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【市況】ESG最前線レポート ─「続く働き方の模索」

株式会社グッドバンカー リサーチチーム 倉橋 麻生

第13回 「続く働き方の模索」

●浸透・進化するテレワーク

 コロナ禍が始まった2020年より、企業で出社比率を低減させるため テレワークが一気に浸透しました。初めて「緊急事態宣言」が発令され、外出自粛が呼びかけられた2020年4月から約2年半を経て、企業の働き方は様々に変化してきています。

 内閣府の調査によると、感染拡大前の2019年12月時点のテレワーク実施率は10.3%だったのに対し、2020年5月には一気に27.7%となり、2021年9-10月時点で32.2%と、約3倍に増えています。東京都だけで見ると55.2%となっており、その実施率の高さがうかがえます。

 テレワークが浸透した今、企業の取り組みも進化しており、在宅勤務が浸透したためオフィス面積を減らす企業や、国内のどこでも居住可能とし、出社が必要になった場合は飛行機の利用も認める企業なども出てきています。

 もちろん、テレワークが不向きあるいは不可能な業種や業態、また企業規模もあるでしょう。実際、テレワークの実施率は、従業員数が多い企業ほど高く、また業種によっても差があります。

●世界を旅するノマドワーカー

 2018年、私はセルビアにあるコワーキング・コリビングスペースを利用しました。ベオグラード空港から車で2時間半の小さな町にあり、周りには特に何もありません。しかし、そこには世界各国から利用者が訪れていました。

 彼らに、なぜわざわざここに来て仕事をするのかと尋ねると、異口同音に「集中できる」「生産性が上がり効率的」「アイデアが浮かぶ」などという返事が返ってきました。少なくとも一週間以上から数カ月にわたる長期滞在が多い一方、毎日のように人の入れ替わりがあり、去る人には「次はどこへ行くの?」と決まって尋ねます。このように、世界中を転々と移動しながら仕事をしている典型的なノマドワーカーなのです。

 企業が独自に設置するサテライトオフィスやレンタルオフィスと違い、利用者間の交流が生まれ、そこから新たなアイデアが生まれたり、ビジネスに発展したりすることもあり、それを目的に利用する個人や会社もあるそうです。

●企業が模索する生産性向上

 一方で、2022年に入ってウィズコロナの考え方が定着しつつあり、政府も8月に感染者数の全量把握を見直すなど、風向きが変わってきています。企業も、社員同士の対面での業務が少ないことによるコミュニケーション不足を懸念しており、特にコロナ禍以降に入社した1、2年目の社員は、業務に慣れないうちからリモートワークになることが多く、上司や先輩社員からの指導を受ける機会が少ないという問題も出てきています。

 アメリカでも、テスラ<TSLA>の最高経営責任者であるイーロン・マスク氏が、実質的なリモートワーク禁止令を発表したことが話題になりましたが、マイクロソフト<MSFT>が実施した調査によると、出社を求める企業が増えてきているようです(※)。

 今月21日に閣議決定された2022年版「過労死等防止対策白書」では、テレワークに関する調査結果を報告しており、テレワークと出社との適度な組み合わせで幸福感が得られるとの分析結果を示しています。

 各企業がいかに従業員の意欲と能力を引き出し、生産性向上につなげていくのか、働き方の最適解を模索する動きは各社の競争力、ひいては株価にも影響するものとして、今後も注目していきます。

(※)Microsoft, 2022 Work Trend Index: Annual Report “Great Expectations: Making Hybrid Work Work”

情報提供:株式会社グッドバンカー

(2022年10月25日 記/次回は11月26日配信予定)

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