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【特集】藤代宏一氏【日経平均の下値模索再び、思惑錯綜の市場を読む】(2) <相場観特集>

藤代宏一氏(第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト)

―米長期金利や為替、地政学リスクなど不透明材料山積だが―

 週明け18日の東京株式市場は、日経平均株価が大幅続落し一時は500円超の下げで2万6500円台まで水準を切り下げる場面があった。底入れ後もなかなか戻りのリズムに乗れない展開が続いている。企業の決算発表も絡め、4月後半から5月ゴールデンウイーク明け後の相場展開がどうなるのか見極めにくい状況だ。全体相場の動向や物色の方向性について、先読みに定評のある市場関係者2人に意見を聞いた。

●「円安は日本株にとってプラス要因に」

藤代宏一氏(第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト)

 現在の市場を巡るメインテーマは、米国の長期金利上昇だ。世界的に株価は軟調な値動きとなっているが、これは金利上昇に伴い債券に比べ株式の相対的な魅力が失われていることが、背景にある。しかし、足もとで原油などエネルギー相場やサプライチェーンの問題は落ち着いてきており、この点はプラス材料だろう。けれども、中国・上海などでは新型コロナウイルス感染拡大で厳しいロックダウン(都市封鎖)が行われている。この中国の動きが、再び世界のサプライチェーン問題を揺るがす要因とならないかが懸念される。

 一方、日本では急激な円安が進行している。この円安に対する評価は分かれているが、少なくとも日本株にとってはプラスの側面が大きいと思う。日本のGDP(国内総生産)に占める製造業の比率は2割程度だ。しかし、日経平均株価の構成銘柄をみると大企業製造業が6割を占める。TOPIXも同様の比率だ。日本の株価指数は、大企業製造業に左右される面が大きいが、この大企業製造業にとって、円安はプラス要因に働くだろう。実際、日本の名目ベース輸出金額は2000年代半ばの過去最高水準を抜いてきている。今後、決算が近づくとともに円安のプラス面は注目されてくると思う。

 ただ、気になることは日本には過去最高益を更新する企業は少なくないが、半導体関連企業などを含めて、業績の伸び率は鈍化している点だ。業績のモメンタム(勢い)にはピークアウト感がある。このように国内外ともに現在の相場を取り巻く環境には、プラスとマイナスの両側面がある。こうしたなか、当面の日経平均株価は2万8000円を中心とする一進一退の局面が続くとみている。


(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(ふじしろ・こういち)
第一生命経済研究所経済調査部・主任エコノミスト。担当は金融市場全般。2005年4月、第一生命保険入社。08年、みずほ証券出向。10年4月第一生命経済研究所出向、同年7月内閣府経済財政分析担当へ2年間出向。12年7月副主任エコノミストを経て、15年4月より現職。

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