【特集】国内市場が成長軌道、拡大トレンドに乗る「BtoC」EC関連株が活躍へ <株探トップ特集>
国内の電子商取引(EC)市場が拡大している。21年の市場規模はコロナ禍以前の勢いを取り戻しており、今後も成長が期待できる分野として関連銘柄をマークしておきたい。
―21年の市場規模20.7兆円、コロナ禍以前の勢いを取り戻す―
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が8月26日の講演で、インフレ抑制を最優先に利上げを続ける方針を改めて強調したことをきっかけに世界の株式市場が再び不安定な動きとなっている。この日の日経平均株価は2万8000円台を割り込んでスタートしたあとは下げ渋ったが戻りは限定的だった。9月2日に発表される8月の米雇用統計で労働市場の需給逼迫が示されれば、FRBによる積極的な金融引き締めが長期化するとの見方が増え、米景気の悪化懸念が強まる可能性があり、先行き不透明感がくすぶり続けている。
ただ、こうした局面で着目したいのが今後も成長が期待できる分野で、その一つが電子商取引(EC)だ。経済産業省が8月12日に公表した市場調査によると、2021年の国内BtoC-EC(消費者向け電子商取引)の市場規模は前年比7.4%増の20兆6950億円に拡大しており、関連銘柄に注目してみたい。
●国内市場には一段の成長余地
国内BtoC-ECの市場規模は、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって20年にマイナス成長となったものの、ほぼ右肩上がりで推移している。21年の数値は19年の19兆3609億円を上回っており、コロナ禍以前の勢いを取り戻しているといえそうだ。分野別では物販系が前年比8.6%増の13兆2865億円、サービス系が同1.3%増の4兆6424億円、デジタル系が同12.4%増の2兆7661億円となっており、ECの利用が消費者の間で定着しつつあることが示されている。
また、すべての商取引に対してEC市場で取引される割合を表すEC化率は、BtoC-ECで前年比0.7ポイント上昇の8.8%に伸びている。世界全体のEC化率(21年時点で19.6%)と比べれば日本は低い水準だが、むしろ国内市場の伸びしろが大きいといえそう。消費者は時間や場所を気にせずショッピングを楽しむことができ、事業者側も店舗を持たずにビジネス展開できるメリットを考えれば、EC市場は更なる成長が見込まれ、世界経済が不透明さを増すなかでも関連銘柄に投資家の目が向かいそうだ。
●ZOZOTOWN会員数は順調に増加
ZOZO <3092> [東証P]は、国内最大級のファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営。7月29日に発表した23年3月期第1四半期(4-6月)の連結営業利益は前年同期比13.7%増の143億1200万円で着地し、通期計画の515億円に対する進捗率は27.8%となった。アクティブ会員数(過去1年以内に1回以上購入した会員数)の順調な増加などを背景に、ZOZOTOWNの取扱高は同11.5%増の1010億4300万円に拡大している。また、同社はカテゴリー強化の取り組みとして、コスメ販売に注力しており、商品取扱高の拡大に向けて新規ブランドの出店を更に積極化する構えだ。
●シュッピン、市場動向を踏まえた価格設定が奏功
シュッピン <3179> [東証P]は、カメラや時計を中心に専門性の高い商材の新品と中古品をEC及び店舗で販売している。8月4日に発表した23年3月期第1四半期(4-6月)の単独営業利益は前年同期比26.3%増の8億5600万円で、通期計画の35億600万円に対する進捗率は24.4%とほぼ計画線上で推移している。国際情勢による影響を受けて免税売上高は減少したが、ECの売り上げが想定以上に伸長。カメラ事業では需給にあわせたタイムリーな買い取り・販売価格の設定を可能にする「AIMD」が安定的に稼働したほか、時計事業での市場動向を踏まえた価格設定が功を奏し、粗利益率は高水準を維持した。
●月次売上高が堅調なジェネパ
ジェネレーションパス <3195> [東証G]は、さまざまなジャンルのアイテムを取り揃えたネット通販サイト「リコメン堂」を運営している。6月14日に発表した22年10月期第2四半期累計(21年11月~22年4月)の連結営業損益は8200万円の黒字(前年同期は400万円の赤字)で、家具・家電・生活雑貨などの販売が好調だったことが寄与。通期業績予想は新型コロナなどの不透明要因から非開示としているが、5月以降の月次売上高も堅調に推移し、7月は前年同月比16.5%増の14億5300万円。9月14日に発表される第3四半期決算が注目される。
●ロコンド、「リーボック」ビジネスに期待感
ロコンド <3558> [東証G]は、靴とファッションの通販サイト「LOCONDO.jp」を軸とするECモール事業が主力。7月15日に発表した23年2月期第1四半期の単独営業利益は前年同期比9.7%増の3億5000万円となり、通期計画の9億円に対する進捗率は38.9%となっている。同期間の商品取扱高は靴需要の回復基調に加え、M&A効果などから同10.4%増の55億7144万円に拡大した。なお、同社は5月に伊藤忠商事 <8001> [東証P]とサブライセンス契約を結んだ「Reebok(リーボック)」ブランドのビジネスを10月1日から開始する予定で、下期業績への寄与に期待したい。
●「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコム
クラシコム <7110> [東証G]は8月5日に東証グロース市場に新規上場した直近IPO企業で、ECサイト「北欧、暮らしの道具店」を運営。07年にビンテージの北欧食器専門のECサイトとしてスタートしたが、現在では世界中の商品やオリジナル商品、コラム・ドキュメンタリー・ドラマ、そしてポッドキャストや劇場映画までを取り扱っている。初値は公開価格1420円を7.0%上回る1520円をつけ、上場2日目には1962円まで上伸した。その後は軟調な展開となっているが、公開価格を下回っている時価には見直し余地がある。なお、9月14日には22年7月期通期の決算発表を予定している。
●支援サービスを手掛ける企業にも注目
EC市場が着実に拡大するなか、企業は商取引の電子化を事業の成長に取り込むことが必須となっており、EC支援サービスを手掛ける企業のビジネス機会も一段と広がりそうだ。
複数ネットショップ一元管理システム「ネクストエンジン」を運営するHamee <3134> [東証P]、ECソリューション事業に注力するソフトクリエイトホールディングス <3371> [東証P]、EC構築のためのプラットフォーム「EC-CUBE」を提供するイルグルム <3690> [東証G]、EC・通販サイト構築サービス「Appirits ECソリューション」を展開するアピリッツ <4174> [東証S]、SaaS型ECサイト構築プラットフォーム「フューチャーショップ」を扱うコマースOneホールディングス <4496> [東証G]、ECサイト構築ASPサービス「marble(マーブル)ASP」を手掛けるイード <6038> [東証G]などの動向に目を配っておきたい。
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