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【経済】【クラウドファンディング】“蚊の針”からアイデア! 次世代型ワクチン投与デバイスのライトニックス、12月17日募集開始

 「蚊」の針に着想を得た次世代型ワクチン投与デバイスの開発に取り組む株式会社ライトニックス(兵庫県西宮市)が、株式投資型クラウドファンディング(普通株式型)による出資を募集します。申し込みは12月17日10時開始を予定しています。

・ 普通株式型
・ 目標募集額2000万円、上限募集額7400万円
・ VC出資実績あり
・ 事業会社/CVC出資実績あり
・ エンジェル出資実績あり
・ みなし時価総額:5億7530万円
・ 類似上場企業:窪田製薬ホールディングス、JMC、コラントッテ、ディーブイエックス、オーベクス、サイトリ細胞研究所、テルモ

※「みなし時価総額」はミンカブ編集部が「発行済み株式数×募集株式の払込金額」により試算

コロナで浮き彫りになった「ワクチン格差」

 ライトニックスは「蚊」の針に着想を得た、人・環境に優しい次世代型ワクチン投与デバイスの開発に取り組む医療機器ベンチャーです。独自のアイデアでワクチン接種における課題を解決し、医療を必要とする多くの人にワクチンが行き届く世界を目指しています。

 新型コロナウイルス感染症により、先進国と発展途上国との間の「ワクチン格差」が浮き彫りになったと同社は分析。先進国が早期にワクチンを確保する一方、途上国では調達困難な状況が続いたといい、ワクチン格差は新たな変異株の脅威となるほか、経済格差の拡大につながり得ると指摘され、ワクチンへの公正なアクセスは国際会議の議題にもなっているといいます。

 ワクチンの偏在は、新型コロナの感染拡大前から存在する地球規模の課題で、先進国では乳児期から学齢期にかけ、学校や病院でさまざまな予防接種を受ける機会がある一方、途上国を中心に、世界では、年間150万人の子どもがワクチンで防げる病気で命を落としているといいます(日本ユニセフ協会)。

 同社はこうしたワクチンの偏在などを踏まえ、1回当たりのワクチン投与量を減らす可能性があると期待される「皮内注射」という薬剤投与方法に着目しました。

 同社によると、注射には皮内注射のほか、「皮下注射」「筋肉注射」「静脈注射」といった投与方法があり、皮内注射は皮膚の最も外側にある表皮から、その下の真皮までの1~2ミリ以内に薬剤を投与するものです。

 皮膚の上層部には免疫細胞が豊富に存在するため、筋肉注射や皮下注射よりも効率的に抗原を取り込むことができ、インフルエンザで1回の接種に必要なワクチン量を5分の1に削減できることが、WHO(世界保健機関)から報告されているといいます。

 さらに、複数の海外研究機関から、インフルエンザ、狂犬病、B型肝炎、ポリオなど幅広い感染症に関して、ワクチン投与量を筋肉注射の5分の1程度に削減できるとの報告がなされており(ライトニックス調べ)、動物実験の段階では、2021年の研究で、新型コロナのワクチンでも、筋肉注射より皮内注射の方が高い免疫反応、かつ低いアナフィラキシーリスクが示唆されたそうです。

 一方で、皮内注射は皮膚のごく浅い部分に投与するため、皮膚に対してほぼ水平に注射針を刺さなければならず、医療従事者にはかなりの訓練が必要とされるため、先進国でもワクチン投与は筋肉注射や皮下注射が多く、皮内注射は一般的ではないのが実情だといいます。

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(出典:イークラウド)

 そこで、同社は「簡便で安全な医療技術を創造し、健康を願う世界中の人々に寄り添う」をビジョンに掲げ、従来の注射器よりも操作が簡単なワクチン用の「皮内投与デバイス」を開発しています。

 WHOの報告のように、筋肉注射から皮内注射への置き換えでワクチン投与量を5分の1に減らすことができれば、接種コストは計算上、5分の1に減らせるといい、同社は皮内投与デバイスによる簡便な皮内注射を普及させ、ワクチン接種を安価で受けられる環境の構築を目指しています。

 また、皮内注射でワクチン投与量が削減できれば、パンデミック時など、ワクチン生産量が逼迫する状態でも、より多くの人々へのワクチン接種が可能になるといいます。近年、途上国でも独自にワクチンが生産されていますが、途上国の製薬メーカーは生産能力や生産コストが先進国の製薬メーカーより劣る場合があり、同社の皮内投与デバイスを用いることで、限られた生産能力の国や地域でも、より多くの人にワクチンを安価に供給できるとしています。

