【市況】明後日の株式相場に向けて=「FOMC」と「中間選挙」で揺れる市場
日経平均 <日足> 「株探」多機能チャートより
米国株市場ではFOMCの結果発表とパウエルFRB議長の記者会見を目前に控え、買いの手が引っ込んでしまった感じだが、売りも薄い。「10月の記録的なNYダウの戻り足を見せつけられては、売り方としてもイベントドリブン戦略でショートを積み上げるようなスタンスで臨むのはリスクが大きい」(国内証券ストラテジスト)という状況にあるようだ。その結果、強気とも弱気ともいえない玉虫色のセンチメントを反映して、一定のレンジでひたすらもみ合う形となった。前日は、欧州時間に主要国の株価が軒並み上昇したことを受け、NYダウ、ナスダック総合株価指数ともに朝方こそ高く始まったのだが、その後はすぐに値を消した。マイナス圏に沈むと、今度はそのまま取引終了まで水面下をバサロ泳法で進むように横ばいで推移。目先は強気筋も弱気筋も動けない、そんな時間帯である。
今回のFOMCの結果は日本時間あす午前3時に判明する。その30分後にはパウエルFRB議長の記者会見が行われる。東京市場ではあすは取引が行われないため、2日分の米国株の動向をまとめて週末4日の相場で織り込む格好となる。11月の0.75%利上げについて日米株式市場では事前コンセンサスとしてほぼ完全に織り込んだ状態とみられるが、問題は12月以降がどうなるかである。ポイントはFRBが直近の米株高について(厳密に言えばNYダウの急騰について)、インフレ高進を助長する“悪”と考えているのかどうかということだ。10月の月間上昇率が46年ぶりのパフォーマンスを記録したということは、まずは期待インフレ率を下げたいと考えているパウエルFRB議長にとって、少なくとも歓迎はできない。市場筋も「(パウエル氏は)“利上げの打ち止めが近い”などというマーケットの勝手解釈を修正したいという気持ちは強いはずだ」(同)とする。
また、最近はあまり俎上に載らなくなっているが、こうしている間にもFRBのバランスシートを縮小する作業、いわゆる量的引き締め(QT)は9月から従来比倍増となる毎月950億ドル規模で、粛々とマーケットから回収されている。そしてこれは今後も続くわけで、おそらくその影響が来年は顕在化するとみておいた方がよい。しかし、株式市場において「需給はすべての材料に優先する」という。先安観を拠りどころに節操なく空売りに走ると、その反動で踏み上げ相場のスイッチが入る。今年は年初からその繰り返しであった。
一方、買い方の立場から見た場合はどうか。10月に記録的なリバウンドをみせたNYダウだが、それでもチャートの戻りの頂点を結ぶと、ここまできっちりと右肩下がりのトレンドを継続している。「ベアマーケットラリー」と言われるゆえんである。このベアマーケットラリーの見解を打ち崩すうえでは、11月相場の動きは極めて重要であり、ここで一直線に年末高というコースに進むのであれば、「潮の流れは変わった」とはっきりと言うことができる。なお、ナスダック総合株価指数は、ダウと比べると遥かに弱い動きだが、これはIT大手5社のGAFAMの影響が大きい。GAFAMの成長ステージは金融引き締めに対する思惑よりも早く“打ち止め感”が出ていることは否定できない。
そして、来週は天下分け目の中間選挙が行われる。下院は共和党の勝利が濃厚とみられている。しかし、上院がはっきりしない。バイデン政権の不人気ぶりからはイメージしにくいが民主党が過半数の議席を押さえるという見方も根強い。もしそうなれば「ねじれ議会」となるわけだが、実はこのパワーバランスが株式市場には心地良いのだという指摘もある。経済活性化策がなかなか通らない状況が想定され、それがインフレ抑止につながり、結果的に金融引き締めの終着点が早まり、株高という論法らしい。「風が吹けば桶屋が儲かる」ではないが、上院での民主党勝利が株高復活の第一歩、というシナリオが非常にアイロニカルで、今の米国の経済難を浮き彫りにしているようにも思える。
あすの東京市場は文化の日の祝日により休場となる。海外では10月の財新中国非製造業PMI、9月のユーロ圏失業率、9月の豪貿易収支、9月の米貿易収支、9月の米製造業新規受注、7~9月期米労働生産性指数(速報値)、10月の米ISM非製造業景況感指数など。また、英中銀の金融政策委員会の結果発表、インド準備銀行(中銀)の政策金利発表、マレーシア中銀の政策金利発表、ノルウェー中銀の政策金利発表など。(銀)
出所:MINKABU PRESS