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【特集】脱炭素の切り札、卓抜した安全性とコストで機運高まる「小型原子炉」 <株探トップ特集>

エネルギー価格高騰で原発開発の風向きが変わりつつあるなか、安全性に優れ低コストの小型原子炉への注目が高まっている。世界的にも開発競争が加速しており、株式市場でも注目が高まろう。

―各国政府の後押しで世界的に開発競争が加速、日本でも導入に向け議論高まる―

 6月7日、岸田文雄政権が成長戦略の看板政策として掲げる「新しい資本主義」の実行計画が閣議決定された。同計画では、2030年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減、50年のカーボンニュートラルの目標実現に向けて蓄電池、再生可能エネルギーをはじめ、水素・アンモニア、原子力などあらゆる選択肢を追求するとしている。

 このうち原子力発電に関しては、11年の福島第一原発の事故があって以降、厳しい目が向けられてきたが、世界的に進む脱炭素の動きや昨今のエネルギー価格の高騰を背景に再評価される動きにある。また、近年になって安全性や経済性に優れた小型原子炉 (スモール・モジュール・リアクター:SMR)が登場しており、日本でも導入議論が高まりつつある。株式市場でも注目テーマとなる可能性は高いだろう。

●小型原子炉とは

 小型原子炉とは、出力が従来の原子炉に比べて小さく、パッケージ(モジュール)で製造される原子炉のこと。国際原子力機関(IAEA)の定義によると、出力30万キロワット以下とされ、従来型原発の100万キロワット超に比べて3分の1から4分の1程度の出力の原子炉のことをいう。ここ最近、小型原子炉への注目が高まっている背景には、安全性や経済性に優れていることがある。

 原子力発電は、原子炉の中でウランが核分裂するときに出る熱で水を沸かして蒸気をつくり、その蒸気の力でタービンを回して発電している。万が一、原子炉が暴走した際には原子炉を冷やす必要があるが、従来型ではポンプで水を汲み上げて冷やさなければならず、福島第一原発で起こったように電気の供給が途絶えると冷却できないという問題を抱えている。

 これに対して小型原子炉は、規模ゆえに大型炉よりも冷却が早く、また原子炉全体をプールの中に沈めておくことができるためメルトダウンを起こしにくいという。

 一方の経済性では、モジュール工法を採用するため工場でユニットを組み立て、現地で最終的に組み上げることで、工期の短縮やコストの圧縮が見込めるというメリットがある。

●世界各国で開発競争が活発化

 こうした特徴に注目し、各国で小型原子炉の開発が進められている。

 アメリカでは民間企業を中心に開発が進められており、その活動を政府が支援している。代表的なところでは、ニュースケール・パワー<SMR>が加圧水型炉(PWR)技術に基づいた小型原子炉を開発中で、29年にアイダホ国立研究所敷地内で同社初となる小型原子炉の運転開始を目指している。また、イギリスでも同様に政府が支援する形で、ロールス・ロイス社が中心となる企業連合がPWR型の小型軽水炉を開発中であり、30年代初頭までに1号機の完成と運転開始を目指している。

 このほか、カナダでは28年までにオンタリオ州のチョークリバー研究所敷地内に小型原子炉の建設が予定されているほか、ニューブランズウィック州やサスカチュワン州などでも建設計画が進む。フランスではマクロン大統領が昨年10月、30年までの導入に向けて、小型原子炉に10億ユーロを投資すると表明している。

 更に中国では、SMR設計としては初めてIAEAの「包括的原子炉安全レビュー(GRSR)」をパスした小型原子炉「玲龍一号」の実証炉建設工事に取り組んでいる。これらのほかにも、世界中には現在開発中のものだけでも70基以上の小型原子炉の開発が進められているといわれている。

 もちろん小型原子炉にも普及のうえで問題は多い。例えば研究開発に取り組む国々には、それぞれに適した技術があり、それに付随する企業もある。世界的に普及するうえではこれをある程度集約したうえで、国際的な規制の枠組みを作る必要がある。また、安全面では技術的な裏付けのある基準を確立する必要もある。

 それでも脱炭素の流れから小型原子炉の開発競争は加速するとみられ、日本でも関連企業の取り組みの活発化が予想される。

●開発を進める関連銘柄に注目

 関連銘柄は次のような銘柄が挙げられる。

 日揮ホールディングス <1963> [東証P]は昨年、IHI <7013> [東証P]とともに米ニュースケール社に出資したのをきっかけに小型原子炉事業に参入した。前述のニュースケールの案件でも米エンジニアリング大手のフルアー<FLR>と共同でEPC(設計・調達・建設)を手掛ける予定。また、中長期経営方針「2040年ビジョン」では、SMRをエネルギー部門のコア事業領域に位置付けており、石油・LNG(液化天然ガス)プラントを数多く手掛ける中東や東南アジアでの事業展開を目指している。

 日立製作所 <6501> [東証P]と米ゼネラル・エレクトリック<GE>の合弁会社であるGE日立ニュークリア・エナジーは昨年12月、カナダ・オンタリオ・パワー・ジェネレーション社から小型原子炉を受注した。日本企業の小型商用炉の受注は初めてで、早ければ28年に第1号機が完成する。

 三菱重工業 <7011> [東証P]は、20年12月に主要機器を原子炉容器内に統合することにより一体・小型化を可能にした、一体型小型原子炉の概念設計を完了したと発表。小規模グリッド向け発電炉のほか、離島向けモバイル電源や災害非常用電源などに適用する船舶搭載炉への展開などが可能としている。

 IHIは、日揮HDとともに米ニュースケール社に出資したのをきっかけに小型原子炉事業に参入した。同社はこれまで原発向け主要機器の設計・製作・保守点検から除染・廃炉などに携わっており、原発に関連する実績も豊富にある。前述のニュースケールの案件に向けて、24年にも小型原子炉用機器の製造を開始するとみられている。

 このほか、冷却材に液体ナトリウムを使う小型高速炉などを開発した東芝 <6502> [東証P]、核燃料輸送容器・濃縮関連機器を手掛ける木村化工機 <6378> [東証S]、小型原子炉や核融合炉に関する試験の受託や関連機器開発などを進める助川電気工業 <7711> [東証S]などにも注目。また、原子炉圧力容器を手掛ける日本製鋼所 <5631> [東証P]も関連銘柄に挙げられよう。

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