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【特集】横山流 株式益回り+ピコ投資で、確率高く株を売り買いしよう!<GW特別企画>

横山利香(ファイナンシャルプランナー、テクニカルアナリスト)

 ロシアとウクライナの戦闘が始まってすでに2カ月が経過しましたが、いまだ収束する気配が見えません。新型コロナウイルス感染症の流行拡大を背景にサプライチェーンが混乱し様々な物資が供給不足に陥っていたところに、ロシアのウクライナ侵攻が加わり原油をはじめとする資源価格が急騰、世界各国でじわじわとインフレが進行しています。軍事侵攻という不測の事態が発生したこともあって、世界の株式市場は乱高下を余儀なくされる事態となっています。先の読めない日々が続き、「どの銘柄を選べばよいのかわからない」と悩んでいる投資家の方も多いかもしれません。

 5月は例年、ゴールデンウイークを挟んで企業の決算発表が本格化していく時期にあたります。そこで今回は私たち個人投資家が銘柄を買う時に、株価の上昇確率をあらかじめ考え、どのようなタイミングで売買すればよいのかについて解説します。

◆バリュエーションとタイミングの両面から投資を判断

 皆さんに質問です。皆さんは銘柄を売り買いする時に「このくらいは儲けられるかな?」などとあらかじめ考えて購入していますか?

 この質問に「でっかく儲けたいに決まってるでしょ!」などと答える方が多いかもしれません。確かに「でっかく儲けたい」と考えるのは普通でしょうが、漠然とそう考えて取得した銘柄の株価が上昇し「よしよし!儲かってきた!」と保有を続けるうちに、株価が下がり始め、気づいたら買った値段に、もしくは買い値を大きく下回る値段まで下落してしまったという経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

 株価はいずれ天井を打って下落します。どんなに良い銘柄でも、割高な時=高値で購入してしまえば上昇する余力は限られ、いずれそう遠くない時期に株価は下落することになります。株価は成長力など「その銘柄が本来持っているであろう力」に基づいて形成されるものですが、株式市場ではその時々の旬(テーマ)がありますので、どうしても人気が偏って買われすぎたり、売られすぎたりしてしまいます。

 株式投資で確率高く儲けるためには、この銘柄を買ったらどのくらいのリターンが期待できるのかをある程度計算してから購入することが必要不可欠です。これは、「株式益利回り」を計算することで把握することができます。具体的には、「EPS(1株当たり純利益)」がいくらの株式を、いくらの「株価」で買うと、いくらの株式益利回りが期待できるのかということです。配当利回りを計算するのと同じ考え方で、「株式益利回り=EPS÷株価」の計算式で求めることができます。

 たとえば、EPSが5000円の株を10万円で購入したとしましょう。5000円÷10万円ですから5%の株式益利回りが見込めることになります。株価が値上がりして20万円になった場合には、5000円÷20万円ですから株式益利回りは2.5%になります。株価が安い時に買った方が株式益利回りが高いので、儲かる確率が高いことがわかります。また、株価10万円は変わらずEPSが1万円になった場合には、1万円÷10万円ですから10%の株式益利回りが見込めることになります。

 EPSは文字通り、1株当たり純利益です。もし企業の業績がこの先も良好だと予想できるのであればEPSも成長しますので、私はEPSを重視しています。企業の決算短信などから数字を取り出して、株価が割安であるのか割高であるのか、儲かる可能性があるのかを事前に計算しておくようにしましょう。

 今回は、私はコモディティの原油が大好きということもありますので、INPEX <1605> [東証P]を例に解説していきたいと思います。INPEXの株価は2022年2月9日の決算発表時の株価は1147円でした。決算発表で、EPSが前期実績の153円から今期予想では180円に伸びていることがわかります(図1、図2)。

