのものが、「いざ敵襲来」という時に即時に対応できるような設計や備えを残しており、「平時にあって有事に備える」武士道精神を感じさせるのです。出水麓に滞在していると、400年間続いている武士道精神から現代のESGへと思いはつながります。

●出水市での唯一の上場企業

 鹿児島県に本店登記している上場企業は現在12社ありますが、出水市に本社があり活動している企業はマルマエ <6264> [東証P]しかありません。同社は2001年に創業された半導体、液晶、太陽電池製造装置向けの精密加工を得意とする部品加工会社です。2000年代に第1次成長局面を迎え、リーマン・ショック時には過大投資の後処理で苦しんだ数年間もありましたが、その後は成長分野での再度の事業拡大により、前2022年8月期は前期比+60%増収、+97%経常増益で史上最高益を更新しました。

 今期は世界的なハイテク分野の事業環境の悪化により、前期比▲30%の経常減益と慎重な期初見通しを公表しています。しかし、中期的には米国市場向けを中心に成長製品が牽引する見通しであり、現時点では設備投資のタイミングを慎重に見定めています。

 さらに、同社はこの1、2年の間、ESGへの取り組みと情報公開を積極的に推し進めています。定期的に会社を訪問して、前田社長以下、スタッフの方へインタビューをする機会を持つたびに、その念を強く持ちます。ESGに関する開示項目は、年を追うごとに質・量ともに拡大しており、経営判断・戦略・体制の強化に取り組んでいることがよくわかります。決算説明資料の後半部分はESGに関連した説明・開示であり、昨年度は公約どおりに「統合報告書」も初めて発表されています。こちらも評価に足る充実した内容でした。

 地方の企業であることと、知名度がまだ低いことから、人材採用に苦労することがあるそうですが、福利厚生や働き方改革を進めることで企業の体質も強化・拡充していきたい、との意欲を表明しています。

 このように、まだまだ知られていない隠れた魅力ある地方の成長企業、ESGを梃子として進化する企業を見つけることが、企業調査の醍醐味であり楽しみなのです。

情報提供:株式会社グッドバンカー

(2022年11月22日 記/次回は1月3日配信予定)

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