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【特集】今年最後のFOMCは原油相場の分岐点となるか、米インフレのピークアウト期待が高まる <コモディティ特集>

minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司
 今年最後の米連邦公開市場委員会(FOMC)が来年以降の石油市場の見通しを左右しそうだ。インフレ高進を背景に、主要国が歩調を合わせたような金融引き締めを続けていることが世界的な景気見通しを悪化させており、石油の需要見通しも圧迫している。今回のFOMCを控えて利上げペースの減速が既に示唆されているなかで、最終的な政策金利水準や利上げ打ち止めまでの道のりが示されるかどうかが焦点である。利上げの一時停止期待が高まれば、物価高を背景とした継続的な利上げに怯えてきた原油市場では売りが一巡するだろう。

●ターミナルレートまで利上げ幅はあとわずか

 FOMCを控えたブラックアウト期間前にパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、利上げペースが減速する可能性や、最終的な米政策金利水準が想定よりもやや高いとの認識を繰り返した。9月のFOMCで公表されたドットプロットで、政策金利のピークは5%である。パウエルFRB議長の発言に沿って、今回のドットプロットで金利見通しがやや上方修正されるのだろうか。

 現在のFF金利の誘導目標である3.75~4.00%から、市場参加者が想定するターミナルレートである5%付近に向けて、今月0.50%の利上げが実施されるとすると、残りの利上げ幅はわずかだ。来年1月か2月には利上げが停止となる可能性がある。

●正念場のFRB、市場の混乱を避けられるか

 ただ、米地区連銀の総裁らは自身の見解としてターミナルレートに言及しつつも、利上げ停止時期には言及していない。パウエルFRB議長も利上げの終点を明示しておらず、引き締め余地を残している。5%付近での利上げ打ち止め期待を肯定も否定もせず、積極的な対話を見送ったことからすると、物価見通しには不安がありそうだ。今年はロシアがウクライナへ侵攻するなど想定外の事態が物価を押し上げたが、米金融当局者がはっきりと物価見通しを示すことができなければ、金融市場を混乱させるだろう。

 11月の米生産者物価指数(PPI)の前年比の伸びは3月以降ピークアウトしている。消費者物価指数(CPI)の先行指標であるPPIが鈍化し、CPIにも減速の兆候が強まっていることからすれば、利上げを一旦停止する妥当性が高まるが、今回のFOMCで米金融当局者はどのように判断するのだろうか。利上げ停止を示唆すると、ドル相場を圧迫するほか、原油を含むリスク資産を押し上げ、インフレ率を下支えするリスクもある。一方で、更なるインフレ高進や物価の高止まりに怯えて、自信なさげに金融引き締め余地を残すような態度を取れば、市場を混乱させるに違いない。FRBはこの正念場を乗り切り、今年を締めくくることができるのだろうか。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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