皮内投与デバイスの"3つの特徴"

 同社は独自構造の皮内投与デバイスを開発することで、手技での投与が難しいという従来の皮内注射の課題を克服することを目指しており、同デバイスは新型コロナ、インフルエンザ、結核、狂犬病、サル痘などさまざまな感染症のワクチンに対応させることを検討しています。

 自社の皮内投与デバイスを使ったワクチン削減効果は検証済みで、2021年の動物実験では、卵白を構成するタンパク質のオボアルブミン(OVA)をモデル抗原として投与し、筋肉注射の5分の1の投与量で同等の免疫反応が確認できたといいます。

 同社は自社の皮内投与デバイスについて、以下の3つの特徴を挙げています。

【特徴1】押し当てるだけの簡単投与

 スタンプのように肌に押し当てるだけで、デバイス内のバネが収縮して、中から針が飛び出し、薬剤を投与することができます。このデバイスの構造については特許(7082851号)を取得しています。

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(出典:イークラウド)

 同社の皮内投与デバイスは独自構造により、針が刺さる深さを1~2ミリ程度と一定にすることが可能。針と薬液があらかじめ内蔵されているため、針を取りつけたり、薬液を充填したりする手間もなく、投与までほぼワンアクションで行うことができるそうです。

 また、ワクチンの投与後、針が自動で引っ込み、ロックがかかる仕組みとなっていることも特徴です。従来の注射器は針が露出したままで、医療従事者に針刺し事故(※)の危険がありましたが、同社のデバイスは針が引っ込むため、事故のリスクを低減できるとしています。一度使うと再利用できないため、誤って複数回使われたり、使用後のデバイスが再流通したりすることによる2次感染も防げるといいます。

(※「針刺し事故」:患者の血液が付いた医療機器などで受ける外傷で、患者の感染症に感染する恐れがある。日本国内でも年間推計5万件発生しているとされる)

【特徴2】環境に優しい植物由来の生分解性プラスチックを使用

 同社の皮内投与デバイスの針は金属製ではなく、トウモロコシ由来の樹脂(ポリ乳酸)を原料とした生分解性プラスチック製であり、生分解性プラスチックは微生物によって水と二酸化炭素に分解され、自然界に循環します。

 WHOは2022年2月、新型コロナ感染拡大を背景とした医療廃棄物の増加と医療廃棄物を媒介したけがや2次感染に警鐘を鳴らしていますが、同社の樹脂針は金属針とは異なり、生分解性プラスチック製のため、容易に焼却処分することができ、途上国などで課題となる医療廃棄物問題や2次感染リスクの低減に貢献できる可能性があるそうです。

 針は植物由来の樹脂針のため、金属アレルギーを持つ人でも接種を受けやすいなどのメリットもあるといいます。

【特徴3】「蚊」を模した形状で傷口が小さくなる針

 ライトニックスの皮内投与デバイスは「蚊」の針の構造を応用しており、その形状を模倣することで、傷口が小さく、患者への負担がより少ない低侵襲性の注射針を目指しています。

 蚊は左右に細かいギザギザが入ったノコギリのような板状の口器を持っており、同社の樹脂針もギザギザを入れた板状とし、針と皮膚組織の接触面積が小さくなるよう設計しています。接触抵抗を少なくすることで、金属に比べて柔らかい樹脂製の針でも、皮膚に穿刺(せんし)できる構造だといいます。

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(出典:イークラウド)

 針の形を板状にすることで、通常の注射針よりも傷口が小さくなり、同じ太さの針でも、通常のパイプ型の注射針の傷口がかまぼこ型となるのに対し、同社の針による傷口は一直線で、傷口の長さが短くなることが自社実験で確認されています。

 実際の製品化には、針の超高精度な加工技術が必要でしたが、公的機関や大学との連携などを通じ、構想から約10年間かけて、独自の成形技術を確立したそうです。

シンプルな構造による価格優位性

 同社は、途上国にもワクチンを行き届かせるには、皮内注射の採用により、ワクチンの薬液コストを削減することが重要である一方、皮内投与デバイスそのものも安く提供できるかどうかが鍵だと考えています。

 これまで、皮内投与デバイスは他メーカーも開発していますが、インフルエンザワクチン込みで、1デバイス10ドル程度で医療機関に提供されるなど、途上国にとっては高額で、市場に浸透してこなかったといいます(ライトニックス調べ)。同社のデバイスは例えば、インフルエンザワクチンとの組み合わせで3ドル程度の販売価格を見込んでいます。

