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【市況】【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─本格化する企業決算、注目企業と物色動向は?!

株式ジャーナリスト 和島英樹

●米資産圧縮の規模が焦点に、注目はFRB議長発言

5月中旬までの東京株式市場は、引き続き不安定な動きになる可能性が大きい。

 米インフレ懸念の一方で金融引き締めによる景気の減速懸念、新型コロナ感染再拡大による中国のロックダウン(都市封鎖)の影響など、外部環境の不透明感が拭えない状況が続いている。国内では物価の上昇、企業業績の先行きへの警戒感も強い。一方、このところの株価の下落により、バリュエーション面では魅力的な銘柄群も出始めている。5月中旬までの日経平均株価の想定レンジは2万5000円~2万7500円。

 5月3~4日のFOMC(米連邦公開市場委員会)に対する関心が高いが、今回はパウエルFRB議長の事前の発言で0.5%の利上げは織り込み済み。資産の圧縮(QT)の開始も想定内とみられるものの、金額など規模が焦点となっている。注目は4日のパウエル議長の会見。次回のFOMCでの大幅な利上げを示唆するのか、ややハト派になるのかでマーケットのセンチメントに影響が出そうだ。

 このほか、米国のスケジュールでは6日(金)の米雇用統計、11日の米消費者物価(CPI)への関心が高い。市場予想を上回るようだと、利上げ加速観測が継続する可能性が高い。CPIで物価変動の影響を受けにくいコアCPIは前月に続いて鈍化を示すとの見方がある。

●円安が追い風となる自動車、半導体企業などの決算を注視

 国内での最大の注目点は、13日にピークを迎える3月期本決算となる。米国の金利上昇、ウクライナ危機による経済制裁や資源価格高騰の影響、円安などを受けて、企業側が23年3月期の業績予想をどう判断するかが焦点となる。ちなみに4月1日公表の日銀短観では、大企業(全産業)の22年度の経常利益予想は前期比1.4%の減益見通し。調査期間は2月24日~3月末で、24日のロシアのウクライナ侵攻、3月の米金利引き上げなどを織り込んだ回答となっている。内訳は製造業が2.9%減益で、非製造業は0.5%増益の見込み。為替の前提は1ドル=111円93銭、1ユーロ=128円18銭となっている。上場企業でも慎重な予想になることがうかがえるが、株価はどこまで織り込んでいるのか。市場では「23年3月期の減益を織り込んで、先に株価が調整している」(国内証券)との見方が多い。外部環境が改善すれば、業績予想が保守的と見直される公算もある。

 決算はいずれも重要だが、特に関心が高いのが5月11日発表予定のトヨタ自動車 <7203> [東証P]など自動車株。為替の円安が追い風になるほか、前期に半導体を始めとした部品などの調達の遅れがあり、その挽回生産の動向も注目される。株価低迷が続く半導体関連では、12日に半導体製造装置世界4位の東京エレクトロン <8035> [東証P]の発表がある。資源、市況関連では三井物産 <8031> [東証P]が2日、三菱商事 <8058> [東証P]が10日、日本郵船 <9101> [東証P]が9日、日本製鉄 <5401> [東証P]が10日に発表を予定している。前期は利益が急増しており、今期の利益予想とともに、配当予想への関心が高い。

 4月27日時点の日経平均株価の1株利益は2076円で、PERは12.7倍。なお、アベノミクス時にはPERはおおむね12倍~15倍程度で推移していた。

 物色面では引き続き資源高が恩恵となるINPEX <1605> [東証P]、住友金属鉱山 <5713> [東証P]などは堅調な動きが継続する公算が大きい。23年3月期に業績回復を計画しているJR東海 <9022> [東証P]を始め、JR東日本 <9020> [東証P]、日本航空 <9201> [東証P]、ANAホールディングス <9202> [東証P]などの経済再開関連。また、値上げを発表したアサヒグループホールディングス <2502> [東証P]、増配や自社株買いを発表している東京製鐵 <5423> [東証P]など、個別好材料が出ている銘柄をピックアップしておきたい。ハイテクの中では好業績のディスコ <6146> [東証P]、信越化学工業 <4063> [東証P]、アドバンテスト <6857> [東証P]などには見直し余地もありそうだ。序盤発表の決算で好調だった、デンソー <6902> [東証P]、トヨタ紡織 <3116> [東証P]、アイシン <7259> [東証P]、豊田合成 <7282> [東証P]などトヨタ系の自動車部品メーカーも有望といえる。

(4月28日 記/次回は5月29日配信予定)

■和島英樹(Hideki Wajima)

株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。


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