図1 INPEX <1605> [東証P] 日足チャート
【タイトル】

図2 INPEX <1605> [東証P] 業績推移
【タイトル】

 それまでのEPS153円の時に仮にINPEXの株を1147円で買ったとすると、153円÷1147円ですから13.3%の株式益利回りが計算されます。

 このEPSが153円から180円に伸びていますので、同様に1147円で買うと、180円÷1147円ですから15.6%の株式益利回りが見込めることになります。株価が変わらないのにEPSが153円から180円に伸びたことで株価が割安になったことがわかりますね。

 その後、株価は4月19日の高値1677円まで値上がりしました。EPSは180円のままですから、180円÷1677円ですから10.7%の株式益利回りが計算されます。株価の上昇に伴って株式益利回りが低下し、2月の決算発表の時(株価1147円)の値を下回ってきていますので、投資妙味は薄れてきていることがわかります。

 ただし、このやり方には1つ難点があります。というのも、株式投資は美人投票であり、自分だけがよいと思って買っても値上がりするかはわからないのです。

 株価は、株を買う人が増えることで初めて上昇します。株式市場の地合いが盛り上がっている時に、よさそうな銘柄を割安な時に買ってはみたものの「私が買った株だけどうして上がらないの!もう売ろう!」などとイライラを募らしたことは、投資家であれば一度や二度ではないでしょう。結局、どんなによい銘柄で、いかに割安であっても、売り買いが増えて注目が集まらなければ株価は上昇しないのです。

 では、投資家の注目が高まり始めた、株価が動き出すその時を、どのような方法で狙えばよいのでしょうか。

 株を売り買いする人が増えてくると、出来高はそれに伴って増えていく傾向があります。この出来高(Volume)が急増し始めるタイミングを逃さないようにしましょう。出来高や売買代金が急増する銘柄はそれだけ多く取引されているわけですから、株価を押し上げるテーマに結びつくような材料などが出ていないかを確認しましょう。その際には、煽りなどによる一時的な急増ではなく、時間をかけてじっくりと出来高を伴った株価上昇なのかを確認しましょう。

 株探ではどこを見るのかといえば、個別銘柄のページを開きます。銘柄欄の下にある「チャート」のタブをクリックして、多機能チャートを表示させましょう。このチャートの下の段に、通常は「出来高」が表示されますので確認します。出来高が表示されていない場合は、チャート上の設定項目の「指標エリア2」で「出来高」を選択しましょう。

 出来高の棒グラフを1つ1つ確認していきます。その時に棒グラフが頭を「ピコ」と突き出していることがあります。このように頭1つ「ピコ」と飛び出たあたりがきっかけとなって、株価がその後上昇に転じることが多くあります。このように出来高急増のポイントに着目する方法を「ピコ投資」としてご紹介しています。

 ここでもINPEXのチャートで確認してみましょう(図1)。株価は2022年に入ってから、1100円を挟んで推移していました。しかし、原油価格の上昇とともに注目を集めるようになって出来高が増加し始め、株価は2022年4月に1677円まで上昇していきます。株価が高値を更新する度に出来高も増加をみせるチャートを形成しています。原油価格の上昇を背景に、同社の出来高が増加していることにいち早く気づくことができれば、2月の決算を待たずとも同社の株価が上昇する可能性が高そうだと気づくことができたでしょう。仮に、決算発表の数字を確認してから購入したとしても、50%弱のパフォーマンスは叩き出せることになります。決算発表で出てきた数字を使って株式益利回りを計算することができれば、大化け株は狙えなくても、着実に儲けを積み重ねられる可能性を高めることができるのです。

 2022年も後半に入りますが、世界各国でコロナ禍によって強いられた自粛生活が終わりに向かうなか、株式市場も新たなステージを迎えているのでしょう。また、新たな有望成長株が誕生するかもしれません。決算発表シーズンの到来は各企業のファンダメンタルズを精査する絶好のチャンスです。決算とチャートを活用して、様々な銘柄を研究してみてくださいね!


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