 このような価格優位性は、デバイスの構造がシンプルであるためだといいます。一般的に、皮内投与デバイスはいずれも、皮内注射を簡単にできるようにするために、針を皮膚に対して垂直に刺すことを目指して作られています。

 しかし、従来の皮内投与デバイスに搭載されている金属針を皮膚に刺すには、もともと斜めにカットした針先の鋭利な部分だけでも1ミリ程度は必要で、その分、浅い部分で針を止めるのに繊細なコントロールが不可欠となり、デバイスの持ち手の内部に針の深度を調整する複雑な構造になっているといいます。

 一方で、同社の皮内投与デバイスはもともと、「ランセット」という、注射器とは別の医療機器が出発点。これは主に血糖値の自己測定のために針を指に刺して、少量の血を出す用途のコンパクトな器具で、これを応用した同社のデバイスは他社製品より、シンプルに設計されているとしています。

 課題である針の深度調整は、デバイスごと、スタンプのように押し当てて薬剤を投与できるといった独自構造でクリア。さらに加工が容易な樹脂針の特性を生かして、針の先端ではなく側面に薬液が出る穴を設け、皮膚の浅い部分に薬液を投与しやすい設計だといいます。

 「比較的シンプルな構造でありながら、他の製品同様、誰でも簡単に安全に皮内注射ができるデバイスの実用化を目指しています。皮内投与デバイスを安価に提供できることを強みに、まず、途上国での浸透を図っていきます」(同社)

2023年6月、タイで医療機器登録を申請へ

 同社は2012年より、ランセットを国内外で販売しており、今後はランセットのコア技術を応用し、より収益性や市場拡大が見込まれる皮内投与デバイス事業を主軸に据える計画です。

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(出典:イークラウド)

 同社によると、皮内投与デバイスの開発事業はAMED(日本医療研究開発機構)の開発初期段階支援事業に採択され、「発展途上国のニーズに合わせた樹脂製簡単ワクチン投与デバイスの開発」を目的に進められてきました。

 皮内投与デバイスはまず、タイでの上市を目指しています。タイ赤十字社は皮内注射のメリットを踏まえ、狂犬病ワクチンについて、筋肉注射の5分の1のワクチンを皮内注射する方法(タイ赤十字皮内接種法)を1990年代に開発しているため、狂犬病ワクチンの皮内注射が比較的普及しており、皮内注射が受け入れられやすい環境だといいます。

 同社は皮内注射が簡単にできる皮内投与デバイスをタイで実用化させるため、AMED事業を通じて、タイ医療従事者のニーズ調査、デザインコンセプトの設計、試作品の開発などを完了。2023年6月、タイでの展開に必要な医療機器登録の申請を、現地の医療機器製造業者を通じて、タイ保健省に行う予定です。申請後、製薬メーカーでの臨床試験を行い、ワクチンとの組み合わせ医薬品として薬事承認を取得し、市場に投入する計画です。

 タイでの医療機器登録に先立って、日本でも、医療機器の承認申請を行う予定です。日本で薬事承認を得ていれば、アジア各国での信頼性向上が期待できると考えているためで、2023年4月の申請を目指します。

ライセンスビジネスを展開

 なお、同社は自社製造を行わず、主に海外の製薬メーカーを対象としたライセンスビジネスを展開していく計画です。製薬メーカーとの契約時に顧客ワクチンの皮内投与の有効性を評価し、契約一時金を受け取った後、治験開始時に顧客ワクチンに合わせた治験用デバイスを提供し、マイルストーンフィーを受領します。

 治験完了後は、デバイスの製造に必要な周辺権利を知財パッケージとして提供するほか、製造ラインのコンサルティングを実施し、パッケージ移管料を受領。上市時には、デバイスの知財使用にかかるライセンス契約を結び、ワクチンの売り上げを基準としたランニングロイヤルティーを受け取る計画です。

 「このように事業の進捗状況に応じ、継続的にマネタイズするビジネスモデルを想定しています。開発後のコストが少なく、契約後は利益率の高い収入が見込めると考えています」(同社)

医療機器市場が拡大するタイ

 同社は皮内投与について、ワクチン投与量を削減する関連技術として注目されつつあると分析。グローバルインフォメーション社の調査によると、世界の皮内注射市場は2021年の4918億円から、2028年には1兆381億円に達すると予測されており、2021年~2028年の年平均成長率は11.3%と見込まれているそうです。

 また、ASEAN各国でも医療分野への関心は高まっており、同社が上市を目指すタイはすでに高齢化社会に突入している一方、死亡要因に占める感染症の割合が先進国に比べて大きく、国が医療分野を国家的課題に挙げているといいます。同国の2023年の医療機器市場は約3080億円で10年前の約2倍に成長すると予測されるなど、市場拡大が見込まれているといいます。

