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【特集】鈴木英之氏【日経平均切り返しへ、米株高受け流れ変わるか】(1) <相場観特集>

鈴木英之氏(SBI証券 投資情報部長)

―2万7000円台一時回復、買い戻しで上値指向に―

 週明け24日の東京株式市場では、日経平均株価が3日ぶり反発に転じ一時2万7000円台を回復した。前週末の米株市場ではFRBの金融引き締めピッチが緩むとの思惑で景気敏感株などを中心に買い戻され、NYダウは700ドルを超える上昇を示した。外国為替市場では政府・日銀の介入観測などを背景に急激に円高方向に振れた後、再び大きく円安に押し戻されるなど目まぐるしい動きだが、株式市場の方はこれに振り回されることなくボラティリティは限定的なものにとどまっている。今後の日経平均の動きや物色の方向性などについて、第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。

●「日経平均は底打ちから緩やかな上昇基調へ」

鈴木英之氏(SBI証券 投資情報部長)

 日経平均株価は10月初旬の2万6000円割れで底を打ち、緩やかな上昇基調に入りつつあるとみている。

 10月初旬までの株価の下落は、米国のインフレ懸念を背景にした急ピッチな利上げが懸念されたと思われる。しかし、今月中旬に発表された米9月消費者物価指数(CPI)は市場予想を上回ったが、株価はさほど下がらなかった。米国の物価上昇は、家賃や賃金などの上昇の寄与が大きいが、住宅ローン金利の上昇の影響などで、各種住宅関連指標がスローダウンするとともに、今後家賃の上昇も落ち着きそうだ。また、賃金など雇用関連の指標も徐々にピークアウトしていくとみられる。

 一方、不透明要因が強まる米国に比べて、日本は相対的な堅調さが目立つ。国際通貨基金(IMF)が発表した経済見通しでも、2023年の日本の成長率は欧米を上回ると予想されている。日本はコロナ禍からのリオープン(経済再開)がこれからであり、この点が経済成長に寄与する。

 今後は日本企業の決算発表などが本格化し、その内容を確かめる必要がある。ただ、日経平均株価は今期予想ベースのPERで12倍前半の水準にある。過去の平均PERのレンジは12~15倍前後であり割安感は強くなっている。こうしたなか、今後1ヵ月程度の日経平均株価は下値が2万6500円、上値が2万8500円前後を想定している。

 個別銘柄ではインバウンド関連で近鉄グループホールディングス <9041> [東証P]やJR東日本 <9020> [東証P]、ANAホールディングス <9202> [東証P]など陸運空運株に期待している。また、半導体関連株にも徐々に見直し機運が出てくるとみておりレーザーテック <6920> [東証P]や信越化学工業 <4063> [東証P]などに妙味がありそうだ。更に、三井不動産 <8801> [東証P]や三菱地所 <8802> [東証P]のような大手不動産株にも注目している。


(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(すずき・ひでゆき)
早稲田大学卒。リテール営業、調査部、株式部等を経て、SBI証券投資情報部長に。モーニングスター株式会社(投資調査部ゼネラル・マネジャー)へ転籍を経て現職。ラジオ日経、ストックボイス等で相場解説を行っている。

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