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【市況】S&P500 月例レポート ― 7月相場を牽引した業績回復&利下げ期待 (3) ―


●新型コロナウイルスに加えて今度はサル痘も

 ○世界保健機関(WHO)はサル痘の感染拡大について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言しました。米疾病対策センター(CDC)によると、米国内で4907人の感染が確認され、中でもニューヨーク市の感染者数は1247人となり、クラスターが発生したとみられます。世界全体の感染者数は2万804人となっています。ワクチンの要請が急激に増加していますが、供給量は少なく、米政府は250万回分のワクチンを発注しました。

 ○新型コロナウイルス関連データ:

  ⇒世界全体のワクチン接種回数は123億回となりました(6月末は121億回)。

 米国は現時点で:

   →人口の77.8%(同77.4%)が少なくとも1回はワクチンを接種したことになり、人口の66.4%(同66.3%)が2回の接種を終えました。人口の31.8%(同31.7%)がブースター接種を受けました。

   →新規感染者数の7日間平均は7月末時点で12万7022人となり、6月末時点の10万8963人から増加しました。1日当たりの新規感染者数は2022年1月11日に141万7493人に達しました(2021年11月末時点は8万3120人)。また、死者数の7日間平均は439人に増加しました(6月末時点は377人)。

   →米国の新型コロナウイルスによる累計死者数は102万9000人となりました(6月末時点は101万6000人)。

●各国中央銀行の動き(および関連ニュース)

 ○6月のFOMC議事録が公表され、インフレは成長よりも重視され、インフレが抑制されるまで利上げを継続する意向であり、次回会合でさらに0.50%または0.75%の利上げが行われることが示唆されました。

 ○地区連銀経済報告(ベージュブック)では、労働力不足がわずかに改善し、労働需要がやや低下していることに加え、住宅需要が落ち込んでいることが示されました。

 ○欧州中央銀行(ECB)は、11年ぶりに政策金利を引き上げました。利上げ幅は0.25%の予想に対して0.50%となり、2014年からマイナス圏が続いていた中銀預金金利は0%となりました。同行はまた、追加利上げを行う可能性を示唆しました。年内の会合は9月8日、10月27日、12月15日に予定されています。

 ○FOMCは6月に続き、7月も0.75%の利上げを実施しました。これまでの利上げ幅は、5月に0.50%、3月に0.25%、その前は2018年12月の0.25%に遡ります。6月は賛成10、反対1で、カンザスシティ連銀のジョージ総裁が0.50%の利上げを支持しましたが、今回の利上げは全会一致で決まりました。今回の利上げにより、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は2.25%~2.50%となりました。

  ⇒FOMCは、今後数ヵ月は継続的な利上げが適切であるとの考えを示しました。市場は9月も追加利上げが行われると予想していますが、利上げ幅は0.50%と0.75%で意見が分かれています。FRBは、消費と生産が鈍化し、インフレが高止まりする一方で、雇用は堅調で増加しているとの見方を明らかにしました。

●企業業績

 ○株価変動の最大の要因となったのは、企業の決算およびガイダンスの発表でした。現時点で278銘柄が決算発表を終え、209銘柄で営業利益が予想を上回り(75.2%)、60銘柄で予想を下回りました。また、売上高では、274銘柄中186銘柄(67.9%)で予想を上回りました。

  ⇒2022年第2四半期は前期比7.3%の増益(第1四半期は過去最高となった2021年第4四半期から13.0%減益)、前年同期(2021年第2四半期)比1.7%の増益が見込まれます。売上高は前期比3.7%増、前年同期比11.5%増となり、過去最高を更新する見込みです。

  ⇒2022年通年の利益は前年比4.8%増と、過去最高を再度更新する見通しで、2022年の予想株価収益率(PER)は18.9倍となっています。

  ⇒2023年の利益は同11.4%増が見込まれており、予想PERは16.9倍となっています。

  ⇒2022年第2四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は、2022年第1四半期の16.6%から18.9%に上昇しました(2021年第2四半期は5.4%、2020年第2四半期は17.8%、2019年第2四半期は24.2%)。

  ⇒2022年第2四半期には企業がコスト上昇を転嫁できたことから、営業利益率は12.35%となり、前四半期の11.93%から上昇しました(1993年以降の平均は8.24%、最高は2021年第2四半期の13.54%)。

●個別銘柄

 ○スカンジナビア航空(SAS)は米国連邦破産法第11条の適用を申請しました。パイロットのストライキにより、SASの航空便の63%がまずキャンセルとなり、負担が増している国際線の路線網に追い打ちをかけました。

 ○オンライン娯楽大手ネットフリックス<NFLX>は会員数が97万人減少したことを明らかにしました。ネットフリックスは200万人減を予想していましたが、新規顧客を獲得するために、低価格のサービス(広告付きのプランなど)を導入する計画を発表したことから、会員の減少数は予想を下回りました。

 ○報道によると、自動車メーカーのフォード・モーター<F>は、電気自動車への移行に伴い、数千人のホワイトカラー従業員を解雇する予定です(第1弾として、今後数週間以内に4000人)。フォードは現在、コストを年間30億ドル削減するためのコスト削減プログラムを実施しています。

 ○化学・電気素材メーカーのスリーエム<MMM>は、ヘルスケア部門(2021年の売上高80億ドル)のスピンオフを発表しました。

 ○ディスカウントストアのウォルマート<WMT>は、消費者が食料など必需品への支出を増やし、衣類(およびその他の商品)への支出を減らしていることを挙げて、衣料品価格を引き下げました。

  ⇒ショッピング・プラットフォーム企業のショッピファイA<SHOP>は、オンライン消費の減少を理由に10%(従業員約1000人)の人員削減を発表しました。

 ○自動車メーカーのゼネラル・モーターズ<GM>は、供給サイドの課題とコストを理由に、第2四半期の利益が前年同期比40%減となったことを明らかにしました。

●注目点

 ○アルファベットA<GOOGL>はアマゾン・ドット・コム<AMZN>が6月に行ったのと同様に1対20の株式分割を行い、高株価銘柄の中で最新の株式分割実施銘柄となりました。テスラ<TSLA>は2022年8月4日に開催される株主総会で、1対3の株式分割の承認を求める予定です。

 ○米議会の上院と下院は、米国内の半導体メーカーへの直接支援(390億ドル)や半導体製造に関する税額控除(240億ドル)などを盛り込んだ、総額2800億ドルに上るCHIPS法案(CHIPS and Science Act)を可決しました。同法案に基づき、科学技術研究プログラム(詳細は未定)に対して、今後数年間で約2000億ドルの予算が充てられる予定です。この後、大統領の署名を経て正式に成立する見通しです。

※「7月相場を牽引した業績回復&利下げ期待 (4)」へ続く

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