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【市況】ESG最前線レポート ─「脱ロシア依存とエネルギー問題」

第7回 「脱ロシア依存とエネルギー問題」
株式会社グッドバンカー
リサーチチーム 倉橋 麻生

●IEAが示した10の提言

 ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、世界の主要国が原油・天然ガスのロシア依存からの脱却を検討しています。特に、ガスの約40%をロシアから調達しているEU(欧州連合)にとっては喫緊の問題となっています。
 
 ロシアは、世界第3位の原油産出国であり、第2位の輸出国です。しかし、カナダやアメリカ、イギリス、オーストラリアなどはこのロシア産原油の輸入を禁止しており、ロシアは減産せざるを得ない状況になり、世界のエネルギー市場に大きな変化をもたらすとみられています。
 
 では、ロシアに依存せずに、どのようにエネルギー需給問題を解決するのか――。3月に国際エネルギー機関(IEA)が発表したレポート「10-Point Plan to Reduce the European Union's Reliance on Russian Natural Gas」では、EUがクリーンエネルギーにシフトしながら、ロシアからの天然ガス輸入量を1年以内に3分の1以上削減するための具体的な10項目の計画を示しました。続けて、「A 10-Point Plan to Cut Oil Use」を発表し、世界的な石油供給の危機に対応するため、石油消費を削減する10項目の計画をEUに提言しています。

●EUの対応

 この数年、化石燃料の値上がりに直面するEUでは、欧州委員会が「REPowerEU」を発表し、2030年までにロシアからの化石燃料依存から欧州を脱却させる計画を打ち出しました。今後、ガスの調達先を多様化させ、環境に優しいガスを活用し、ロシアへの燃料依存を2022年内に3分の2に削減するとしています。
 
 計画実行のためには、再生可能エネルギーやバイオガス、水素の利用を大幅に増やすことを提案しており、家庭や商業ビルでの屋上太陽光発電、農業廃棄物や生ゴミからつくられるバイオマスガスの利用、また自然エネルギーへの追加投資により、風力発電や太陽光発電から製造されるグリーン水素にも期待を寄せています。
 
 欧州委員会は、2030年までに水素利用を4倍増に拡大することを求めており、化石燃料の価格上昇とウクライナ危機が、エネルギーのグリーンシフトを加速させています。そのような動向は市場にも反映されており、最近のグリーン水素関連企業の株価にも表れていることが報告されています。また、クリーンエネルギー銘柄の組み入れ比率を高める機関投資家の動きも表れています。

●エネルギー危機に対する個人のアクション

 日本でも、経済産業省が、ロシアへの依存度が高い希少金属パラジウムやエネルギーについて、新たな供給先の確保や権益取得に向けて取り組みを強化していくことなどを打ち出しています。
 
 IEAのビロル事務局長は、「エネルギー政策の歴史的な転換点にある」と述べており、先述した石油消費を削減する10の提言に示された緊急対応策には、高速道路の制限速度の引き下げや週3日の在宅勤務の励行、移動・輸送手段の代替など、個人レベルですぐにでも実施可能なアクションが提示されています。
 
 私たちは、このような世界的なエネルギー危機に対し、自分たちの行動のあり方を見直すことが求められています。今後、ますます省資源化や高効率化、脱化石燃料の流れが進むと見られるなか、それらを推進する企業に投資していくことも、私たちが今からできる行動ではないでしょうか。

情報提供:株式会社グッドバンカー

(2022年4月26日 記/次回は5月28日配信予定)


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