 将来的には、タイ同様の課題を抱える東南アジアやインドなどの周辺国にも展開できるよう、海外展開の知見を蓄積する方針です。

今後の成長に向けて

 同社は現在、タイの製薬メーカーと皮内投与デバイスの臨床試験に向けた交渉を実施中で、現段階では、新型コロナ向けのワクチン投与デバイスの製品化から開始していく構想です。

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(出典:イークラウド)

 この製薬メーカーとの開発に向けたマイルストーンとしては、2023年より、非臨床試験(動物試験)を実施、その後、臨床試験(ヒト試験)に向けたデバイスへの改良を行う計画です。2023年~2024年にかけて臨床試験を実施し、その間に現地の医療機器製造業者で生産体制を整えるとともに、臨床試験結果を基にした販売戦略の協議などを行う予定です。

 2024年に製薬メーカーの工場での生産体制確立とともにパッケージ移管を実施し、生産開始を想定。これらの計画が実現すれば、2025年に黒字化する事業計画だとしています。

 インフルエンザ、結核、狂犬病、サル痘など他の感染症向けのワクチン投与デバイスの展開も視野に入れており、今後、製薬メーカーと交渉していきたい考えです。同社は医療会社などへの売却(M&A)によるイグジットを目指しています。

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(出典:イークラウド)

株主構成

 同社は、以下のベンチャーキャピタル・事業会社から出資を受けています。

・ユニバーサルマテリアルズインキュベーター株式会社(UMI1号投資事業有限責任組合)
・綜研化学 <4972> [東証S]
・三菱UFJキャピタル(三菱UFJキャピタル6号投資事業有限責任組合)
・合同会社MCC
・株式会社ケイエスピー(KSP5号投資事業有限責任組合)
・個人株主など

類似上場企業(業態やサービス・製品などで類似性の見られる企業)

・窪田製薬ホールディングス <4596> [東証G]
・JMC <5704> [東証G]
・コラントッテ <7792> [東証G]
・ディーブイエックス <3079> [東証S]
・オーベクス <3583> [東証S]
・サイトリ細胞研究所 <3750> [東証S]
・テルモ <4543> [東証P]

発行者・募集情報

■募集株式の発行者の商号及び住所、資本金等
株式会社ライトニックス
兵庫県西宮市甲東園二丁目2番6号
https://www.lightnix.jp/
代表取締役:木場 祥介
資本金:55,500,000円
発行可能株式総数:25,821株
発行済株式総数:5,753株
調達前時価総額:575,300,000円
設立年月日:2002年5月9日
決算期:8月

■募集株式の数(上限)
普通株式 740株

■募集株式の払込金額
1株当たり 100,000円

■申込期間
2022年12月17日~12月27日
※上記申込期間のうち、募集期間は12月17日~12月26日。早期終了の場合、予定した申込期間の最終日よりも早く、申し込みの受付を終了することがある。
※上記申込期間のうち、12月27日は募集期間の最終日である12月26日中に上限募集額に達し、早期終了した場合に、その後24時間のキャンセル待ちに申し込める期間。その他の場合、遅くとも12月26日までに申込期間は終了する。

■払込期日
2023年1月12日

■目標募集額
2,000万円

■上限募集額
7,400万円

■投資金額のコース及び株数
10万円コース(1株)
20万円コース(2株)
30万円コース(3株)
50万円コース(5株)

■資金使途
・調達額2,000万円(目標募集額)の資金使途
人件費 1,204万円
知財関連費用 200万
地代家賃 100万円
専門家報酬 100万円
手数料 396万円

・調達額4,700万円の資金使途
人件費 1,204万円
知財関連費用 296万円
地代家賃 100万円
専門家報酬 100万円
研究開発費(薬事関連費用) 400万円
研究開発費(投与針設計) 1,400万円
研究開発費(動物試験) 270万円
手数料 930万円

・調達額7,400万円の資金使途
人件費 2,500万円
知財関連費用 700万円
地代家賃 300万円
専門家報酬 300万円
研究開発費(薬事関連費用) 400万円
研究開発費(投与針設計) 1,400万円
研究開発費(動物試験) 270万円
研究開発費(物品購入) 184万円
手数料 1,346万円

■連絡先
株式会社ライトニックス
048-951-363

※本株式投資型クラウドファンディングの詳細については、イークラウドの下記ページをご覧ください。

蚊の針に着想を得た次世代型ワクチン投与デバイスで世界の医療課題に挑戦する「ライトニックス」

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